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自分が見たかった「まどか☆マギカ」がそこにあった

久しぶりのまどか☆マギカのキャラクター

 マギアレコード2ndシーズンー覚醒前夜ー(以下、「覚醒前夜」)の1話「みんなでなら魔法少女になれる気がしたの」を見た。10年前に魔法少女まどか☆マギカのTV版(以下、「まどか☆マギカ」)を見てハマった僕だが、マギアレコードのアニメについてはもともとゲーム未体験かつ、1期は登場人物の多さや原作とも異なる用語や世界観が唐突に出てきて混乱し、あまり楽しめなかった。
 そんな中で期待せず視聴した覚醒前夜1話だったが、いい意味で期待を裏切る展開だった。マギレコのキャラクターの登場は最後の数分間で、基本的にはまどか☆マギカのキャラクターのみで展開される話となっており、まどか☆マギカファンからすればまるでまどか☆マギカ二期が始まったかのような感動があった。 もちろん、今回の覚醒前夜1話は単なるまどか☆マギカの焼き増しではない。マギレコの世界観、物語性に合わせて、まどか☆マギカの物語がアップデートされたかのような新鮮さがあった。

マギアレコード要素の入ったまどか☆マギカ

 まどか☆マギカは壮大な世界観の物語だ。とはいえ、物語としては12話程度、続編となる叛逆の物語にしても数時間程度である。当然描けるものは限られており、この間漫画やゲームといった様々な媒体でまどか☆マギカで描ききれなかった魔法少女の物語が補完されていった。マギアレコードもその一つだが、今作については他の外伝諸作品とは別格で、すでにアニメだけでも原作より話数が多く、「ドッペル」や「ウワサ」といった原作に見られない新要素が詰め込まれ、原作の世界観を翻す大きな物語となっている。
 どちらかというと、まどか☆マギカが魔法少女になるまでの物語が重視されたのに対し、マギアレコードは魔法少女としてどう生きていくかが問われる物語という印象を受けていたが、覚醒前夜1話は、そんなマギアレコードの魅力がまどか☆マギカに逆輸入された印象を受けた。セルフオマージュというべきか、まどか☆マギカと似たような場面や構図、同じカットや建物を意図的に出しつつ、覚醒前夜らしい別の物語が展開された。まどか☆マギカでみられなかった仲間の重要性が意図的に演出されているのだ。

後悔なんかしない!

 中でも、まどかが魔女と立ち向かう際にさやかに言うセリフ「魔法少女になんかなっちゃったけど、みんなと一緒なら、後悔なんかしない!」が秀逸だ。このセリフはまどか☆マギカ5話のタイトルかつ、さやかが魔法少女になった後に語る「後悔なんて、あるわけない」と対になる。さやかのセリフについては誰にも相談せず、自分1人で魔法少女になったことに対し、いくらか含みのある印象、いわゆる負けフラグのようなセリフであるのに対し、まどかの「後悔なんかしない!」には「魔法少女になんかなっちゃったけど」と全てを理解した上でさらに前に進むような、ポジティブな印象を与える。
 加えて「みんなと一緒なら」については、まどかがその前に話す「みんなでなら魔法少女になれる気がしたの」というセリフにもつながっている(「みんなで・・・」はそのまま1話のタイトルにもなっている)。まどかは、今までの自分たちは魔法少女システムの真意を知らず、その上意思がバラバラだったが、今そのシステムを知った中で、仲間で連携して生き残ってこそ、真に魔法少女になれるという解釈をした。まどかにとっては、単に契約を結ぶだけでは魔法少女にはなれない、仲間と一緒に苦難を乗り越えることこそが魔法少女であることの前提条件となったのだ。

 こうしたまどか流魔法少女の新解釈は、まどか☆マギカには見られなかった新しい境地といえるだろう。まどか☆マギカのストーリーはその性質上、まどかがどのように魔法少女になるのかが注目されるため、魔法少女同士の連携には視点が当てづらかった。叛逆の物語にしても、ほむらの動向が基本的な論点であったため、同じことが言える。魔法少女が多数登場し、かついくつかのグループが存在し、グループ間の絆を作り上げるマギアレコードのテーマ性が、まどか☆マギカのキャラクター達に新しい刺激を与えているように思える。

三人の連携プレー

 まどかの呼びかけに呼応し、対魔女戦ではまどか・さやか・ほむらの連携技がキレキレの作画で展開された。さやかはまどかの、ほむらはさやかのピンチを助けることで互いの絆は深まり、個人プレーでは勝てないような魔女にも勝利を収めた。個人的にこのシーンは目頭が熱くなった。まどか☆マギカではさやかとまどかは親友同士にも関わらず後半で仲違いしていくシーンが見ていて苦しく、今でもその時の感情は思い出されるが、外伝でここまでまどかとさやかの連携が映えるとは思わなかった。また、まどか☆マギカではほむらとさやかの仲は最後まで険悪だった。僕はほむらのまどか至上主義な一面が苦手だったが、この一話でほむらの新しい一面を知ることができ、とても嬉しかった。

最後に

 結果として覚醒前夜1話は、僕のまどマギ遍歴の中でも1番心に残ったエピソードとなった。僕にとっての物語の価値とは、最後は現実世界から逃避するためではなく、より良く現実世界を生きるための糧にすることである。その意味で、仲間の価値を提示するこの1話は、より自分の現実に則した今日課題として、今の僕に深く突きつけるものである。マギアレコードにおいてこのトリオがいつ再登場するかはわからないが、今後とも覚醒前夜の動向を見守っていきたい。


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