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キャップ野球の捕手をはじめから丁寧に①

 おつかれさまです、京大キャップ投げ倶楽部6期生の西川です。涼秋、なんて呼ばれることもある9月ですが、まだまだ暑いですね……。みなさまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。キャップ野球界隈では、兵庫蓋ノ陣や大学選手権の予選などアツい夏のビッグイベントが終わり、ゆったりと秋のリーグに向けた練習を心機一転スタートしたよ〜という選手も多いのではないでしょうか。

 今回は、キャッチャーを専門に練習しようという選手に向けて、まずは捕手の仕事のキャッチングとブロッキングの部分に着目し、気をつけなければならないことや各球種ごとの身体の動かし方で意識していることなどを書き残していこうと思います。ある程度セクション分けするつもりではいますが、それでもかなり長くなることが予想されるので、まったり読んで頂ければ嬉しいです。今回のセクションでは、いったん捕手をするときの心構えを述べた上で、ストレート・カットボールの捕り方について書いていこうと思います。

 ひとまず私自身の捕手成績について紹介しておくと、キャップ野球情報局によれば、私はこれまで出場した準公式戦以上の試合で220.67回捕手としてプレイし、捕手防御率が0.15、K’PBsが0.28という成績を残しています。これまでの自分の経験が、キャッチャー職をがんばる現役キャッパー各位の参考になれば幸甚の至りです。



1. 基本精神

 キャップ野球における捕手は、「投手が投げた蓋を身体の正面で両手でキャッチする」という一連の動作を毎球こなすことが要求されています。二審制が採用されているこの競技ではフレーミングの必要性はない(フレーミングの動きをすることでキャッチしやすくなる気はするが……)ですし、片側の手にミットをはめる訳でもないので、両手でキャッチすることが出来ます。

 大切なのは、蓋をキャッチするのかブロックするのかに関わらず、捕手は向かってくる蓋に対して身体から正面に入ることが最優先事項であることです。いま、仮に右投手の硬キャの面表スライダーを捕る場合を想像してみると、投手に十分な制球力があれば、蓋が来るであろう位置周辺(左バッターの丁度真後ろあたり?)に座り込み、変化終点に手を構えておくことで上手くキャッチできるかもしれません。ですが、このキャッチングには再現性がないのであまり推奨しません。そもそも面表のスライダーは想定より曲がらず内巻きで来てしまうことが少なくないですし、その場合、変化とは逆向きの方向に身体を動かしたり手を出したりする事になるので、捕逸リスクが格段に上がります。したがって、何か理由がない限りは、捕手はどのような曲がり幅であっても対応できるように身体を動かしながら変化についていく形のキャッチングをすることが推奨されます。

 当然、どれだけ捕手が準備していたとしても予期せぬ暴投が来ることはあります。そのような場合は、捕手が身を投げ出してすべりこみ、片手で蓋を止めに行くようなスーパープレイが求められるかもしれませんが、そのようなブロッキングには再現性がなく危ないプレイングだと言えるので、実際はやるべきではありません。したがって、投手が暴投した場合も普段のキャッチングの姿勢を崩さぬまま、ブロッキングに入れるような捕手姿勢を取ることが推奨されます。

 まずは、キャッチングやブロッキングをするに当たって自分が担当する投手とある程度の打ち合わせをしておくといいと思います。私は、

 ① 投手が持っている球種とサイン
 ② 普段の練習や試合での各球種の使用頻度と投手目線での被打率
 ③ どの球種に自信があって、どの球種で攻めたいのか
 ④ 球種ごとにカバー可能なゾーンの伝達

の4項目について、基本的に打ち合わせをしていました。①〜③は投げてくれる投手のための配慮です。自分なりのピッチングデザインが出来上がっている投手であれば、捕手はそれを基軸にサイン出しをするのが一番テンポが良いでしょう。④は捕手のための項目です。例えば、私はシュート系の変化球をピッチャーに要求するときは、「曲がりすぎは全部OKで、ベースを巻くような軌道で変化不足なものは捕れないかもよ!」と投手に伝えていました。要するに、起こりうるミスのパターンごとに責任の所在を明らかにしておくのです。極端な話をすれば、たとえストライクが宣告された蓋を捕手が逸らしたとしても、その蓋があらかじめ伝えてあるカバー可能なゾーンに来ていなかった場合、それは投手の責任ということになります。投手に責任があるパスボールもあれば、捕手に責任があるワイルドピッチもある、というのはこの競技では至極真っ当な議論だと思います。

蓋ノ陣、楽しかったですね!!@ベイコム総合体育館


2. ストレートの捕り方

 ここからは各球種ごとの捕手姿勢について書いていこうと思います。まずは、ストレート(ライズ質、カット質、直線軌道を問わない)の捕り方についてです。私はストレートに対する捕手姿勢を2つ持っており、それぞれを捕手姿勢A,Bと呼ぶことにします。


 捕手姿勢の組み方について簡単に説明します。まず左足については、母指球を地面につけてかかとを浮かせるようにして足首を固定し、膝を地面につけます。次に右足についてですが、捕手姿勢Aでは足首を左足と同じようにして固定し、足首が膝よりも内側(お尻側?)にくるようにセットしています。捕手姿勢Bでは、右足裏を地面にべた付けして足首を固定し、足首が膝よりも外側に来るようにセットしています。ここで、左足首をお尻の下に入れ込むような座り方をすると、体重が過度に左足にかかり過ぎてしまい機動力が落ちてしまうので注意して下さい。

