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サンフレッチェ広島はOne Team〜松本泰志交代劇にみる、チームの強さ〜

やっと勝った。

サンフレッチェはJ1第4節vsガンバ大阪戦にてようやく2023年シーズンJ1初勝利を掴んだ。

開幕戦は大きな騒動となった大誤審で札幌に引き分け、第2節新潟にはまさかの力負けで敗戦、第3節マリノス戦では善戦するもドロー。

まさか、3節を終えて勝ち点2。。。。

優勝候補との呼び声もあった中でスタートダッシュに失敗してしまった。

攻めてシュートまで行くのに、とにかく点が入らない。今季の降格枠は1枠のみであるが、残留争いの覚悟をしないといけないのかもと思い始めた。

そんな悪い流れを払拭したのはミッドウィークにあったルヴァン杯横浜FC戦だった。苦しい試合ではあったが、後半から入った主力組の活躍で3-1勝利。シーズン初勝利でチームはグッと自信を取り戻し始めた。



迎えた3/12。
J1第4節vsG大阪戦。


相手のガンバはここ数年は思うような成績が残せておらず、今季もまだリーグ未勝利のチームである。

【スタメン】
  ナッシム ピエロス
東  川村   森島  満田
     野津田
 佐々木   荒木   塩谷
       大迫

前半早々にサンフレッチェはナッシムのゴールで先制。やはりナッシムはガンバキラー。そして東のフィード、森島のトラップも完璧だった。

その後もサンフレッチェは攻める。前半戦は広島ペースで終わった。

流れが変わったのは後半。一枚カードをもらっていたピエロスに変えて松本泰志を投入し、ダブルボランチに変更した。スキッベ監督は前半でカードをもらった選手を、リスク回避のために早々に下げるパターンが多い。今回もそのパターンの交代で、かつ守備でのバランスを取る狙いがあったと思う。

【後半開始】
     ナッシム 
東  川村   森島  満田
   松本   野津田 
 佐々木   荒木   塩谷
       大迫

しかしこれが上手くハマらなかった。ワントップになったことで前への圧力が小さくなり、ガンバの早い縦への展開に押され気味になった。今季、CB塩谷とWB満田の裏を狙うロングボールで崩される形が多く、この試合でも散見された。

後半25分。
満田と塩谷が釣り出されたところに、左サイドで宇佐美が縦へのパスに反応。カットインして荒木を剥がしシュートすると、ボールは松本泰志の足に当たるが無情にもネットを揺らし同点。

直後にスキッベ監督はインアウトの形で松本泰志に変わり中野を投入。満田がシャドー、中野が右WB、川村がボランチに移った。

【後半28分】
    ナッシム
東  満田   森島  中野
   川村   野津田 
 佐々木   荒木   塩谷 
       大迫

なんとも言えない表情で下がってきた泰志をスキッベ監督は抱きしめて迎えた。
サッカーの試合では怪我でもない限り、交代で入った選手が下がるケースはなかなか無い。相当悔しかったはずだし、下手すれば選手が腐ってしまいかねない、かなりセンシティブな交代だった。

チームはその後スキッベ采配が当たり、シャドーに移った満田の前プレスからナッシムが倒されPKを獲得。天皇杯のミスを払拭する満田のゴールが決勝点となり、サンフレッチェはなんとかリーグ初勝利を掴んだ。



ここからが本題である。

この試合、
・苦しみながらのリーグ初勝利
・佐藤寿人のチャントを満田が引き継ぐ『王位継承』
・青山、鮎川のメンバー復帰
・ナッシムがPKを若手の満田に譲った経緯
など取り上げたいことはたくさんあるのだが、一番象徴的だった泰志のインアウトについて取り上げたいと思う。

上にも書いた通り、インアウトした泰志にとってはかなり苦い試合になった。失点シーンに絡んでしまったものの、攻撃では果敢な飛び出しで見せ場も作っていた。そのため、屈辱の交代劇となった泰志のメンタルが心配された。

しかしそんなことは杞憂であった。
スキッベ監督は試合後のTVインタビュー、囲み取材、そしてピッチ上での円陣で何度も泰志に謝罪したのである。

『あの交代は泰志の責任ではなく、私の采配ミスであった』と。

(INSIDE動画の13分8秒あたり参照)

結果論になるが、ピエロスを下げてワントップにした事で前への圧力を失ってしまい、ガンバを元気づけてしまった。ピエロスをもう少し残すか、ピエロス→鮎川に変えることで2トップを継続、もしくは後半28分からの布陣のように満田をシャドーに入れることで前へのプレスを強固にする必要があった。

スキッベ監督は、泰志のパフォーマンスが悪かったわけではなく、自身の采配ミスを修正するための、あくまで戦術上の交代である事を強調していた。

このように、監督が采配ミスを認め謝罪することは稀である。囲み取材で、ナッシム・森島・野津田・荒木らも口々に監督の人柄について絶賛していた。

これはかなり救われたと思う。泰志本人も泣きそうになったと正直な思いを述べていた。

そうしてもう一つ象徴的なシーンがあった。

試合後のラウンドのあと、川浪と志知が泰志を励ましたシーンである。

(INSIDE動画の15分48秒参照)

川浪も志知も出場機会が少なく悔しいはずであるが、泰志を慮って励まし続けた。(モリシは後ろでニヤニヤしていたが、これはこれでモリシらしくていいと思う。)

この2つのシーンにサンフレッチェの強さを見た気がする。サンフレッチェはよくある口だけのチームではなく、本当の意味でOne Teamである。今季のスタートは出遅れたが、間違いなくここから巻き返してくれる。そう強く思わせてくれるシーンだった。

そして松本泰志。間違いなくこれからのサンフレッチェを支える選手である。チームとともにもう一度這い上がってほしいと思う。

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