話してみたら

先日、友人の弾き語りライブを聴きに行ったんです。
友人の歌と演奏は素晴らしくて、長いつきあいもあって耳に馴染んでいたし、生き方や世界の捉え方が音と言葉から滲み出てくるのを感じられて、そして何より音楽が感じられて、ああ、本当に来てよかったと思ったんです。

その後、知らない年配のミュージシャンのステージを見て、何だかなぁと思ったんです。それなりにキャリアを重ねて来られたのだろうと推察できるし、声もギターも年季の入った、信念に基づいたものだと分かるのだけど、心に響かない。正義だとか強いメッセージを歌っていると思うのだけど、何だか独りよがりを押し付けられている気がしてきて、気がついたら「ああ、このひと嫌いだ」とまで思ったんです。

ところが。
ステージが終わった後、何かがきっかけで少しその人と話したんです。そしたら、とてもいい人。歌の内容が嫌だったのに、話してみたらソフトな物腰で決して何かを押し付けるような口ぶりもなく、素敵な大人でした。

歌の内容はその人の内面世界であって、とても激しくて僕の感性や価値観とは相入れないもので、ひょっとしたらその人と深い話をすれば衝突するのかもしれない。
でも、その人と話したそのひとときは、とても穏やかで優しい佳き時間だったんです。嫌悪感すら抱いてしまったその人のステージをもう一度聴いたら、印象がいくらか良い方向に変わるかもしれない。

歌の内容がその人のすべてではなくて、人は多面的だから、少しでも話してみることは大切だなぁと、当たり前のことだけれど改めて思いました。
逆に、話せば話すほど合わない、ということもあるのでしょうが、それはそれで、それもまた良き哉と思うのです。

こんなことを少し歌にしてみたいと思ったりもします。

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