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角川文庫版と角川スニーカー文庫版のハルヒ読み比べ(涼宮ハルヒの暴走)

 こんにちは。前回に引き続き角川スニーカー文庫と角川文庫の読み比べを行っています。今回は第五回で、『涼宮ハルヒの暴走』です。
 読み比べに使用したのは角川スニーカー文庫四十四版、角川文庫初版。

Twitterで見たい方はこちら。(途中までです)

 表紙から目次までの比較。これまで同様、角川スニーカー文庫版では作者である谷川流さんのあとがきだった部分が、角川文庫版では解説になっています。違いは他に角川文庫版は挿絵が無いです。(スニーカー文庫版はプール等の挿絵がある)

暴走2

暴走3

暴走4

暴走5

『序章・夏』…変更点は見つからず。

『エンドレスエイト』

角川スニーカー文庫 P.7
 俺は家の居間でダラダラしながら別に見たくもない高校野球をテレビで眺めていた。
角川文庫 P.11
 俺は家の居間でダラダラしながら別に観たくもない高校野球をテレビで眺めていた。
補足…見るから観るへの変更。スポーツなど『しっかりと目で追う』のは『観る』らしい。

角川スニーカー文庫 P.19
 満面の笑顔。
角川文庫 P.23
 満面の笑み。
補足…『満面』という言葉に顔全体という意味があるので、ここに『笑顔』とすると顔の意味が重なるため誤用になるそうです。頭痛が痛いみたいな感じですかね。

角川スニーカー文庫 P.32
 長門はそっけなく地味な幾何学模様柄であった。
角川文庫 P.36
 長門はそっけなく地味な幾何学模様であった。
補足…『幾何学模様柄』から『柄』を削除。すごい細かいので詳細はググって欲しいのですが、模様と柄は近い意味合いなので重ねては使わないみたいです、はい。

角川スニーカー文庫 P.40
 そうね、全員で採った数を競うの。
角川文庫 P.43
 そうね、全員で捕った数を競うの。
補足…採るから捕るへの変更。集める場合は採るで、生き物をつかまえる場合は捕るになるそうです。じゃあ昆虫採集とは何なのかと聞かれると私も困っちゃうのですけどね…。

角川スニーカー文庫 P.42
 いい年した高校生が五人も集まって、それぞれ虫採り網とカゴ持参で歩いている図というのも異様だよ。
角川文庫 P.45
 いい年した高校生が五人も集まって、それぞれ虫捕り網とカゴ持参で歩いている図というのも異様だよ。
補足…虫採り網から虫捕り網への変更。同上。

角川スニーカー文庫 P.46
 アイスを舐めながらハルヒが現れたときには、真剣、こいつどこかの熱い砂浜に首から下を埋めてやろうかと思ったほどだ。
角川文庫 P.49
 アイスを舐めながらハルヒが現れたときには、真剣に、こいつどこかの熱い砂浜に首から下を埋めてやろうかと思ったほどだ。
補足…真剣から真剣にへ変更。

角川スニーカー文庫 P.48
 さすがにぐったりした。連日連夜、プールだの虫採りだの(以下略)
角川文庫 P.50
 さすがにぐったりした。連日連夜、プールだの虫捕りだの(以下略)
補足…虫採りから虫捕りへの変更。セミ捕りの時と同様です。

角川スニーカー文庫 P.52
 外灯のぼやんとした光が、古泉の柔和な表情を照らしている。
角川文庫 P.53
 街灯のぼやんとした光が、古泉の柔和な表情を照らしている。
補足…外灯から街灯へ変更。外灯は『建物の外に取り付けた電灯』で、街灯は『街路を明るくするための電灯』という違いがあります。

角川スニーカー文庫 P.70
 夏はまだ続きそうだが夏休みはそろそろ終わりが近い。にも拘わらず、(以下略)
角川文庫 P.70
 夏はまだ続きそうだが夏休みはそろそろ終わりが近い。にもかかわらず、(以下略)
補足…にも拘わらずが平仮名表記に変更。漢字自体は拘で正しいため、変更理由は不明です。

