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気ままに連句【独吟歌仙】文鳥の巻•満尾

気ままに連句


独吟歌仙  
文鳥の巻 (2022.6.16〜 2024.5.31)


文鳥の背にまろぶ梅雨の光かな
  客人を待つ透明ゼリー
食堂車スパイは背中合わせにて
  セリフ飛び交うアイソメ世界
森の淵月へと向かう船を待ち
  草の露踏み濡れる爪先
椋鳥の往きつ戻りつ遊歩道
  胸ポケットに名札隠して
レジに来る今日もクリームパンの彼
  真昼の星の唄うメロディー
五線譜の奥行き遥か彼方のラ
  塗り潰す手に香る黒鉛
教室の明かりとかぶる窓の月
  空の虫籠ベランダに出し
鯖雲に防災無線こだまする
  乙女の祈り大音量で
我が道を行けと聲する花の下
  スマホ忘れて風はうららか
花粉症寺を指差しくしゃみする
  屋根の日向に猫丸くなり
押売りも二階の琴に耳澄ます
  白魚の指滲む血を吸い
呼び止めるかわりに薔薇の棘つかむ
  あの夏の日の陰の黒さに
給水塔腰掛け天使脚揺らし
  鈴懸の木の鈴が鈴生り
道端の片手袋に祈り寄せ
  幸せはイマココにあるらし
月の河渡し舟には銀の笛
  まつ毛ひと枝咲く龍田姫
酒煽り病みて来し方霧深く
  堕ちた夢吸い孕む東京
一葉を音読すればつむじ風
  和毛にこげの童頬は薔薇色
ミサイルを捨ててその手に花束を
  古屋の軒を昇り行く蝶



約2年かけて、独吟歌仙が満尾しました。何気なくTwitterで呟き始めたとき、こんなに時間がかかるとは思いませんでした。
誰に強制されてるわけでもないので、句の間が2ヵ月空いてしまうこともありましたが、なんとか途中で投げ出さずに終わらせることができました。

発句のモデルになった文鳥は、10年生きて昨年虹の橋を渡りました。

文鳥の背にまろぶ梅雨の光かな

白文鳥のすべらかな背中に、梅雨の湿った光が滑り落ちて行くさまを詠みました

食堂車スパイは背中合わせにて

当時アニメのSPY×FAMILYが流行っていました

レジに来る今日もクリームパンの彼
  真昼の星の唄うメロディー

ファミファミファミーマファミファミマー♪

我が道を行けと聲する花の下

人生で一番辛い桜の季節でした

押売りも二階の琴に耳澄ます

昔、押し売りじゃないけど来客に琴の練習を褒められたことがありました

古屋の軒を昇り行く蝶

家が古くなるまで手入れされながら人に住まわれ続けることの贅沢な幸福




これまで読んでくださった方、ありがとうございました。


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