クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 を見た

高橋渉と橋本昌和が交互に監督する、という体制を崩しての一本目。今回の監督は京極尚彦。代表作は『ラブライブ!』、『プリティーリズム』シリーズ、『宝石の国』。とのことである。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%AC%E6%A5%B5%E5%B0%9A%E5%BD%A6

東宝のロゴが消えるのを待たずに、現在のTVシリーズのオープニング曲『マスカット』が流れ出す。そして映し出されるのはスタッフ・クレジットとクレイアニメ……ではなく、マサオくんがヴァーチャル空間でラクガキをしている。オープニング映像とスタッフ・クレジットはもう少し後、ラクガキングダムの窮状と交互に映し出される。この時点で、今回は一味違う、と思わせる。構成を大胆に変えているのはもちろんだが、ここまでで体感したテンポの良さは間違いなく「アタリ回」のそれだ。そして、空から真っ逆さまに突き出している城、そのヴィジュアルはまさしく……!!!!

クレジットには、コンセプトデザイン - 久野遥子 とある。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%A8%E3%83%B3%E3%81%97%E3%82%93%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93_%E6%BF%80%E7%AA%81!_%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%AC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%81%BB%E3%81%BC%E5%9B%9B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%8B%87%E8%80%85

姫と宮廷画家が、城の内部を駆け巡る。このとき見られる内観もまた、新鮮なイマジネーションを持って描かれている。宮廷画家が城を飛び出すや重力が反転し、地上へ自由落下する。完璧である。

地上の人々の行い(今回はラクガキ)がエネルギーに変換され、それを糧として生きていた別世界の住人が、エネルギーの枯渇に伴ってその行い(今回はラクガキ)を強制しにやってくる、というのは過去作でも見られた導入だ。個人的には近年の傑作『おもちゃウォーズ』『ユメミーワールド』を連想した。特に『おもちゃウォーズ』は、しんのすけと、しんのすけにとってのヒーローの交流を描いていることもあり、Amazonオリジナルという形で製作された外伝作品ながら、今作や歴代の傑作と並べて見たいものになっている。

しんちゃん映画とは切り離せない命題がある。それはギャグと感動を両立させること。そのために何をどう展開させ、大団円に持っていき、なおかつ筋を通すかということだ。それなりに展開はするが最後が……とか、整合性はあるもののどうも小さくまとまっていて……など、過去作には沢山の宿題が残されている。

たとえば『3分ポッキリ大進撃』については、

https://twitter.com/cannotcaz/status/1257977779032715264?s=19

こうである。

今回は、上記の命題を見事にクリアしている。序盤で感じたテンポの良さは最後まで失われることなく、しんちゃん映画らしい笑いと感動に還元されていく。そして、しんちゃん映画でしかありえない方法で、ラクガキングダムが、そして春日部が救われる。平和が取り戻されたあと、しんのすけが空に向けて贈ったプレゼントは、『3分ポッキリ大進撃』の雪辱を晴らすかのようだ。

余韻を残しつつ日常に戻っていき、エンディングテーマへ、という終幕。今回、クレイアニメはここで登場する。いいしんちゃん映画を見た、という充足感にさらなる驚きと喜びが加わる。

ここで私は「美意識と執念に貫かれ」ていると書いている。これこそが、しんちゃん映画になくてはならないものであり、

ここで熱っぽく言及した諸作には、それがある。今作も同様だ。

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