角川スニーカー文庫 P.76
 「まあいいわ。(中略)色んな所に行ったし、浴衣も着たし、セミもたくさん採れたしね」
角川文庫 P.76
 「まあいいわ。(中略)色んな所に行ったし、浴衣も着たし、セミもたくさん捕れたしね」
補足…(またセミ捕りの話してる…)

角川スニーカー文庫 P.77
 今まで一万回もやっている繰り返しの出来事。
角川文庫 P.77~78
 今まで一万回以上もやっている繰り返しの出来事。
補足…一万回『以上』も~と、正しい表現に訂正されています。

角川スニーカー文庫 P.81
 ハルヒ達とプール行ったりセミを採ったりした八月の記憶の数々。
角川文庫 P.81
 ハルヒ達とプール行ったりセミを捕ったりした八月の記憶の数々。
補足…セミは!!!捕るんだ!!!

角川スニーカー文庫 P.81
 一日ですべてのノートを模写するだけでも重労働なのに、(以下略)
角川文庫 P.81
 一日ですべてのノートを書写するだけでも重労働なのに、(以下略)
補足…模写するから書写するへの変更。模写は対象が絵や図などであり、書写は文字や短文などが対象です。

『序章・秋』

『射手座の日』

角川スニーカー文庫 P.94
 歴史にifはないが、同数同戦力でリプレイしたとしてもコテンパにやられるのが主だった筋書きになっているに違いないね。
角川文庫 P.96
 歴史にifはないが、同数同戦力でリプレイしたとしてもコテンパにやられるのが主だった筋書きになっているに違いないね。
補足…ifが半角から全角へ変更。

角川スニーカー文庫 P.104
 なんとなく馴染みになりつつある隣室の主、コンピュータ研の部長であった。
角川文庫 P.107
 なんとなく馴染みになりつつある二軒隣の主、コンピュータ研の部長であった。
補足…コンピュータ研の部室が文芸部室の隣室から二軒隣へ変更。なかなか珍しい変更ですね。

角川スニーカー文庫 P.108
 転倒の拍子に頭を打ったらしい部長氏は、「ううう」とか呻いて配下の部員たちに介抱されつつ心配させている。
角川文庫 P.111
 転倒の拍子に頭を打ったらしい部長氏は、「ううう」とか呻いて配下の部員たちに介抱されつつ心配されている。
補足…心配させるからされるへ。

角川スニーカー文庫 P.131
 そんなこんなで翌日の放課後から、隣室の連中を仮想敵とした俺たちの特訓が始まった。
角川文庫 P.131
 そんなこんなで翌日の放課後から、連中を仮想敵とした俺たちの特訓が始まった。
補足…『隣室の』というフレーズの削除。先述のコンピュータ研の部室の位置のため。

角川スニーカー文庫 P.140
 十六時〇〇分。
角川文庫 P.141
 十六時零分。
補足…時刻の表記変更。

角川スニーカー文庫 P.143
 いよいよ決戦の火蓋が切って落とされようとしているのだった。
角川文庫 P.142
 いよいよ決戦の火蓋が切られようとしているのだった。
補足…火蓋が切って落とされるから火蓋が切られようとしているに変更。

角川スニーカー文庫 P.148
 長門は呼吸をしていないような顔で両目をモニタに据え付け、(以下略)
角川文庫 P.148
 長門は呼吸をしていないような顔で両眼をモニタに据え付け、(以下略)
補足…両目から両眼へ表記変更。

角川スニーカー文庫 P.150
 俺と古泉は小魚の群れ並みに瞬時の連携で押し留めようとした。
角川文庫 P.150
 俺と古泉は小魚の群れ並みに瞬時の連携で押し止めようとした。
補足…押し留めるから押し止めるへ。関係ないけど、先ほどからページ数がスニーカー文庫と角川文庫で揃ってますね。

角川スニーカー文庫 P.150
 と言いながらも、古泉は自分の艦隊をハルヒ艦隊の進路上から移動させようとはしない。
角川文庫 P.150
 と言いながらも、古泉は自分の艦隊をハルヒ艦隊の針路上から移動させようとはしない。
補足…進路から進路へ。針路は乗り物の先端の方向、進路は移動していく方向。

