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気ままに連句 名残裏5 花束

気ままに連句


独吟歌仙  (2022.6.16〜 )


1  文鳥の背にまろぶ梅雨の光かな   夏
2  客人を待つ透明ゼリー               夏
3  食堂車スパイは背中合わせにて   雑
4  セリフ飛び交うアイソメ世界      雑
5  森の淵月へと向かう船を待ち      月
6  草の露踏み濡れる爪先               秋
ウ1 椋鳥の往きつ戻りつ遊歩道       秋
ウ2 胸ポケットに名札隠して          雑
ウ3 レジに来る今日もクリームパンの彼      恋
ウ4 真昼の星の唄うメロディー       雑
ウ5 五線譜の奥行き遥か彼方のラ    雑
ウ6 塗り潰す手に香る黒鉛             雑
ウ7 教室の明かりとかぶる窓の月    月
ウ8 空の虫籠ベランダに出し          秋
ウ9 鯖雲に防災無線こだまする       秋
ウ10 乙女の祈り大音量で              雑
ウ11 我が道を行けと聲する花の下  花
ウ12 スマホ忘れて風はうららか     春
ナオ1 花粉症寺を指差しくしゃみする  春
ナオ2 屋根の日向に猫丸くなり       雑
ナオ3 押売りも二階の琴に耳澄ます 雑
ナオ4 白魚の指滲む血を吸い          恋
ナオ5 呼び止めるかわりに薔薇の棘つかむ     恋
ナオ6 あの夏の日の陰の黒さに       夏
ナオ7 給水塔腰掛け天使脚揺らし    雑
ナオ8 鈴懸の木の鈴が鈴生り          雑
ナオ9 道端の片手袋に祈り寄せ       冬
ナオ10 幸せはイマココにあるらし  雑
ナオ11 月の河渡し舟には銀の笛      月
ナオ12  まつ毛ひと枝咲く龍田姫     秋
ナウ1  酒煽り病みて来し方霧深く    秋
ナウ2  堕ちた夢吸い孕む東京          雑
ナウ3  一葉を音読すればつむじ風    雑
ナウ4  和毛の童頬は薔薇色              雑

ナウ5  ミサイルを捨ててその手に花束を     花




棟方志功の版画に「華狩頌はなかりしょう」という作品があります。
美術館で実物を観て感銘を受けました。

図録より

図録の説明文に、棟方志功のこんな言葉が載っています。

けものを狩るには、弓とか鉄砲とかを使うけれども、花だと、心で花を狩る。きれいな心の世界で美を射止めること、人間でも何でも同じでしょうが、心を射とめる仕事、そういうものを、いいなあと思い、弓を持たせない、鉄砲を持たせない、心で花を狩るという構図で仕事をした

棟方志功 自伝


バンクシーの絵に「花を投げる人(花を投げる男)」という作品があります。

ヨルダン川西岸地区のベツレヘムに描かれた《花を投げる人》。圧倒的な武力を持つイスラエル軍の軍事占領と攻撃に投石で抗議したパレスチナのインティファーダ(抗議運動)をモチーフに、顔を半分隠した男の手に、石ではなく花束を持たせた代表作。高さ6m以上の巨大な壁画は「武器ではなくアートで現状を変えていく」というバンクシーの姿勢をよく表している。

casabrutus記事キャプション


弓を持たずに心で花を狩り、武器を持たずに手に花束を持つ。
人間にはそれが可能であると信じて、ジェノサイド反対の意を花の句に込めました。


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