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文学サークル

二人の出会いは、
大学の文学サークルにさかのぼる。

サークルの会合が始まると、
ひとり内気そうな男性が
控えめにやってくる。
一方、大学でもよく目立つ、
個性的な女性が話の中心に
立つのが常だった。
互いに反対の雰囲気を
放っている二人だったが、
文学に対する情熱は
誰よりも人一倍強かった。

最初こそ距離を
置いていた二人だが、
やがて互いの持ち味を
認め合うようになっていった。
男性の緻密でアナリティカルな文学解釈に、
女性は惹きつけられた。
一方で、女性の自由闊達な作品解釈は、
男性の新たな視点を開いた。

そうして二人は、
互いを高め合う存在として
意識するように。
サークル活動を共にするうちに、
同じ文学的価値観を見出せたのだ。
喫茶店に入り、議論する機会も増え、
ゆっくりと距離を詰めていった。

卒業を経て、進路は分かれてしまった。
だが、文学に関する言葉の応酬は、
手紙やメールで続いていく。
互いを思い起こし、
互いを励ますための
創作物を送り合うのが、
今や二人の楽しみであり、
喜びでもある。

時折顔を合わせる度、
お互いに内に秘めた想いを
確認するように、
言葉のキャッチボールを続ける。
そこには、自らの創作を直視し、
さらに切り拓いていこうとする
二人の姿がある。

確かに二人の生き方は異なり、
歩む道も違う。
だがお互いの存在は、
固有の価値観を持ち続け、
大切にするために力強く鼓舞し続けていた。
名もなき敬意と憧れに満ちた関係だった。
それは、お互いをも希望と熱意に満たし、
前を向いて進む原動力となる。

ささやかな電子の行き来の中に、
二人の物語的な絆が息づいていく。
互いに磨き合い、成長しつつ、
これからも紡いでいくに違いない。

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