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【映画】砕け散るところを見せてあげる

ネタバレになったら、すまない。どうか引き返してしてほしい。

ヒーローはいるかと聞かれたら、
きっといるのだと思う。

他人のために闘えるか。なんて少女漫画チックなのであろう。バカバカしいとさえ。

原作を知らない僕は「いじめ」を主題にしたストーリーだと思いこんで鑑賞した。

映画を見終わったら、嗚咽をあげて
ギャン泣きしていた。

離れてみていた友人に
「なんだよ、なんだ。これは愛の映画じゃないか。バカ!うえん!」と叫んで大笑いされた。

 切実に苦しみの中に生きる玻璃とヒーローになると言った清澄。

誰かを守るのは、そんなにカッコいい事かと聞かれたらカッコ悪いことだ。なりふりかまっていられないから。

脇は甘いし、強くもなければダサいのだ。

映画の途中、亡くなった父のことをおもいだした。何一つカッコいいことなんてない人だ。

母とお酒に依存し、60歳でこの世から居なくなった。取り柄と言えば、情け深さだけであろう。

そんな父でも私が3年生の時に一度だけ、ヒーローの瞬間を見たことがある。たった一度だけ。後にも先にもその一度だけである。

小学生の私は、父と休日に出かけた。阪急電車の駅の階段。私立の小学生の男の子が転けて、足から血をだして、おそらく捻挫もしていてのだろう。痛さと混乱で泣き叫んでいたのだ。

「あ!」そう、私が思うか思わないかの瞬間、父はもうその子を抱き抱え、駅務室に走った。

私は何にも言わずについていった。
「この子が階段から転けて困っていました。よろしくお願いします。」父は簡潔にそれだけを伝えた。

まだ、少年は痛さと恥ずかしさから泣き叫んでいて、駅員は困惑していた。父は私の手を引き「失礼します。」去ろうとした。

駅員に「お名前などを‥」と聞かれた父は振り返り
「名前などございません。名無しの権兵衛です。」そう言って駅務室を後にした。駅員たちの顔は怖くて見なかった。

私は、一瞬でもカッコいいと思った父を心底消してしまいたかった。恥ずかしさでどうにかなりそうだった。

よく嘯き裏切った。母は、その父の嘘を恍惚しながら聞いた。何度となく裏切られても母は信じた。

なぜ、この映画を観て泣いたのか。
少女漫画とサイコパスとヒーローと家族の闇と、託される愛と。

そうだ、父と母だった。

なんでも嬉しいお年頃です!よろしくお願いいたします🙇