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青い地球はテック起業家にどう映ったのかスペースウォークがビジネスになった日

アメリカのテック起業家Jared Isaacmanが民間人として初めて宇宙遊泳を実現しました。2024年9月12日はこれまで超大国の政府機関の独壇場であった宇宙空間にまた一歩ビジネスマン達が足を踏み入れた歴史の分水域として記憶されるはずです。

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◎”One Small Step”(小さな一歩)

この偉業を達成したのはアメリカのテック起業家Jared Isaacman氏。彼は決済システムの事業で富を成した人物ですが、2021年に世界初の民間宇宙船での地球軌道への進出を達成しています。

それに続いて今回彼が実現したのが"space walk"です。宇宙遊泳と訳していますが、この言葉は宇宙服を着て船外で活動する事全般を指します。言葉だけを聞くと宇宙空間をふわふわしたように思えます。しかし、実際の所ちょっと船外に出て作業する程度のものであったそうです。文中では”飲み終わった牛乳瓶を玄関に出しに行く作業の宇宙版”となどと表現されていました。とはいえ漆黒の無限(①jet black infinity)に身を晒す経験は生涯にわたり自慢げに話す事のできるものであり、パーティースピーチのネタとしてこれ以上のものはありません。

政府機関を含めた世界初の宇宙遊泳は1986年のAleksey Leonov氏で、当時の目的はアメリカとソ連という超大国による宇宙進出競争。宇宙のニュースにも暗い冷戦の空気がまとわりついていた時代でした。対照的に今回の小旅行(②jaunt)の運営は全てイーロンマスク氏が率いるSpace X社によるもので、関わった人は皆ビジネスマンであり、政府機関のお株を奪う(③steal the clothes)大躍進という事になります。Aleksey Lenov氏の映像やコメントは時代の問題かお国柄の問題か見当たりませんでしたが、Jared Isaacman氏の宇宙滞在中の姿は世界中に中継されています。お値段はさておき、宇宙はまた一歩身近になったといえるでしょう。

Jared Isaacman氏は”ウチに帰れば色々とやらなければならない事は残っているが、ここから見る分には世界は完璧に見えるね”とコメントしています。いかにもテック起業家という感じです。

□本日のポイント■■■

①jet black infinity/漆黒の無限

漆黒の宇宙空間を表現した部分です。blackはわかりますが、このjetはなんでしょう。実はjetは宝石で炭化した木が固まってできた宝石で、日本語では黒玉という名称です。この黒玉の様に純粋な黒という色がjet blackです。特に英国のwhitbyという町の付近で採取されるjetは品質が良いためwhitbt jetと呼ばれて重宝されているそうです。ヴィクトリア女王が好んだという逸話もあり、英国の伝統的な装飾品なんですね。

🔳 Instead, he climbed out of its hatch, half exposing himself to jet black infinity for a few minutes while clinging to a ladder.

(試訳)宇宙空間を歩くのではなく、彼は宇宙船のハッチを這い出て半身を漆黒の無限に半身を晒しながら梯子につかまって何分間を過ごした。

②jaunt/小旅行

今では使われなくなった言葉のjaunten(小旅行をする)から派生した言葉です。まあお値段や宇宙船の規模からとても小旅行じゃないわけで、一種の皮肉ですね。

🔳 The jaunt, facilitated by Elon Musk’s SpaceX, was significant in one way, however: as a vivid illustration of the increasing privatisation of space.

(試訳)イーロンマスクのSpaceXが運営を担ったこの小旅行は大きな意義のあるものだが、近年一層民営化されてきた宇宙空間を如実に描写するものとも言える。

③steal the clothes/お株を奪う、十八番を奪う

服を盗むという言い回しですが、NASAなどの宇宙に関係する政府機関が独占的に担っていた役割をspace Xが担えるようになったという事ですね。大航海時代やアメリカ大陸の開発を振り返っても徐々に民間のビジネスマン達が主役の座を奪い活躍する事で加速してきました。2024年は宇宙ツーリズム元年として記憶されるかもしれませんね。

🔳More importantly, private actors like SpaceX are stealing the clothes of national space agencies like Nasa and Esa, even in deep-space exploration.

(試訳)それより重要なのはSpaceXのような民間のプレイヤーがNasaやEsaのような国家の宇宙関連組織の十八番を奪っているという事だ。これは遠方の宇宙探索のような分野も例外ではない。

◇一言コメント

タイトルのone small stepですが、人類初の月面歩行を成し遂げたNeil Armstrong氏のコメント、"That's one small step for man, one giant leap for mankind"から来ています。今回の民間による宇宙遊泳がビジネスマン達の宇宙空間への進出が新しい段階に入った象徴的な出来事という意味合いで使っているものと思われます。
この言葉が放送されたのは1969年であり、既に60年近くの年月が過ぎようとしています。これ程まで長い期間停滞した原因は経済状況含め様々なわけですが、それにしても長いですね。
それにしてもイーロン氏はなぜ自分自身で世界初の宇宙遊泳をやってみようと思わなかったのでしょうか。我は強そうな人なので、世界初は自らとなりそうなものですが。

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