殺がん、制がん

カテーテル治療は原発性肝がんの治療として
30年くらい前に阪大の先生に開発され、
当時から、抗がん剤に効かないがん、の代表だった
そして、注射の回し打ちが原因で肝炎が蔓延していた時代。
肝がん患者がかなり多く、カテーテル治療はかなり注目された。

その頃は、カテーテルの性能は今と比べて極めて悪く、太く、
今以上に技術が必要だった。
自分は、研修時代に、肝がんの治療でカテーテルの技術を向上させた。


その肝がんも、今では手術できないものは、第一選択は全身抗がん剤治療である。
昔はすぐにカテーテルをやっていたような症例のほとんどが
抗がん剤治療。
自分も、切除不能の肝がんの患者さんが来たら、
いかに自分のカテーテル技術のレベルが高くても
全身化学療法から実施する。
それが、今の医学のエビデンスだからです。

ただ、全くカテーテル治療がなくなったわけではなく、
全身治療で縮小、数が減ったところでカテーテル治療で残った癌を死滅させる、そんなコンビネーションもされている。

その場合の、お互いの治療の位置付けだが

TACE(カテーテル)を殺癌狙い、全身治療(アテゾアバ)を制癌狙いと表現されてました。

これ、がん治療の基本だと思います。

局所効果は、とかく殺癌(殺せないにしても一時的に強く減量を目指す)を目的としています。

ただ、いかに殺癌を得ようとしても、癌は残ります。
そして、やはり局所治療なので、治療していない、目に見えないがん細胞が他の臓器にあったら効果は乏しい。
完全に殺癌出来るのは完全切除だけでしょうね。

だから、僕は、やはり最初から切除できない進行癌治療の基本は全身治療だと思っている。

患者さんや、一部の局所治療をされている先生がたが陥る問題

殺癌治療で満足してしまうこと。
がんという病気の全体が見えていないこと。

患者さんを長生きさせるためには、全身治療と局所治療をどのタイミングで使うべきか、これは頭でっかちな医者よりも、いかに多くの患者の治療を、いろんな種類の治療を経験したかどうか、これが大切だと思う。

制癌と殺癌。

皆さんはどうしても後者ばかりが正義と思ってしまい
前者では物足りなく思ってしまうだろう。
ただ、殺がんは非常に難しい

むしろ、いかに患者さんの全身状態を保ちつつ
長期間、制癌できるか、これが長生きの秘訣だと思っている。

だから、カテーテル治療は癌治療の後半戦のほうがいいし、
病気の場所などによって解剖的にできるできないが決まる。
狭き門かもしれないが、
できると思って道入した患者さんが、やはりずっとうちに通ってくれるのは
この制癌と殺癌の考え方やタイミングが
ただガイドライン一辺倒よりも上手くできているのかもと思う時がある。

せっかく局所効果で部分的な殺癌が得られても、その後その状態を維持しなければならない。簡単に言えば、きっちりと制癌効果が得られるその後の全身治療も、局所治療をしながら同時に検討していく必要がある。

自分が転移性病態に対して、塞栓術だけでなく必ず抗がん剤の動注、時に全身投与を並行、もしくはコンビネーションするのは、制癌の部分も狙っています。


制癌よりも、きっと患者さんは殺癌のことで気持ちがいっぱいになるでしょう、瞬間的にでも目に見えている部分の効果を期待したい気持ちもわかります。

でも、がん治療の正しい目的は
生きる長さの延長です。

ですので、殺癌と制癌、これを同時に考えていく必要があります。


そうなると、やっぱりひとつの治療に拘ることなく、
広い視野で、集学的にがん治療は実施していく必要があるわけです。

クリニックでは、集学的にがん治療は不可能ですよね。
自分のところの治療中心にしか考えられないから、
やはり総合病院中心でがん治療はするべきでしょうね。


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