【デンマークのリアルを解き明かす⁉️現場訪問レポート③】Wardamsbo Efterskole

こんにちは!CANVASHIPのAyaneです。
デンマークの現場紹介も第3弾となりました。

第1回目(高齢者住宅)、2回目(障害児保育所)の記事はこちら↓

今回はデンマーク特有の学校、エフタスコーレをご紹介します(他の北欧諸国でも同じような学校システムあるんでしょうか、知ってる人がいたらぜひ教えてください^^)。

1.デンマークの教育システム

その前に、まずデンマークの学校システムを説明しますね。
日本とはちょっと、違います。

デンマーク教育システム.001

まず小学校に入学するところからいきなり違います。
『0年生』という学年がデンマークには存在します。
これは一年かけて学校教育や環境に慣れる、準備の学年です。アルファベットの読み書きや20までの数字など勉強の基本中の基本となることを学びます。

思ったより遅いな、と思いませんでしたか?日本なら多くの年長児がひらがなが読めたり、自分の名前が書けたりしますよね。デンマークでも、保育所で子どもが文字に興味を持ち出したときに遊びの中で教えることはありますが、全ての子どもにそれを強要することはありません。0年生の間にしっかりと身につけるので、幼児期はじっくり、心ゆくまで遊ぶことができるのだと思います。

そして1年生〜9年生まで学年があります。デンマークは日本でいう小学校と中学校が合わさったような『国民学校(Folkeskole)』というスタイルです。ちなみに0年生も義務教育です。少し昔は義務ではなく希望制だったそうです。

9年生が日本でいう中学3年生。ですが、このままストレートに高校に上がる以外の選択肢があります。

それが『10年生』です。
これは必須ではなく希望制の学年で、9年生までの学校生活で自分の学びが足りないなと感じた生徒が10年生に進むことを選びます。まるで留年のようですが、デンマークではそれまでの学年でも授業についていけなかったり、まだ次のステップに進むときではないと感じたら留年することがよくあるので、ある程度年齢がミックスされることに慣れています。それを「勉強が遅れている」とネガティブに捉えるのではなく、自分のために必要な時間だと考えるところがデンマーク流ですね(^^)
実際、45%もの生徒が10年生へ進むことを希望するそうです!だいたい2人に1人と考えるとその割合の高さに驚きます。

そして10年生として過ごす場所の一つが、今回紹介するエフタスコーレです。(ここまでたどりつくの長かった!笑)

エフタスコーレの大きな特徴は、全寮制だというところです。他の生徒と毎日の生活を共にしながら、学校によって設定されているコースから好きな科目を選び、学んでいきます。各学校によって特色あるコースが設けられているため、そのコースに入りたくて遠方から来る学生もいます。親元を長期で離れて過ごすのが初めてという生徒も多いそうですが、親世代も自分が通っていた人が多く、自分のその後の進路選びに役立った、人生のターニングポイントになったなどポジティブな体験をしているため、子どもにとっても良い経験になると考えている人が多いです。

多くのエフタスコーレが1〜2年間在学することを想定しています。が、それも人それぞれ。自分にとって良い環境だと思ったら2年目に進む人が多いようです。

その後の進路としては、職業別専門学校へ行ったり、アルバイトをしてみたり、高校へ進学したりします。自分が何をしたいかしっかり考えた上で選ぶため、日本と違って高校への進学率はそれほど高くありません(日本は97%、デンマークは45%)。

2.Waldemarsbo Efterskole
(ワルデマースボ エフタスコーレ)

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2019年に40周年を迎えたこのエフタスコーレは、コペンハーゲンから電車を乗り継いで約1時間ののんびりとした田舎町にあります。

ここに通う生徒はADHDや自閉症といった発達障害をもっていることが多いです。この近辺には他にもいくつかそういった障害をもった学生を受け入れているエフタスコーレがあり、それぞれ得意分野(と言うのかな?)があります。例えば近所の別のエフタスコーレはダウン症の学生も受け入れていますが、ここはそのノウハウがあまりないため、ダウン症の学生が入学を希望したときにはそちらを紹介する、といった具合です。

