キャップ野球の捕手をはじめから丁寧に②
こんばんは、京大キャップ投げ倶楽部6期生の西川です。ようやく秋らしい涼しさが感じられるようになりましたね。季節の変わり目ですし、秋リーグ開幕も間近となっていますから、体調にはくれぐれもご注意ください。
今回のセクションでは、スライダー系(横・縦・フックカーブ等)と緩急系(チェンジアップ、イーファスピッチ等)の捕り方について書いていこうと思います。この先の論考が冗長性を増すことを避けるため、前回までに紹介した捕手姿勢や注意点についてはイチから紹介することなく書き進めます。そのため、前回の①の記事を読まれていない方は先にそちらに目を通していただければ、無理なく本記事に入って頂けるかと思います。それでは今回も、ゆったり最後までお付き合いください。
1.スライダーの捕り方
横にも縦にも変化幅を作りやすいキャップ野球において、一口にスライダーとは言ってみても、その軌道はピッチャーごとに多種多様なものです。その原因は、スライダーはストレートやカットボールなどと違い、「硬キャなのか柔キャなのか」、「順回転なのか逆回転なのか」という違いが各々のピッチャーの腕の振り方の違いと相まって、その軌道に大きく寄与しているためだと考えられます。キャップ野球でスライダーと呼ばれる変化球は、主に次の3つに分けられるでしょう。
①:横変化が大きく縦落ちの少ないスライダー(例:ストレートの軌道からカクッと曲がるスライダー、スイーパー、ライズスライダー)
②:横変化が少なく縦落ちの大きいスライダー(例:スラッター、柔本格派投手に見られるシンカー方向に落ちる縦スラ)
③:横変化が大きく縦落ちの大きいスライダー(例:カーブ軌道でストップの効いたスライダー、チェンジアップ質のスライダー)
このうち、特に①と②の面表スライダーは現環境で最もバッテリーエラーが起こりやすい球種だと私は思います。まず、これらのスライダーは他の球種と比較したときに、どちらも蓋が捕手の可動域に達する前に、減速がない状態で床でバウンドするリスクがあるためです。
たとえば、①のスライダーを見てみましょう。例に挙げたような、ストレートの軌道から壁にあたったようにカクッと曲がるスライダーやスイーパー軌道のものに着目してみると、前提として、最終的な横変化方向の曲がり幅はあればあるほど良い(要するに曲がりすぎる分にはOKということです、投手と捕手の打ち合わせ次第ではありますね)訳ですが、その横変化の原因となっている蓋の角度や空気抵抗により、制御しきれない縦変化が生まれてしまうのは仕方がないと言わざるを得ません。したがって、捕手は①のスライダーを要求するとき、変化後に到達しうる横幅全体について低めのバウンドや高め抜けを警戒しなければならないことになり、これはすなわちストレートやカットボールでカバー可能としていたゾーンより格段に広いゾーンをカバーしなければならないことを意味します(しかも、この捕手の負担は、投手の変化球の軌道安定性及び制球力によってでしか減らすことが出来ません)。
そのため、捕手は投手との打ち合わせを前提として、十分な横の可動域を確保できるように捕手姿勢をとることが要求されています。さて、ここからは先に述べたパターン別に、キャッチングやブロッキングの方法を考えていきます。
1.1. 横変化への対応が主となる場合(捕手姿勢C)
私は、横変化への対応がより重要となる①・③のスライダーと、縦変化への対応がより重要となる②のスライダーとで捕手姿勢を変えていました。ここではまず、①・③のスライダーに対する捕手姿勢について説明しようと思います。以降の説明では、この捕り方を捕手姿勢Cと呼ぶことにします。
右投手を想定した捕手姿勢の組み方について簡単に説明します(左投手の場合は、以降の説明をまるっと左右反転させればよいです)。まず、ピッチャーが投球動作を開始して利き腕を後ろに持って行ったタイミングで軽く上にジャンプし、左膝を立たせて右膝が立たないような形で、両足の母指球から地面に着地します(動画を見てもらえれば分かると思いますが、イメージでは捕手姿勢Aの左右反転バージョンになるわけですね。着地の際に右膝は地面につけてもつけなくても構いません)。そして、リリースされた蓋の軌道の出始めを確認してから、着地の反動を利用して左足で地面を蹴り、捕手から見て右側に滑るようにしてあくまでブロッキングする意識で捕球に入ります。
それでは、各項目についていくつか注意点を述べていきます。まず、着地の反動を利用するため、一連の捕球の流れの中にジャンプを取り入れていますが、着地した際に音が鳴ってしまうという欠点があります。このようなケースに限らず、球種によって捕手姿勢を変えるような場合には、捕手が出してしまう音が打者に有益な情報を与えてしまう恐れがあるので、何かしらの対策を講じるのが良いと思います。
さて、左足で地面を蹴った後の滑り方ないしは身体の動かし方について、スライダー①と③の共通点と相違点を説明していきます。まず、どちらのスライダーを捕るときでも、右足の下腿を地面に付けながら滑ることで意図しない股抜けを防止することができます。この動作に慣れていない場合、滑る際に前後のバランスをとりづらく感じるかもしれませんが、上半身を軽く前傾させ、肩から腰にかけて身体の前に空洞を作ってあげるイメージを持つと改善されると思います。また、滑る方向はいずれの場合でも右斜め前が良いと思います(露骨に前方向に出る必要はありません。少し前に出る、くらいの意識で十分だと思います)。なぜならば、横変化しすぎたスライダーを捕る場合を考えてみると、より強い変化幅がある状態の蓋をブロッキングする方が難易度が高く、前方向に出て変化が強くなりすぎる前に止めてしまうのが得策であると簡単に想像がつくからです。
