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パロディジャケットに反して中身が濃い、リンダ・トンプソンの10年ぶりのアルバム〈PROXY MUSIC〉

リンダ・トンプソンのほぼ10年ぶり、5作目のソロアルバム〈PROXY MUSIC〉がリリースされたが、これがとても良い。
発声障害という病気のため ”歌うことができないシンガー” な時期が長かったリンダ・トンプソンが、PROXY(代理人)に自分の歌を歌ってもらったアルバム。
なのでアルバムタイトルは〈PROXY MUSIC〉。

ジャケット対決 PROXY MUSICとROXY MUSIC

Roxy Musicのデビューアルバムと1文字違いだわ、と気付いたのでそのノリでアルバムジャケットもパロディにしてしまった。

1947年生まれのリンダ・トンプソンがモデルを務めるジャケット。

こっちは1972年のロキシーのデビューアルバムのジャケット。
モデルは当時24歳、実はリンダと同い年のカリー・アン(Kari-Ann Muller)。今はクリス・ジャガー夫人なのでミック・ジャガーの義妹ということだ。

ゲートフォールドカバーだったの開くとカリー・アンの脚を含む全身が現れる。

もちろんリンダだって負けてはいない。
もっともさすがにこれは合成だと思う、思いたい。

PROXY MUSIC

さて、そのリンダのニューアルバム〈PROXY MUSIC〉だが、音の方はこれまでリンダ・トンプソンが書いて歌ってきた曲とサウンドの延長線上にある。
ただ本人が歌うことができないので、娘のKami、息子のTeddy、あるいはマーサとルーファスのウェインライト兄妹などをゲストボーカルに迎えている。
また元夫のリチャード・トンプソンもギターで参加している(これは今まで通り)

リチャード&リンダ・トンプソンのデュオはほとんど最高なアルバムを6枚残してデュオを解消(離婚)しているが原因はリチャードの女性問題と言われている。
そんな心労もあってツアー中のリンダはいつも楽屋で大荒れで、セックス・ピストルズより酷いと言われることもあったらしい。

そしてソロになってすぐの発声障害。

20年近いブランクを経てソロ活動を再開しあの歌声をまた聴けるようになったのだが、2013年の「Won't Be Long Now」以後にまた病気が再発したようだ。

YouTubeで聴けるアルバム1曲目に収録されている「Solitary Traveller」は

I had a voice clear and true
I chided and scolded and lied about you
Never held my wicked tongue
And now that voice is gone

こんな歌い出しで始まる。
リンダの人生を知っていれば、これがだれの歌かすぐに分かると思う。
そしてサビは

Lonely life, where is thy sting
Lonely life, there’s no such thing
Here’s a health to the solitary traveller
To the solitary traveller

プロデューサーは息子、歌っているのは娘。そして自身のことをsolitary traveller(孤独な旅人)と表現しているのだが、本当は孤独なんかじゃないことは本人も聞き手も分かっている。
人生の最終盤でしか書けない歌かもしれない。

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