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アメリカ大学スポーツにおける男女の不平等のお話

どうも渡辺です。

今回ようやく自分が書きたかったものに手を付けます。
というのもですね、実はわたくし濃厚接触者として2週間の自主隔離中でしてとにかく暇なんです。
自分自身全く体調に異変はなくとてもピンピンしていますが、キッチンと自分の部屋を行き来する生活をしています(陽性と診断された友達も症状がなく元気なようです)。もうすぐ1週間経つのであともう1週間の辛抱です。

この1週間のうち一度だけ検査を受ける為に外出する機会があって(チーム関係者は1週間に1回必ず検査を受けます)外に出たんですが、1週間外に出ないだけで季節が変わっていて長袖長ズボンじゃないと耐えられないくらいな感じでした。もう完全に秋。今夜中だけど外の気温9度らしい。

まあ前置きはこれくらいにして本題に入ります。
今回は題名にもあるように男女の不平等についてです。主にTitle IXというものとその周辺の話になります。
自分が書いてる話って結構自分のお気に入りの教科書からインスパイアされて書いてる物が多いのでAmazonのリンク張っときます(めちゃくちゃ面白いけど絶対に需要ない)
Sociology of North American Sport 11th Edition

世に蔓延る固定観念

そもそもスポーツ云々の前に世に蔓延る固定観念ってあると思います。
過去に”スポーツから見る差別と不平等”という記事でも書きましたが視覚から得る情報のインパクトって半端ないと思うんです。しかもそこにストーリが重なるとそれが作り上げられたものであろうが、事実であろうが脳みそのどこかには残るしそういうものだって印象付けられてしまいます。

例えば、男女の話でいえば、これは本当に一例ですがディズニーのお話ってステレオタイプ(固定観念)に大きな影響を与えていたと思います。
近年の作品こそ強い女性が描かれていますが、初期の方の作品である所謂ディズニープリンセスと呼ばれるようなキャラクターはどこかか弱く描かれ、いじめられ、それを王子様が助けてあげるみたいなお話が多いです。(ただの例えなのでディズニーがどうこうという話をしたいわけではありません)
長きに渡って女性の社会進出が進まなかったのにはこういった無意識のうちに作り上げられた構図の影響というのも少なからずあったんじゃないかなと思います。
自分は偏見は持っていないと思っていても、どこかで何かの影響を受け知らぬ間に作り上げられた”自分の常識”に偏見がないとは決して言いきれません。気を付けたいものですが誰しも偏見は持っていますというお話です。情報発信するときは偏らないようにより気を付けたいものです。

回り道が過ぎましたが本格的な話に入ります。

Title IX

特にアメリカの大学でスポーツに関わったことのある人は絶対に聞いたことがある単語だと思います。
Title IX(タイトルナイン)というのは1972年に制定された法律で、連邦政府から助成金を受け取る教育機関において、性別による差別を禁止したものです。
中には

“No person in the United States shall, on the basis of sex, be excluded from participation in, be denied the benefits of, or be subjected to discrimination under any education program or activity receiving Federal financial assistance.”
(意訳)アメリカ国内にいるすべての人が、連邦政府から助成金を受け取る教育機関のプログラムや活動ににおいて、性別が原因で活動に参加できなかったり、利益を享受できなかった、差別を受けることはない。

とあります。
要は性別に関係なく均等な機会が提供されるべきだよねっていうのを連邦法の下で保証しますよ、ってことです。
*連邦政府から助成金を受け取る教育機関に限る

その中にthree-prong testっていうのがあって、大学のathletic department(体育局)はそのうちの1つは条件を満たしている必要があります。満たしていないと罰則があるんですが、未だにその罰則を受けた学校は一校もないとか。
Prongを日本語訳したいんだけど出来ないのでthree prongで三本柱的な感じだと理解して下さい。

Prong 1: Proportionality (比率性、つり合い)
これが一番最初に聞かれるものです(これがダメなら2つ目、それもダメなら3つ目って感じ)。
ここでは学校全体での男女比と提供されているスポーツに参加している男女の割合が限りなく等しいかどうか、です。
例えば学校に所属する男女の割合がちょうど50:50だったら、スポーツチームに所属している男女の割合も50:50ですか?ってことです。
もしここでの割合が70:30であった場合は到底同じとは言えないので、Prong 2に移ります。

Prong 2: Expansion(拡張、拡大)
Prong 2にはProng 1をクリア出来なかったプログラムが来ます。ここで問われるのは、そのプログラムからスポーツに参加する男女比の差を縮めようという努力が見られるかどうか、です。
もし新たなスポーツプログラムを追加したりして女子の積極的な参加を促しているようであれば、その学校はここでクリアです。
それもできていない場合はProng 3に移ります。

Prong 3: Accommodating Interests(適切な日本語訳が出てこない)
これが最後です。男女比が等しくなく、女子のスポーツプログラムを拡大しようとしない学校は、現状に生徒は満足しています、学校は生徒が求めるだけのプログラムを提供していてこれ以上スポーツチームを作る必要がありません。と証明する必要があります。
Athletic Departmentに所属するチームだけではなく、クラブやその他課外活動も一応含まれているので、そっちで満足していると証明できればそれでOKです。

ざっくりTitle IXはこんな感じです。
結構面白いルールというか、良い法律だなと個人的には思ってるんですがどうでしょうか。

Title IXの成果

Title IXが施行された1972年以降女子のスポーツ参加者数は増えており徐々に男女の差は埋まりつつあります。
参考までに高校生のデータを。
1972年 男子 約365万人 女子 約30万人
1990年 男子 約340万人 女子 約185万人
2000年 男子 約400万人 女子 約280万人
2016年 男子 約450万人 女子 340万人
まだまだ時間がかかるのは明らかですが進んでいるのは間違いありません。
大学でも同じような傾向にあります。

課題

過去に比べるとよくなっているのは事実ですが課題ももちろんあります。
例えば
・全米の学生のうち53%が女性なのに、NCAAに所属する女性の割合は43%
・スポーツによる奨学金を受け取っている男子の割合は55%に対し女性は45%

まあそもそも大学がかなりお金を使いがちなアメフトは100人以上ロスターの枠あるし、女子が参加するスポーツでドーンと人数稼げる競技がなかなかないのも結構ネックなので、無理難題と言えば無理難題なのかもしれないです。

そしてちなみに、これ自分はとても驚いたんですが、Title IXの施行以降高校における女性のコーチや管理職の人数というのが減っています。
理由として挙げられるのは
・コーチにはTitle IXが適用されないから
・女子チームの新設により高校や大学でのコーチのポジションの総数が皮肉にも増え、過去女性が務めていた役職を男性が埋めるようになっていったから
などです。
Title IX以前は女子チームの8割から9割を女性コーチが指揮していたところを、Title IX施行から15年で35%から42%にまで落ち込みました。現在は徐々にその形は是正されてきているものの未だに男性女性で差があるようです。

終わりに

本当はTitle IXが関係ないプロの話(NBAは割と他のリーグに比べて進んでる方だ)とかもしたかったんですが、めっちゃ長くなるしもう疲れたので今回はこの辺でおしまいです。
Title IXを知らなかった方もこれを読んでアメリカのスポーツの現状が少しは分かったってなってくれたら嬉しいです。

アメリカスポーツというとなんか凄いもので、華やかなところにスポットライトがあたりがちですが、その裏は全くもって完璧ではなく課題が山積みです。
そんなことも知ってもらえたら良いのかなと。

長くなりましたが今回はこの辺で。
最後まで読んでくださった方々はありがとうございました。
ではまた。

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