次に、相違点についてです。動画を見てもらえれば分かると思いますが、基本的にスライダー①は蓋に対して手のひらで接触しキャッチしようとする一方、スライダー③は蓋に対して身体(腰~右太腿にかけて)で接触しブロックしようと試みる球種です。また上半身の左右方向の傾き具合について、スライダー③を捕るときはスライダー①を捕るときに比べて、背筋を立てたままブロッキングを終える意識を強く持つようにしています。これは、スライダー③は高確率で地面に接触してから捕手の手元に届く球種であるのと同時に落差があるため、バウンド後の蓋の跳ね上がりを警戒しなければならないからです。上半身を横方向に傾けられない分、蓋がバウンドした位置に腰を持っていけるように横滑り動作を完了させて、右太腿部分で蓋を止めるようにすると安定して蓋を止められるようになりました。
ここで、試合で捕手をされたことがある方なら理解していただけるかと思いますが、捕手姿勢Cとして説明させていただいたような身体をフルに使ったブロッキングは、蓋をそらす確率を格段に軽減できる反面、かなり体力を消費します。そのため、捕手姿勢A・Bを用いてスライダーを捕ることを練習しておく方が現実的でしょう(ピッチャーの制球力に依存してしまいますが、その分体力消費なく捕球を行うことができます)。
1.2. 縦変化への対応が主になる場合(捕手姿勢A~C、D)
最後に②のスライダーに対する捕手姿勢についてですが、まず、スラッター質の縦スライダーに関しては、今までに紹介した捕手姿勢A~Cのうち対応しやすいものを採用すれば問題なく捕れると思います。ここでは、シンカー方向に沈むような縦スラの捕り方として、捕手姿勢Dを紹介するにとどめます(そもそもこのような種類の蓋を実戦で運用できている投手は極端に少ないため、練習機会もほとんど得られないと思います)。
2個目のリンクから、京大井手の縦スラをブロッキングする自分と京大森石の Shorts をご覧いただけるかと思います。このブロッキングを、本記事では捕手姿勢Dと呼ぶことにします。捕手姿勢Dは、バウンドしてからでは対応できない(正確に表現すれば、バウンドの方向が一様でない)蓋に対して、両足をたたんで正座のような捕手姿勢で、無理やりバウンドする位置に腰から滑り込むことによって、股下に蓋を飛び込ませてブロックすることが目的です。身体の動かし方は上の Shorts を見てもらえれば分かる通りそこまで難しくはありませんが、この捕手姿勢では蓋がバウンドする位置を予想して滑り込む動作をバウンドするまでに完了させる必要があるため対応がかなり難しくなっており、投手の制球力にある程度依存してしまう捕球方法ではあるなと感じています。
1.3. すべり動作にかかる膝への影響について(少し骨休め)
説明調の文章が多くて疲れちゃうのでコーヒーブレイク……。今回説明してる感じの横滑りの動作を繰り返すと、ズボンの膝周辺が摩擦で溶けて穴が開いたり、両ひざの内側と外側にはよくあざができたりすると思います(これが痛いことこの上ない)。そんな時は、ド根性で耐えたり、膝あてをしたり、膝に負担のない動き方を探したりなど自分のプレーがおろそかにならない範囲内で対策を講じるのが良いと思います。あと、自分は捕手するときにちょっとでも足と地面の間に空洞ができるのを避けるために、少しゆとりのあるズボンを履いたりしてました。でも、そのせいで膝あて付けたときにすごいプレーしにくくて、膝は根性論で耐えることにしてました……。皆さんも、捕手をするときの服装や装備面のこだわりはありますか?
2. 緩急系の捕り方
私はナックルをメイン級の球種として運用しているピッチャーと組んだことがないので、題名に挙げた「緩急系」はチェンジアップやイーファスピッチなどを指します。捕手は普段の配球にも何かしらの思考があってしかるべきですが、緩急系の蓋を要求するときは特に明確な意図があることがほとんどでしょう。例えば、チェンジアップを見逃させてカウントを取りたいのであれば、絶対に逸らさないような捕手姿勢をとることが推奨されますし、タイミングをずらさせてゴロアウト・フライアウトを誘いたいのであれば、いつでも守備に参加できるように動き出しやすい捕手姿勢をとることが推奨されると思います。
今回の記事では、こういった打者ごと・カウントごとの緩急系を用いた配球について触れることはせず、純粋に蓋を逸らさないことだけに焦点を当てて書いていきます(緩急系の配球面については、要望があれば以降の記事で書くかもしれません)。私は、打たせて取るためにチェンジアップを要求することがほとんどなかったので、絶対に逸らさない、特に股抜けを防止するための捕手姿勢をとっていました。これを捕手姿勢Eと呼ぶことにします。
捕手姿勢の組み方についてですが、これは動画を見てもらえれば分かる通り、膝を広げた正座をしているだけなので説明は省略します。この捕手姿勢の長所は、先にも述べたように股抜けをすることが全くないところと、仮にチェンジアップが抜けて横方向の失投になったとしても、横に寝そべるようにするだけでブロッキングに移れるところが挙げられます。しかしながら、先に述べたようなすぐに守備に移れる機能性は欠いているので、緩急系は用途別に他の捕手姿勢を取るなどして対応するとよいと思います。
今回は前回に引き続き、スライダー系と緩急系の捕り方について説明してきましたが、いかがだったでしょうか。次回は、シンカー・シュート系の捕り方について意識していることを書いていこうと思います。
それではまた!! キャップ野球楽しい‼️‼️
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