基礎科目(Basisfag)と呼ばれる国語(デンマーク語)、英語、数学に加え、メインとなるコースを次の中から選べます。

動物と自然、グリーンライン(花や植物)、デザインとハンドクラフト、アウトドア、演劇、運動、メディア、アート

これらは半年ごとに変えられるので、一年通うと2種類のコースから学べます。また、サブで選ぶ選択科目もいくつか用意されています。

このユニークなメインコースが開講できるための環境がばっちり揃っています。例えばこちらは『動物と自然』コースのための牧場です。

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ヤギが…!!出迎えてくれます!笑
奥に見える建物にも鳥やモルモット、トカゲ、リクガメ、ヘビ、裏にもニワトリやブタ、うさぎ、馬がいました。予想以上に豊富な種類の動物たち。驚くことに馬やヘビなどは生徒たちが自宅から連れてきたペットだそう!家で一緒に過ごしてきたペットも一緒に学校にいられるのは、私たちが考える以上に生徒にとって安心できるのだと思います。

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充実した環境は他にも…

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↑デザインとハンドクラフトコースのための工房

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↑グリーンラインコースの温室

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↑授業中のアートクラスの学生たち
などなど。


そしてこの学校にはちょっと変わったルールがあります。
それが『授業中、夜間のスマホ使用禁止』です。
厳しそうにも感じますが、学校生活では友だち関係作りや、生活リズムを整えることを大切にしているからこその措置だそうです。特に夜間は十分な睡眠を確保するためにこのようなルールがあります。発達障害をもつ若者は、睡眠に関しても何かしら問題を抱えているケースが多いというのが理由の一つだそうです。

生徒にこのルールについてどう思うか聞いたところ、「まあ…別に大丈夫だよ」とちょっと煮え切らないような返事をもらいました。笑

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↑教室にあったスマホボックス


また、普段生徒たちが住んでいる寮もいくつか見せてくれました。

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ここは3人部屋。2人部屋もあります。
しかし先ほども書いたように、生徒の多くは何かしらの発達障害を抱えています。中には音に敏感で、人の話し声がストレスになってしまうことも。

そんな生徒のための『静かな寮』が別棟でありました!

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見た目は特に変わったところはありませんが、生徒の状態に合わせて1人から3人部屋が用意されている他、この棟には専用の洗濯場がついています。少し配慮された環境があるだけで安心できますね。中には2年目になって普通の寮に移った生徒もいるそうです。


洗濯場ですが、他の生徒は共同の洗濯場を使います。

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洗濯機と乾燥機が設置されています。洗濯機の左上にカギのようなものがついてるのが分かりますか?

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それが生徒1人ずつの名札です。これで今だれが使っているのか一目瞭然です。トラブルを防ぐために、洗濯が終わっていても勝手に開けてはいけないというルールがあるのですが、この名札を見れば本人を呼ぶことができます。

食事も毎回食堂でみんなでとります。この学校では先生1人につき生徒5〜6人の小グループが決められており、そのメンバーで席に着きます。毎回同じメンバー、同じ席と決められているのは、見通しを持ち安心して過ごせる要素の一つですね。

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3.若者のためのフォルケホイスコーレ

まだまだ全ては紹介しきれませんが、エフタスコーレの雰囲気を感じてもらえたでしょうか。

もしデンマークのフォルケホイスコーレ(成人学校)について知っている人なら、似たところがたくさんあることに気づいたと思います。
実はエフタスコーレは若者のためのフォルケホイスコーレとも言われていて、対象年齢こそ違いますがそのシステムはとても似ています。
(フォルケホイスコーレ:17歳半以上、エフタスコーレ:主に15〜18歳)

ティーンエイジャーが集まる場であり、とくにここは発達障害を抱えた生徒が集まるため、少し特殊な環境かもしれません。

しかし先生たちは生徒たちの特性をよく知った上で、安心して共同生活を過ごすこと、友だち関係を築くことをサポートしています。なぜならこれらがここを出てからも生きる上で基本となり、どこでも必要になってくるスキルだからです。

学校内を案内してくれたのは2人の生徒だったのですが、とても生き生きしていて、この学校にいられることを喜んでいることが伝わってきました。実は途中で先生が声をかけに来て、授業が始まるので案内を別の生徒に代わるか、このまま案内を続けるか尋ねる場面があったのですが、2人とも案内を続けると言ってくれました。

また、訪問したのはクリスマス前の時期だったのですが、他の生徒たちもクリスマスイベントの準備をしながら私たちに声をかけてくれたりして、みんなが自分らしく過ごせている様子が感じられました。

一定のルールがある中で寝食を共にする『共生』が、フォルケホイスコーレ、エフタスコーレに共通する大切な要素であり、デンマーク教育のユニークなポイントではないかと思います。

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↑食堂での様子。中にはサンタ帽をかぶっている生徒も。



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では、最後まで読んでいただきありがとうございました!

Vi ses!(またね!)

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