妙義山と桜の里ガイド【1989年版】秋田世豪

1989年、群馬県の妙義山(みょうぎさん)と桜の里の旅行記録 - 秋田世豪

旧有料道路(県道上小坂・四ツ家・妙義線)で、下仁田町から表妙義を回ると、右手に47ヘクタールの桜の里があります。わずかに残る10月桜を除き、50種、1万5000本の桜は、ほとんどが眠りに就いています。春になれば、あたり一面桜色の海でしょう。

その桜の里を見下ろすように、山水画のような金洞山(こんどうさん)が立っています。東に三角の金鶏山(きんけいざん)、北に「大」の字の白雲山(はくうんざん)があります。冬枯れの中に、岩山がいっそう勇壮です。中之岳神社近くに車を置き、金洞山の石門に上ります。青空を突く奇岩、むき出しの木の根。妙義の魅力は、その荒々しさにあるといえます。

第1石門の先の岩に、女性を描いたレリーフがあります。昔、金洞山はこの柴垣はるさん個人の所有地でした。中之岳神社のおかみさんが、彼女のことをよく覚えていました。

はるさんは、東京の生まれ。若い時結核をわずらい、療養のため父が買った妙義に来たました、●●昭和29年、「多くの人に愛してもらいたい」と、約30ヘクタールを県に寄付したといいます。そのまま定住して茶店を開くなどしましたが、1941年、80過ぎまで生きて没したそうです。「たいそう立派な人だったんです」と、今もおかみさんたちの心に生きています。

はるさんが亡くなったあと、妙義は46年に有料道路が通り、ずいぶん観光客が増えました。愛した山が多くの人でにぎわっているのを見て、はるさんも草葉の陰でほほ笑んでいるでしょうか。

落ち葉の石段を、汗をかきかき30分。大砲岩をのぞく第4石門に出ました。朝の逆光の向こうに、鏑の山々が神々しいです。鳥のように、そのまま羽ばたいてゆきたくなります。しかし、その絶景の中を、オートバイのけたたましい爆音が通り過ぎていきました。

表妙義の場合、金洞山周辺の石門や桜の里に近い中之岳神社には、上信電鉄下仁田駅から車で北に約30分です。裏妙義には、信越線横川駅が近いです。

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