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角川文庫版と角川スニーカー文庫版のハルヒ読み比べ(涼宮ハルヒの消失)

 こんにちは。前回に引き続き角川スニーカー文庫と角川文庫の読み比べを行っています。今回は第四回で、『涼宮ハルヒの消失』です。
 読み比べに使用したのは角川スニーカー文庫四十六版、角川文庫初版。

Twitterで見たい方はこちら。

表紙から目次までの比較。

消失1

消失2

消失3

プロローグ

角川スニーカー文庫 P.7
 先月ハロウィンを見過ごしてしまったことを残念がっていたし、何かやるつもりなのは間違いない。
角川文庫 P.8
 ハロウィンを見過ごしてしまったことを残念がっていたし、何かやるつもりなのは間違いない。
補足…先月という単語が削除。ハロウィンイベントは10月31日。

角川スニーカー文庫 P.9
 俺は転がそうとしていたダイスを、いわくありそうな微笑をたたえる古泉に手渡して身体をハルヒへ向けた。
角川文庫 P.9
 俺は転がそうとしていたサイコロを、(以下略)
補足…ダイスからサイコロへ変更。スニーカー文庫でも以降サイコロ表記なので、表記ゆれの改訂かと。

角川スニーカー文庫 P.13
 太陽暦だろうが古代バビロニア暦だろうが所詮は人間の勝手な都合だし、(略)
角川文庫 P.13
 太陽暦だろうがバビロニア暦だろうが所詮は人間の勝手な都合だし、(略)
補足…古代バビロニアから古代という単語が削除。バビロニア暦とは古代バビロニアの太陰太陽暦。

角川スニーカー文庫 P.17
 いやあ俺もそろそろ本格的にヤバいのかもしれないな。
角川文庫 P.17
 いやあ俺もそろそろ本格的にヤバイのかもしれないな。
補足…「ヤバい」から「ヤバイ」への表記変更。表記ゆれの改訂かもですが、合わせた箇所が見当たらず…。後の章でも探してみます。

角川スニーカー文庫 P.22
 誰も反対するものはいないだろうな、と考えて長門のほう見やると、(略)
角川文庫 P.22
 誰も反対するものはいないだろうな、と考えて長門のほうを見やると、(略)
補足…スニーカー文庫にあった「を」の抜けもれの修正。

これでようやくプロローグの読み比べが終わりました。『さて、プロローグにしては長すぎるな』とキョンでなくとも思わざるを得ないのですが、前回までプロローグや1章2章あたりまではけっこう緩やかなスタートだったと記憶しているのですが、消失はちょっと忙しいです。

第一章

角川スニーカー文庫 P.46
 廊下を小走りで駆け抜け、階段を三段抜かしで飛び降り、(略)
角川文庫 P.46
 廊下を小走りで駆け抜け、階段を三段抜かしで飛び下り、(略)
補足…降りから下りへの変更。階段などの場合は下りるが正しい?(飛び降りだと頭から落ちる意味を含む?日本後難しい…)

角川スニーカー文庫 P.53
 今度何かしたら、あたしが怒髪で突いちゃうからねっ
角川文庫 P.52
 今度何かしたら、あたしが怒髪で衝いちゃうからねっ
補足…突くから衝くへの修正。『怒髪天を衝く』という故事成語がありますね。出典は司馬遷の『史記』。(台詞的には『突く』でもあってそうですが)

角川スニーカー文庫 P.62
 俺は頭を抑える手を浮かす。
角川文庫 P.62
 俺は頭を押さえる手を浮かす。
補足…抑えるから押さえる…と言いたいところですが『頭を抑える』から『頭を押さえる』への変更です。『頭を抑える』だと「他人の行動や言葉を制する」という慣用句になります(知らなかった)

第二章

角川スニーカー文庫 P.80
 何気なく背表紙を見ていると一冊の本に目が止まった。
角川文庫 P.78
 何気なく背表紙を見ていると一冊の本に目が留まった。
補足…『目が止まる』から『目が留まる』へ修正。これもまた慣用句的なものですね。日本語難しい。

角川スニーカー文庫 P.80
 ぱらぱらと適当にページをめくって元の位置に戻そうとした俺の足下に、(略)
角川文庫 P.78
 ぱらぱらと適当にページをめくって元の位置に戻そうとした俺の足元に、(略)
補足…足下から足元への変更。足下とは足の真下など物理的下で、足元は立っている場所(空間)。

角川スニーカー文庫 P.88
 そのまま後ろを振り返ることなくロビーに脚を進めた。
角川文庫 P.86
 そのまま後ろを振り返ることなくロビーに足を進めた。
補足…『脚を進めた』から『足を進めた』への修正。慣用句的には『足を進める』が正しい。よく似た表現に『歩を進める』、『膝を進める』など。