角川スニーカー文庫 P.151
 俺は自艦隊を操って旗艦艦隊の進路を塞ぎにかかり、(以下略)
角川文庫 P.151
 俺は自艦隊を操って旗艦艦隊の針路を塞ぎにかかり、(以下略)
補足…進路から針路へ変更。(同上)

角川スニーカー文庫 P.167
 隣室の驚愕は索敵モードんときとは比べものにならんだろうな。
角川文庫 P.166
 向こうの驚愕は索敵モードんときとは比べものにならんだろうな。
補足…コンピュータ研の部室の場所に沿った表現に変更。

角川スニーカー文庫 P.168
 コンピュータ研の他の連中がどこにいるかと探せば、(以下略)
角川文庫 P.167
 コンピュータ研の他の連中がどこにいるかと捜せば、(以下略)
補足…探すから探すへ変更。見えなくなったものが対象の場合は捜すだそうです。

角川スニーカー文庫 P.172
 それとも判断の是非を俺にゆだねる意思の現れなのか。
角川文庫 P.171
 それとも判断の是非を俺にゆだねる意思の表れなのか。
補足…現れから表れへの変更。現れは物理的な、表れは抽象的なものに使う。意思や感情などは表れるが適切だそうです。

『序章・冬』

『雪山症候群』

※変更点ではないのですが、新川さんは角川文庫版でも荒川さん表記のままでした。

角川スニーカー文庫 P.188
 ハルヒがデタラメな順番で投入する肉や魚や野菜類を、布巾をかぶったメイドバージョンの朝比奈さんが(以下略)
角川文庫 P.190
 ハルヒがデタラメな順番で投入する肉や魚や野菜類を、三角巾をかぶったメイドバージョンの朝比奈さんが(以下略)
補足…布巾から三角巾へ変更。

角川スニーカー文庫 P.191
 安心材料がどこかにないかと見渡して最初に目が止まったのは長門の無表情顔である。
角川文庫 P.193
 安心材料がどこかにないかと見渡して最初に目が留まったのは長門の無表情顔である。
補足…止まるから留まるへ変更。慣用句的には『目が留まる』が正解。

角川スニーカー文庫 P.192
 そうやって大晦日を事件発生とトリックの解明にあてて午前0時前に全員集合、(以下略)
角川文庫 P.194
 そうやって大晦日を事件発生とトリックの解明にあてて午前〇時前に全員集合、(以下略)
補足…午前0時から午前〇時への表記変更。この一つ前の話である『射手座の日』では十六時〇〇分から十六時零分へ変更になっているのですが、変更理由や法則は不明。

角川スニーカー文庫 P.196
 (略)、古泉は湯気を立てる鍋を背景にしてまで優美な印象を受ける微笑をたくわえ、(以下略)
角川文庫 P.198
 (略)、古泉は湯気を立てる鍋を背景にしてまで優美な印象を受ける微笑をたたえ、(以下略)
補足…微笑をたくわえからたたえに変更。慣用句的には『微笑をたたえる』なのですが、微笑の読みが『びしょう』か送り仮名を付けて『ほほえ(み)』で諸説あるみたいです。まあ今回は『びしょう』とルビがふってあるので余談ではあります。

角川スニーカー文庫 P.197
 思わず呟きが漏れてしまったが、ハルヒと鶴屋さんが椎茸の奪い合いをする歓声にまぎれて(以下略)
角川文庫 P.199
 思わず呟きが漏れてしまったが、ハルヒと鶴屋さんが椎茸の奪い合いをする喚声ににまぎれて(以下略)
 歓声から喚声へ変更。歓声は喜びの声なのでちょっと意味が違いますね。ちなみに喚声はわめき声の意味だそうです。

角川スニーカー文庫 P.197
 ふと窓が目にとまる。
角川文庫 P.199
 ふと窓が目に留まる。
補足…ちょっと前にあった『目に留まる』に表記をそろえたようです。

