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永遠の城


我が推しTHE8氏がデジタルシングルを出した。

便宜上「推し」と表現しているが、私にとって彼は憧れの人であり、尊敬する人であり、指針となる人だ。

そんな彼の故郷がタイトルとなった一曲。
だけど私は公開された日の一回しか聴けていない。
この深いように見える暗い穴の先に何があるか覗こうと思う。
何もないかもしれないけれど。


この曲はピアノと彼の歌声でほとんどが構成されている。
シンプルだからこその美しさ。
そしてこの普遍的なメロディは聴く人を選ばない。
誰もが「綺麗だ」と感じ、誰もが「切ない」と感じるだろう。

それはまるで、心の中にある遠く離れた故郷や人物を思い出す感情と似ている。
「海城」が示す通り、懐かしさや恋しさを抱かせて止まない。
彼自身、過去への想いや未来への愛を表現したかったと言っている。


だけど生まれ育った土地を離れていない私には故郷がない。
切り取られることなく現在進行形で思い出を重ねており、過去完了形になったものはない。

先述した「懐かしい」や「恋しい」は借り物だ。
私は知っているようで知らない。
私が発するそれらの言葉に中身はない。


けど確かこの曲は、普遍的なメロディのはずで、誰もが綺麗だと感じ、誰もが切ないと感じるはずだ。

そう私は感じたんだ。
感じたはずなのに。
そこに私は居るのだろうか。


彼は夢に近づくために故郷を離れ異国の地へとやって来た。
その時から「海城」は変わることのないものになった。

私は育った土地を離れず今もその土地と生きている。
だから懐かしさも未練も恋しさも何もない。
波を防ぐための高い壁になる必要がない。


この曲を向けた先に、こんな私は居るのだろうか。
彼の言う未来は、高い壁で波を防げた先を示しているのではないだろうか。


きっと彼は全ての人へ、そしてCARATへこの曲を届けているに違いない。
私の方へも向けてくれている。

だけど私にはこの曲を受け取る器がなかった。
私はあの中身のない言葉たちでしか、この曲を感じ取ることができない。
彼のようになりたいのに、その間には果てしない海が広がっているのが見えてしまった。

私は彼に寄り添って欲しいとか、歌詞に共感したいとか、そういう思いはない。
ただ、この曲に自分を見つけられない。
私の筆が見つからない。


どうしても、
どうしても、
遠い曲。


海城、
辿り着くことができない、
永遠の城。

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