エッセイ・国際ロマンス詐欺師から連絡くる
オンラインで仕事をしていると、どこもChatworkを使うように指示をしてくる。私の名前は漢字一文字なので、男とも女とも取れる。
そのことを特に気にしたことはない。
さて、ある日Chatworkにメッセージが届いていた。
知らない名前だったので、営業か何かだろうと思い、無視をした。
が、結構頻繁にくる。
申請だけで特に内容が書いていない。
でもやっぱり迷惑メールだろうと思って、申請を却下した。
つもりが、
受け付けていた。
するとすぐに
「私はリチャード・ハンです。韓国系アメリカ人でした。
私は今オーストラリアで息子と暮らしていますた。医者です。
あなたは素敵です。日本で会いましょうか」
と、過去に生きる疑問形のメッセージが来た。
私は素敵なのか。名前でそう判断したのか。
占い師か?いやこいつは医者らしい。
返事をしないでいると、
「英語はできますか。私は英語ができます。
英語で話しましょう。」
なんと一方的な!
できるとも話すとも言っていないのに、トゥギャザーかよ。
変なメッセージに私は「これは興味を持たせて別のURLへ行かせるものだな」なんて思っていた。その手には引っかからない。
ていうか、こんなメッセージに引っかかる人はいないだろう。
これは返事をせずに削除だな、と思っていると、英文メッセージが来た。
まず最初に自己紹介があった。
大学を卒業してIT企業へ就職をしたのち、独立して友人と起業をした。
妻とはその頃出会い、結婚し、まもなく子供が生まれた。
しかし妻は子を産むと病気で亡くなってしまった。息子は今6歳で寄宿舎生活を送っている。私は週末息子に会うことを楽しみにしているが、
一人で過ごすことが寂しくなってきた。そしてあなたに出会った。
リチャード、お前は医者じゃなかったのか。
私とは”出会った”んじゃなくて、”見つけた”のではないか。
まだURLは出てこない。
なんなんだ。これは出会いサイトのようなものなのか。
次のメッセージは、写真が添付されていた。
大学卒業の写真だった。よく韓国ドラマで見るような写真だった。
写真館で撮ったのか。プールや登山などの写真もあった。
なんか、どれもこれも写真立てに入ってるサンプルのような写真だ。
すぐにまたメッセージが届いた。
私を花に例えてどれだけ美しいか、という内容と、息子が可愛い、という内容だった。気持ち悪りぃ。
一回も返信をしないのに、なんというガッツのあるヤツなんだ。
そう思っていると2日くらいリチャードからのメッセージがない。
もうやめたのか、飽きたんだな。と思っていると、
その日の夜またメッセージが来た。
「息子が病気になってしまった。寄宿舎へ迎えに行かなくてはならない。」
おお、大変ではないか。早く行ってやれ。
心の中で突っ込む私。
「すぐにでも行かなくてはならないが、息子の寄宿舎は遠い。
ここからロンドンまでは10時間くらいかかる。」
ロンドン?お前、オーストラリアに住んでんだろ?
心の中の突っ込んでいられずに声を出してしまった。
なんかおかしいぞ、これ。いや、最初からおかしいけど。
そしてリチャードはおそらくこれが核心であろう内容に触れてきた。
「今、私の預金は事情があってここでは引き出せない。でも息子が病気だから行かなくてはならない。お金を貸してほしい。必ず返す。ロンドンに着いたら引き出せるから。2万ドルお願いできないか。」
できねーよ。
あ、これが世にいう「国際ロマンス詐欺」っていうアレか!
一方的なメッセージで2万ドルってすごいな、これ。
もちろん返信はしない。
しかしリチャードは送ってくる。
「息子が病気なんだ!なんで返事をしないんだ!」
いや〜そう怒られてもさ〜
「2000ドルでいいから」
お、値下がった。ノルマがあるのか、なんか必死感が伝わってきたが、
次で吹き出してしまった。
「200ドルではどうですか。これ以上は無理です(日本語)」
これ以上は無理です。って何がだよ。
オーストラリアからロンドンまでの飛行機代、としてはあり得ない200万円。ダメっぽいと思ったら20万。
最後は2万円で妥協しようとしていた。
リチャード、こんなことじゃ金稼ぎはできないぞ。
まともに働けば、捕まらずに2万円くらい稼げるぞ。
下手な鉄砲は数打っても当たらないのだよ。
そして私みたいな名前は避けた方がいいぞ。
俺は女が好きなんだ。
#創作大賞2024 #エッセイ部門
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