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只見戦は鉾太郎(婿養子)の歳上ツンデレ奥とか長岡のイケメン元小姓とか地元愛地侍とか國晴の三男坊の意地とかそれぞれにエピソードがある七人の侍

個人的には二本松のエピソードが好き

鉾太郎は婿養子
そもそもが二本松の半農侍から会津郭内の親戚に養子に貰われて10歳から途中編入してきた
小さい頃から隣近所の子ども同士で集団行動をする什が会津藩にはあったから、途中から来た他所者でまして石高高い家の子なのに田舎くさくて大人しい性格だから鉾太郎は藩校ではイジメに遭う
イジメられてるなど養親には言えず、しかしケンカでやり返す腕っぷしも学問で見返す頭も鉾太郎には無い
イジメっ子たちに水練場に放り落とされた時、
イジメを目撃していてか単に面白そうだったからか、
違うクラスの國晴(戸田)も級友らと飛び込み、皆一絡げに教師に「悪ふざけ」と見做されて叱られてそこからの鉾太郎と國晴は友
國晴は正義感が強く面倒見が良いので友達も多く
鉾太郎は國晴と遊ぶようになってからはクラス内のイジメも偶に揶揄われる程度に落ち着いた

藩校を卒業する年、鉾太郎はさらに石高の高い名家、蒲田家の一人娘・美緒の婿になった
妻・美緒は23歳になってもお見合いを突っぱねてきた口元のホクロが艶やかな美女
才女でお見合い相手が答えられないような難しい質問をだして相手をへし折ってしまう
困り果てた蒲田家当主が部下である鉾太郎の養父に相談した結果、
ダメ元のお見合いのはずなのに美緒はあっさり鉾太郎ならばと即決
あれよあれよで祝言を上げ、鉾太郎は城勤め見習いに昇進
男児に恵まれなかった蒲田家は一人娘である美緒が気に入りやっと首を縦に振った相手だからと、当主も義母も実の息子の如く良くしてくれるが、
なんせ元は半農貧乏侍の末っ子生まれの鉾太郎には城勤めも広すぎる屋敷も尻が落ち着かない
美緒は感情を表に一切出さないタイプなので、奥手な鉾太郎にはどうやっても会話すら上手くいかない
夜も「手を繋いで寝る」ので精一杯

とうとう城勤めの鉾太郎にも召集がかかる
ちっぽけな自分に対して不似合いな程の立派な甲冑や名刀、充分過ぎる装備を義両親は惜しみなく用意してくれ、
蒲田家の男として立派に戦ってこいと言われる
美緒に何か、出発の挨拶を言おうとするが、鉾太郎は相変わらずモゴモゴしてしまう
やっとのこと振り絞った言葉は
鉾太郎「おれは、トロい。生きて戻らぬかもしれん」
鉾太郎「美緒様はおれが戻らぬでも…きっと、すぐに誰か良き人がみつかる。どうか御当家の…いや、美緒様の幸せを第一に」
美緒「…ええ。」
美緒「私の幸せを第一に、させて頂きます」
美緒は黙って御守りを渡す

戸田と野営で話してるシーンで

御守り眺めていて思い出す
桜の刺繍が施してある
あ…桜…

編入して間もない頃の春先、道場の帰りの寄り道先で、
鼻緒が切れて困っている歳上の女の子の鼻緒をなおしてやった事を鉾太郎は思い出した
「外で女性と口をきいてはなりませぬ」
なので無言で鼻緒を直し、女の子は鼻緒が切れて転んだ時に足を挫いていたようなので家の近くまで付き添いおくると
名を聞かれても答えずに走って逃げた事があった事を
見上げた女の子の口元にはホクロがあった
丁度、美緒と同じところに

思い起こせば、美緒は鉾太郎の前ではずっと桜のものを何かしら身につけていた
カンザシ、帯留め、何かしらの小物はいつも桜モチーフを身につけていた

見合いの時、美緒から一言だけ
桜はお好きですか?
と、聞かれ、
道場の帰り道に寄り道していた花見の穴場の話をしどろもどろながら答えた
恐る恐る覗き見た美緒の顔が
僅かに少女のように幼くほころんだ
それからあれよあれよで夫婦になったのだった、と

出陣の朝に戻る、
美緒「あなたは当家の"婿"です。蒲田の家の名誉の為に死ぬような必要はありませぬ。手柄など必要ありませぬ。だから…
御命だけはしっかり携えて、お戻りください」
美緒「私の幸せを、と仰った以上、
あなたは必ず命だけは携えて…私のところにお戻りください」
美緒らしい丁寧な御辞儀の俯いた顔は見えなかったが、その肩が小さく震えていた

焚き火に枝をくべながら
國晴「いいじゃねぇか、俺なんざ千人針縫ってくれる女も待つ女も居ねぇよ」



鉾太郎は「美緒は大人しい自分ならば扱いが簡単だろうと思ったか、結婚をせっつく両親への当てつけに自分みたいなブスのノロマを選んだ」のでは?と内心思っていた
なので常に美緒には嫌われないように少し距離を置いていた。
一方の美緒は確かにつまらない子息とばかり見合いさせられてうんざりしていた、美緒の外見や家柄しか相手は興味が無いから
そこに少女であった頃一瞬の邂逅とはいえ何も求めずただとても親切にしてくれた鉾太郎が現れたから内心驚いていた
驚きの余りに口をついて出た言葉は「桜はお好きですか?(私を覚えていますか?)」
それに対して鉾太郎の答えは「子どもの頃…、ああ、今でもですが、その、道場の帰り道に桜を見るのが好きでした。竹林の角を曲がって、寺に抜ける道に丁度、穴場があって。そこの桜がいちばん好きです」→「(覚えていますよ、子供の頃お会いしましたよね。)」
まるで合言葉が合致したように感じた美緒は、この人が良い。いや、この人でなければ嫌だ、と即決したのが真実であった。
 
日々の暮らしも、義父と時間差で出る時すら
美緒はしっかり見送り、迎えも門まで出て待っている
鉾太郎はまだ自分は義父について仕事覚えてる見習い如き、そんな仰々しく出迎えられてもそれだけの仕事がまだ出来ていないのに恥ずかしいと思っていたので「表は寒いです、美緒様が風邪などひかれたら大変です(おれなどに勿体無いです)」とやんわり断ってみたものも、美緒には自分を思い遣る優しい言葉と捉えていた
勤めの休みの日すら尻の落ち着かない故にダラダラするわけにもいかないので鉾太郎は下男らと一緒に畑仕事するのも、自分が何かしらミスをして義父の顔に泥を塗っては大変だからとコツコツ勉強する姿も、美緒には勤勉な人と見えていた