 それでは、各々の捕手姿勢の長所と短所について説明します。捕手姿勢Aは、動画を見てもらえれば分かりやすいように頭から両足のつま先までが一直線に並んでいるため、上方向に身体を動かしやすく高めの暴投に反応しやすいという利点があります。しかしながら、捕手姿勢Aは右膝を畳んでいる形になってしまっているため、キャッチングの際に右膝が右腕の邪魔になってしまい、またお尻を地面にべた付けしにくい姿勢でもあるので、右膝前周辺の捕球に不安定感が残ってしまうこと、他にも横方向への機動力が不足していることが欠点として挙げられるでしょう。

捕手姿勢A。右膝前の蓋を捕るとき、わざわざ右膝を開いてそこに右腕を差し込む必要がある。


 
 これに対して、捕手姿勢Bは捕手姿勢Aが持つ欠点をおおかた解消することができています。具体的には、動画を見てもらえれば分かりやすいように、真ん中から低めの蓋に対しては捕球時に右足を外側に投げ出すことで、お尻を地面にべた付けすることが容易にでき、高めの蓋に対してはそのまま立ち上がる動きをする、または上方向に跳躍することで対応することができます。

 この捕手姿勢の利点は、捕手のリーチ内であれば低めの叩きつけを全てカバーすることができる点と、右足首が膝よりも外側にあるため、例えばストレートがシュート質になった場合でも、右足で地面を蹴って滑ることで蓋の正面に身体を入れることが可能である点です。しかしながら、捕手姿勢Bは捕手姿勢Aと比べて上方向の暴投への反応速度が落ちてしまうという欠点があります(これは理屈というより経験的な気づきです。少しだけ考えてみると、右膝が鈍角に屈曲しているので、上方向に抜けた蓋を捕るために右足で地面を蹴ったとしても得られる力のベクトルは捕手目線で左斜め上を向いており、鉛直方向の力の成分は少なくなってしまうことが分かると思います)。

捕手姿勢B。お尻から右足にかけての形状がメタグロスみたいですね。
捕手姿勢AもBも、緑川大陸さんの構えの下半身を参考にしています。
@ベイコム総合体育館


 捕手姿勢AとBのどちらを使ってストレートを捕るのかは、その時々の投手の状態によって変えていました。「いつもより高め抜けが多いな〜」とか「変化球を投げた後にまっすぐ浮きがちだな〜」とか思う場合はAを用いて、逆に「叩きつけ多いな〜」とか「ずっといい高さで蓋がまとまってるな〜」とか思う場合はBを用いる、といった具合です。いずれの捕手姿勢を選択する場合でも、キャップ野球のストレートは常に一定のライズ質、またはカット質で捕手の手元に来る訳ではないので、基本的に上から下へと腕を振り下ろす向きにキャッチするようにしてあげるのが良いと思います。また、腰をどれくらい前傾させるか、どれくらい沈ませるかによって捕りやすさが微妙に変わってくると思うので、そこは自分に合ったフォームを探求してみて下さい。

3. カットボールの捕り方

 カットボールの捕り方は、2. ストレートの捕り方 で紹介した捕手姿勢Bをそのまま運用します。カットボールに対するブロッキングはKUCtC7期の髙地以上に上手い選手を見たことがないので、彼のブロッキングを参考にするのが一番良いと思います。

 
 捕手姿勢の組み方については先に説明済みであるため、ここでは省略します。まず、カットボールは余程キャッチしやすい軌道やコースでない限り、キャッチしようと思わない方が良いと思います(キャッチしやすいコースのカットボールは、それすなわち甘いコースのカットボールだと思うのでそもそも宜しくないが……)。カバー可能ゾーンに対するブロッキングの動画を見てもらえれば分かると思いますが、私はストレートを捕るときよりも左バッターボックスに近づいた位置で捕手姿勢Bを作り、右足の太もも、もしくは右の手のひらに当てて前に転がすような形でカットボールを捕るようにしています。捕手姿勢の性質上、向かってきた蓋を下に落として地面に転がすことができれば、腰から右足にかけて地面にべた付けしているので、逸らすリスクを十分に軽減でき、わざわざキャッチする必要がないためです。

 このような捕手姿勢では、ベースを巻く軌道のカットを捕ることがかなり難しくなります。カバー△ゾーンに対するブロッキングの動画を見てもらえれば分かる通り、右投手のカットボールに対しては膝を立ててある右足で地面を蹴り、上半身ごと捕手目線左側に入れ込むことによってカバーをすることができますが、左投手のカットボールについては、普段通り右足を地面にべた付けして腕の可動域を確保してから反応でブロッキングするしかありません。このように、カットボールは捕手にとって特にカバーが難しい球種でありながら、各投手ごとに横変化と縦変化の割合がまちまちでもあるので、まずは自分にとって適切な捕球位置の設定をすることが肝要になります。

カットボールのブロッキングに入る瞬間。左膝と右足の太ももにかなり負担が来ます……

 

 まあまあ長くなってしまったので、今回はここまでにします。次回は、スライダー系(横・縦・フックカーブ系)と緩急系(チェンジアップ、イーファスピッチなど)の捕り方について意識していることを書こうと思います。

それではまた!! キャップ野球楽しい‼️‼️


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