角川スニーカー文庫 P.225
 だいたいの見当を付けて斜面を道なりに降りていれば、自ずと麓に到着しないとおかしい。
角川文庫 P.225
 だいたいの見当を付けて斜面を道なりに下りていれば、自ずと麓に到着しないとおかしい。
補足…降りてから下りてへ修正。一般的に『降りる』は乗り物などから出ることや退くことを意味し、『下りる』は上から下へ動くこと、下方へ移動するなどの意味だそうです。雪山ではどちらの語彙も頻繁に出てきます。

角川スニーカー文庫 P.228
 ハルヒは一旦立ち止まり、顔を垂直に向けて印象感想をおこなってから再び歩き出した。
角川文庫 P.229
 ハルヒは一旦立ち止まり、顔を垂直に向けて印象を述べてから再び歩き出した。
補足…分かりやすい表現に変更。

角川スニーカー文庫 P.236
「(前略)あ、この道って普通の道路のことじゃなくて、方向性とか指向性とかの道ね。生きる道みたいな」
角川文庫 P.237
「(前略)あ、この道って普通の道路のことじゃなくて、方向性とか志向性とかの道ね。生きる道みたいな」
補足…指向性から志向性への変更。指向性は物事がある方向を向くこと、あるいは向くようにさせることを意味します。志向性は気持ちや心があるものにあこがれて、それを目標として目指すことを意味します。今回の場合、指向性でも誤りではないのですが、よりニュアンスとして適切な志向性へ直したのかなと。
※正直ここまで細かいところまで直しておられるとは思わなかったので、校閲されている方には頭が下がります。

角川スニーカー文庫 P.256
「(前略)食糧庫、食べきれないほど大量の食材がたんまりあったからね」
角川文庫 P.257
「(前略)食料庫、食べきれないほど大量の食材がたんまりあったからね」
補足…食糧庫から食料庫へ変更。食糧も食料も食べ物という意味では同じなのですが、食糧は特に米などの主食を意味するようです。ということで、今回はサンドイッチを作っているので食料庫ですね。

角川スニーカー文庫 P.258
 外が相変わらずの風と雪の降り荒れる悪天候だってのに室内は無音だ。
角川文庫 P.259
 外が相変わらずの風と雪の吹き荒れる悪天候だってのに室内は無音だ。
補足…降り荒れるから吹き荒れるへ修正。

角川スニーカー文庫 P.285
 (前略)他の連中の部屋にそれぞれ俺たちのうち誰かの偽物が発生したというミステリーが、(以下略)
角川文庫 P.285
 (前略)他の連中の部屋にそれぞれ俺たちのうち誰かの偽物が発生したというミステリが、(以下略)
補足…ミステリーからミステリへ変更。洋館に入る前の玄関で『ミステリ』と表記されている(角川スニーカー文庫 P.229、角川文庫 P.230)ので、表記ゆれの修正かと思われます。

角川スニーカー文庫 P.319
「(前略)等間隔に立っている外灯の風景がドライバーに催眠状態を誘発させ、(以下略)」
角川文庫
「(前略)等間隔に立っている街灯の風景がドライバーに催眠状態を誘発させ、(以下略)」
補足…外灯から街灯へ修正。エンドレスエイトの時もこの変更ありましたね(角川スニーカー文庫 P.52、角川文庫 P.53)。一応改めて書きますと、外灯は『建物の外に取り付けた電灯』で、街灯は『街路を明るくするための電灯』の意味なので、今回古泉がたとえ話に出している高速道路では街灯が適切です。

 以降、変更点は見つからず。角川スニーカー文庫版では作者である谷川流さんのあとがきで終わるのですが、角川文庫版では代わりに平野綾さんの解説が収録されています。

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 スニーカー文庫版と角川文庫版の『涼宮ハルヒの暴走』読み比べ、これにておしまいです。大変長い内容にお付き合いいただき誠にありがとうございます。見落とした箇所があれば教えていただけると幸いです。ありがとうございました、また『涼宮ハルヒの動揺』の読み比べの時に…。

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