ナミビアの砂漠を観た。

本日は、ナミビアの砂漠のネタバレをします。

映画『ナミビアの砂漠』公式｜9月6日(金)公開

ンマァ〜疲れた。心がキュウ〜っと搾り取られてもう大丈夫です、お腹いっぱいです、って途中からなった。
だからといってつまらなかったわけではないんだが、ただただ苦しいシーンが幾度も幾度も続いてキィーとなって帰りたくなった。

主人公のカナは家族関係や自分の恋愛経験から心の中で何かを失ってしまって、その空虚をどうにか埋めたくて、でも上手に埋められなくてが続いているような女の子で。
最初の方は「自由奔放」的な描かれ方をしてたけど、自由奔放なわけじゃなくて、ずっと何かを求めてるんだよね。だから元彼と今彼は被ってたけど、今彼と付き合ってからは不貞はしていないんだよ。

友達と会ってもどうでもいい話ばっかでつまんない、ホストに行ってもつまんない、つまんないと思っちゃうからよりつまんない。友達もホストも自分を見てくれない。
彼氏もウザったい、表面的に優しいだけで全く芯を食ってなくて、別にカナのことは見てない。
理解しているフリだけして全く本質が見れてないことが視聴者にはわかる。

そして乗り換える男は乗り換えるまでは優しい、でも一緒に住み始めたら常にカナの方を一途に向いてくれるわけじゃない、つまんない。
相手の家族とのバーベキューも、お前は気の置けない家族に囲まれてそりゃあ遠慮もなくフラフラできるし寝たりできるよな、こっちは誰とどう話したらいいかもわかんないのに、つまんない。
「同じカナだね、わたしはカナコだけど〜」って言ってくる女は家族に馴染んでて、同じカナなんだけどどう振る舞えば楽しいんだよわかんない。

みたいな、一緒にいてくれるって言ったくせに一緒にはいてくれてないんじゃん、見てくれてないんじゃん！っていうフラストレーションの末に大怪我をして、大怪我の間は献身的に支えてくれて、治ったら「もう大丈夫でしょ」で突き放される。

一点で見るとカナが勝手にヒートアップしてコントロール出来なくてウワー！！！！！！！ってなってしまってるんだけど、そこまでの中で蔑ろにされた何かがあって、いたたまれない。

このウワー！！！！！！！！シーンがとことん長くて、もう本当にしんどかった笑　英気が全て吸い取られてこっちも空っぽだよ。

「俺はカナを知ってる」と熱く語りながら復縁を求めて待ち伏せしながらも中絶したことには微塵も気づけなかった元カレ。アイツはカナにピルを飲ませているんだ、ピル飲ませてる安心感から中出ししたんだろ、あァー。

「二人で決めたこと」と元カノとの中絶を美談化して脚色して脚本にする今カレ。その割に中絶のこと忘れてたとか言う、その割にエコー写真とか捨てずに引っ越し先まで持ってくる。あァー。

調子良いエモい話に消化して、中絶した側の心の傷には全く寄り添えてない男x2グロい。グローーーーーい。この辺の畳みかけ本当にグロすぎて具合悪くなっちゃった。別に中絶じゃなくても、男女入れ替わっても、心底傷がついた経験を相手がエモとかいう「「思い出」」で消費してるんだろうなと思うと反吐が出る経験ってあるよね。

父親とはうまくいっていない（ロリコン発言もあったし）母親とは物理的な距離がありそうで、心の支えにはできない親との関係性に加えて、日本人だけど家族は中国ルーツというアイデンティティクライシスも重なって、軸をどこに立てたら良いかわからず、拠り所を探して、ぽっかりあいた穴を埋める何かを求めてずっと喉が渇いている砂漠。
「いいよなお前は実家があって、逃げられるんだから」って今カレに言い放つ瞬間もあったけど、カナは拠り所を、理解者をひたすら求めてるのに手が届く場所にそれか全く存在しないんだよね。

でも最後のシーンで分からないことが分かることは救いだったし、分かることを一つずつ、出来ることを一つずつこなすことでしかトラウマからは前には進めないんだよ。

あと今カレはもうお前ムリと言い放ちながらも取っ組み合いに正面から向き合っていて偉いなと思った…まあ逃げようとしてもカナから捉えられて逃げられないわけだけど。つらいこと、面倒なことに対峙するのを諦めんなとフィジカルで訴えられて、なんとか向き合おうとする姿勢が偉い。
ただこのままだとお互いに疲弊して終わるだけだし、メンタルヘルスとの正しい向き合い方って何なんだろうね
お互いを削り続けても未来が明るいわけではない。。

カナは精神科にも行ってるし、俯瞰で自分を見ることもできている。だけどコントロールがどうしても効かない部分がある。でも正直誰だって理性でどうにか抑えてるだけで怒り狂いたいし泣き叫ばないとどうにもできない感情って存在すると思うんだよね。それってどこ消化されていくんだろうね。

とかなんとか映画を見て数日考えてたけど答えもないし、グロいし、普通に具合悪くなって萎えた。
見れてよかった作品だけど、心身くらうものはあった。もう少し先の未来に観たら落ち着いて咀嚼できるんだろうか、そのくらいまでにいつか心が大人になれているのか私には全く分かりません。