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3.11 国立西洋美術館で見たもの見てないもの(ガザ侵攻とテロリストと)

2024年3月11日に国立西洋美術館で《ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いか》という展覧会の内覧会が行われ、その場で展覧会参加アーティストでもあり飯山由貴による抗議活動が、少し遅れて同じく参加アーティストである遠藤麻衣(と百瀬文)によるパフォーマンスが行われた。

具体的にどのような目的でどのような抗議やパフォーマンスが行われたかはこちらのメディア報道に詳しい。

私の基本的な立場は西洋美術館の田中館長のコメント ”他のアーティストに迷惑をかけることにもなり遺憾” だが ”言論の自由は保障されているので尊重する” と全く同じある。
だがこの件が報道されて以降、特にSNSでは事実誤認による発言、党派性むき出しの拡大解釈などが溢れているので、当日なにが起こったのか、起きなかったのか書き記しておきたい。

プレス内覧会と一般内覧会

まず飯山由貴の抗議も遠藤麻衣によるパフォーマンスも、展覧会の開催中に行われたものではない。
開催前に関係者を招いての「内覧会」での出来事である。要するに招かれた人だけが、事前にチェックされて入場しているはずの場所である。

プレス内覧会での飯山由貴

そして飯山由貴とその支援者による抗議活動が行われたのは3月11日午後に報道関係者を招いての「プレス内覧会」の開会式中である。

私はこのプレス内見会には出席していないが、限られた人間だけを招いているはずのプレス内見会に招いた覚えのない ”支援者” が現れたら誰もが驚くであろう。しかもパレスティナ問題に言及しだすのだからテロの可能性も排除できず、誰かが110番してもまったく不思議でないと思う。

ただこの時点では警察はいなかったし到着もしていない。飯山由貴の抗議行動と公安調査庁とを結びつけた言説が見られるが、それはかなり怪しいだろう。

一般内覧会での遠藤麻衣

そして遠藤麻衣によるパフォーマンスが行われたのは午後3時過ぎから私も含む関係者を招いて行われた「一般内覧会」の最中である。

内覧会の流れは ”開場〜勝手に内覧〜開会式〜公式な内覧〜流れ解散というものだが、遠藤麻衣がパフォーマンスしたのはこの ”公式な内覧” の最中であったらしい。
(らしいというは、私はその遠藤麻衣がパフォーマンスしていたまさにそのタイミングで展覧会の遠藤麻衣の作品の方を見ていたからである)

内覧会のほとんどの参加者が展示室内に居た状況でのパフォーマンスだっということになる。
この遠藤麻衣のパフォーマンスはその場に居合わせた警察官によって中止させられたそうだが、警察官が居たことは時系列的にもうなずける。

一般内覧会での飯山由貴

プレス内覧会で飯山由貴がガザ侵攻に対する抗議活動を行ったという事前情報を知ってから一般内覧会へ参加。
飯山由貴は当然居ないだろうなと思ったらちゃん開会式に出席していたし、抗議メッセージが刺繍されたセーターも着ていた。
写真右前列中央の白いセーターが飯山由貴。右端でスマホを弄っているのが遠藤麻衣。

また抗議活動をするのかと思ったが特に何も起こらず開会式は終了した。たしかに抗議活動をするならプレスが集まっている場所の方が良い。

なお、参加していたアーティストに聞いたところでは、飯山は会場で他のアーティストに抗議活動への参加を打診していたそうである。

この島の歴史と物語と私・私たち自身 ─松方幸次郎コレクション by 飯山由貴, 2024

ちなみに飯山由貴の出品作品がこれ。松方コレクション(と戦争)と西洋美術館の関わりを表現した作品である。
遠藤麻衣は一部屋を使って映像作品を展示しているが、作品も展示室内部も撮影禁止である。

時系列で整理してみる

最後に時系列で出来事を整理してみる

13:00 プレス内覧会始まる
13:15頃 飯山由貴による抗議活動
・・・・
14:45 自分、西洋美術館到着。館内、館外に警官の姿なし
15:30 一般内覧会始まる
16:00過ぎ 遠藤麻衣と百瀬文によるパフォーマンス
16:30 自分、西洋美術館を退出。美術館周辺に警官、パトカー

賛否両論あるだろう飯山由貴や遠藤麻衣の行動だが、展覧会自体は西洋美術館で初めての現代アートを扱う展覧会ということで前評判も高い。アートと政治や社会、美術館のあり方などをみんなで見つめ直すことを余儀なくされる、ある意味パンドラの箱を開けてしまったような展覧会である。

それにしてもだが、かつて日本の左翼はパレスティナとの連帯を訴えイスラエルのロッド空港(今のベン・グリオン空港)で乱射事件を起こしたこともあって、彼らがパレスティナ云々を言い出すと何とも危なっかしい気がする。

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