Evaluation of Severe Infection and Survival After Splenectomy

Am J Med. 2006 Mar;119(3):276.e1-7.


http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002934305006492


脾臓摘出後にoverwhelming postsplenectomy infection(OPSI)を発症した人がどれくらいいるのか?ということを後ろ向きに調べたスコットランドからのStudy。脾摘後のリスクについて調べた論文では最も規模が大きい研究と思います。


スコットランドの健康保険局のデータベースで1988年から1998年の11年間に脾臓摘出を受けた1651人を対象している。脾臓摘出後に重症感染を起こした割合、そして脾摘後いつ起こしたか、年齢の分布はどうか、といったことを調べている。入院が必要となったものを“Severe infection”、Septicemia or Meningitisを“Overwhelming infection”と定義している。


その結果がTable1。1回目のSevere infectionの発症率は7/100 person-years。比率としては1/14 person-yearsなので、14人の患者を1年観察すれば、1人は感染症で入院するという計算になります。そしてその年齢層にも特徴があり、高齢になるほど発症率が明らかに増えています。例えば0-16歳だと2.94/100 person-yearsですが、70歳以上だと13.85/100 person-yearsに。1/34 person-yearsと1/7 person-yearsくらいの差がありますので、高齢で脾摘をする場合は特に注意が必要です。


Fig2はTable1をグラフ化したもの。脾摘後最初の3年で感染が起こりやすく、その後徐々に減少傾向となりますが、Fig2cをみると70歳以上では経年的な変化がみられません。ずっとリスクが高いままであることが分かります。


本文中には脾摘後感染症の約半数が1年以内に、84%が3年以内に発症しており、脾摘直後が特に要注意期間となります。2回目、3回目の感染を起こす人もいて、1回起こしたからといってリスクは低くなりません。


Overwhelming infectionを発症したのは1651人中49名(3.0%)。発症率は0.89/100 person-yearsとなります。


さて生存率ですが、1年生存率が73%、2年で65%、3年で60%、4年で57%、5年で54%であり、最初の3年で死亡率が高い傾向があります。必ずしも感染症で死亡しているかどうかは、このデータからは明らかではありませんが、感染の発症率も最初の3年で高いことから、なんらかの因果関係はあるかもしれないですね。ということで思った以上に脾摘後感染は多いかもしれない、というスコットランドからの報告でした。


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