「何かに注意が向くこと」の意味と看護
看護をする上で、人間とはどのような特性を持つのかを知る必要があります。
ここでは「何かに注意が向く」ことの意味について書いて行きます。
人は注意のシステムがあるからこそ、限られた範囲に注意を向け、ようやく対象を認知出来ます。
日常生活で、私たちは目の前の世界を全て認知出来るように感じているかもしれませんが、
それは錯覚です。
人は注意により選択したわずかな情報のみを認知出来ています。
つまりは、注意がない状態では、見える世界、聞こえてくる世界、
思考さえも全てがばらばらで散漫になってしまいます。
そして、そのような状態では、情報が見えすぎ、聞こえすぎる苦しみへ変化するかもしれません。
全ての生物は、とても複雑な環境から生存に必要な情報を巧みに抽出し、
その情報を最大限に活用して生き抜いています。
生きていく為にいらない情報はカットして
必要な情報だけインプットしているということです。
そして特に人間の社会生活は格段に複雑であるといえます。
私たちは毎日、大量の情報の中から欲しい情報を選択して「認知」し、生きています。
世界に何があり、それが自分にとってどのような意味を持つのか
人間は、生まれてから、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚器官から環境についての情報を入力していきます。
そして赤ちゃんや色んなものに触ったり口に入れたりして体験して覚えて行くように
様々な知覚経験を重ね、物事を覚えながら心を作っていきます。
徐々に言葉を覚えると思考や問題解決などの、より高度な情報処理が可能になってきます。
その基盤には身の回りの世界や出来ごとをどのように捉え、
それを選別、保存、加工したりする「知覚」と「記憶」のプロセスがあります。
そして、それは環境に適応するための行動に現れます。
つまり、
人間の聴覚や視覚が反応するという事は、単に周りの世界にあふれる形や色、運動、空気の振動(音)を捉えることではなく、世界に何があり、それが自分にとってどのような意味を持つかを理解することです。道又爾ほか.『認知心理学-知のアーキテクチャを探る』2011年、有斐閣
赤ちゃんがお母さんの匂いを知ってるように、
自分にとって意味のある情報だけキャッチして「認知」し「記憶」していくということです。
胎児から乳幼児研究を対象にした注意研究
選好や弁別は「注意」と深く関わっていることが、胎児期から乳幼児期の研究により明らかになっています。
人間は神経系が高度に発達した動物でありながら、生理的には未熟な状態で生まれてきますが、
胎児においては出産の約1カ月前になると、成人の女性の声の高さに好んで注意を向け反応する、また、胎児は母親の声と他の女性の声を聞き分けることが出来るともいわれています。 乳児を対象にした選別研究では、乳児はランダムに絵が提示されたときよりも、予測しうる順序で提示されたときの方が刺激提示に先だってその方向に目を向けることが多く、反応までの時間もより短いことが分かっています。 このように、生後3カ月半までには乳児は自分の知覚的注意をコントロール出来るようになる、といわれています。 引用:石口彰.『認知心理学演習 視覚と記憶』H24、オーム社
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感覚器官からは絶えることなく大量の情報が流れ込んできます。
しかし、人間の認知機能はその全ての情報を処理することは出来ません。
つまり環境 について自分にとって重要な事柄を知らせてくれる「情報」を選別する必要があります。
脳は意味ある情報だけを選別して効率的に情報を伝えている
つまり、脳は自分で選別して情報とってるということです。
患者さんの病態や看護のポイントを押さえていないと
大量の情報から急変を見逃してしまうかもしれません。
例えば、誰かの不満や悪口ばっかり聞いてると、
良いところに注意がいかず見逃してしまうかもしれません。
自分の将来を明確に具体的な言葉に出来ると、
そこに「注意」がいくので
それに関する「情報」を得やすい状態になります。
日頃からどこに「注意」を向けるかちょっと意識してみると、
色んな見方が変わってくるかもしれませんね。
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