角川スニーカー文庫 P.94
 この時季にコンビニ行けばたいていこの臭いが出迎えてくれる。
角川文庫 P.92
 この時季にコンビニ行けばたいていこの匂いが出迎えてくれる。
補足…臭いから匂いへの変更。いい匂(にお)いと、臭(くさ)い臭(にお)いで分かるように、食べ物の比喩なら匂いですね。

角川スニーカー文庫 P.100
 そんなわけないか。あたしの考え過ぎよね。(略)
角川文庫 P.97
 そんなわけないか。わたしの考え過ぎよね。(略)
補足…朝倉涼子の一人称が「あたし」から「わたし」へ変更。同じページ内でスニーカー文庫版も「わたし」なので、表記ゆれの修正かと。

 第二章の読み比べ終わりです。プロローグや第一章よりは変更箇所は少なかった気がしますが、変更になったのかの理由が、表記ゆれなどではなく、日本語の慣用句的表現の修正が多く、読み比べ以外の作業が出始めたので、補足に時間を取られるようになってきました。

第三章

角川スニーカー文庫 P.119
 だが俺を見る目には警戒心が現れている。
角川文庫 P.114
 だが俺を見る目には警戒心が表れている。
補足…現れるから表れるへ変更。『現れる』は隠れていたものが見えるようになることで、『表れる』は思いが外にでることだそうです。そろそろ私も分からなくなってきました。

角川スニーカー文庫 P.126-127
 等身大着せ替えマスコット兼宣伝係兼部室専用メイドにして実態は未来人。
角川文庫 P.122
 等身大着せ替えマスコット兼宣伝係兼部室専用メイドにして実体は未来人。
補足…実態から実体への変更。実態は実際の状態・実情で、実体はそのものの本当の姿・正体の意。

角川スニーカー文庫 P.128
 だいいち探してもどこにもいなかったしさ。
角川文庫 P.123
 だいいち捜してもどこにもいなかったしさ。
補足…探すから捜すへの変更。探すは欲しいもの、目にしたいものを見つけようとするとき、捜すは見えなくなったものを見つけ出そうとするときなどの違いがある。

角川スニーカー文庫 P.129
 あなたが陥った状況を説明するには二通りの解釈が上げられます。
角川文庫 P.124
 あなたが陥った状況を説明するには二通りの解釈が挙げられます。
補足…上げるから挙げるへの変更。

第四章

角川スニーカー文庫 P.160
 俺はまた違う時空に跳ばされている。
角川文庫 P.154
 俺はまた違う時空に飛ばされている。
補足…跳ばされているから飛ばされているへの変更。

角川スニーカー文庫 P.161
 草の臭いがする夜風を肺に吸い込みながら窓枠に足をかけてジャンプ、(略)
角川文庫 P.155
 草の匂いがする夜風を肺に吸い込みながら窓枠に足をかけてジャンプ、(略)
補足…臭いから匂いへの変更…なのですが、個人的に草の場合『臭い』でも誤りではない気がします。

角川スニーカー文庫 P.166
 ここは変わり者のメッカなのだ(略)
角川文庫 P.160
 ここは変わり者の聖地なのだ(略)
補足…メッカから聖地への変更。これは他のシリーズでもそうですね。以前の読み比べでも指摘した記憶があります。

第五章

角川スニーカー文庫 P.200
 血の気が引いているのか頭に昇っているのか判然としない。
角川文庫 P.193
 血の気が引いているのか頭に上っているのか判然としない。
補足…昇っているから上っているへの変更。

角川スニーカー文庫 P.202
 思わず提げていた制服のジャケットを着込もうとして、(略)
角川文庫 P.195
 思わず提げていた制服のブレザーを着込もうとして、(略)
補足…ジャケットからブレザーへの変更。第四章で敷地外に投げていたのはブレザーだったので表記ゆれの訂正かと。

角川スニーカー文庫 P.202
 まあ、ブラウスとミニタイトの格好じゃこの気温の下では凍えるだろう。
角川文庫 P.195
 まあ、ブラウスとミニタイトの格好じゃこの気温の中では凍えるだろう。
補足…気温の下から気温の中へ変更。

第六章…変更点は見つからず。

エピローグ…変更点は見つからず。

角川スニーカー文庫版では作者である谷川流さんのあとがきで終わるのですが、角川文庫版では代わりに尾崎世界観さんの解説が収録されています。

おしまい

消失4

 スニーカー文庫版と角川文庫版の『涼宮ハルヒの消失』読み比べ、これにておしまいです。大変長い内容にお付き合いいただき誠にありがとうございます。見落とした箇所があれば教えていただけると幸いです(手ぐすね引きながら)。ありがとうございました、また『涼宮ハルヒの暴走』の読み比べの時に…。

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