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廻る秘剣の物語―第ニ部―『業の秘剣 』[連載小説]

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どうだ?大盗賊の血が騒がねえか?この海を越えれば世界を統べる大都だ!(ごうのひけん)
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2018年9月の記事一覧

業の秘剣 第十三片 忌々しい

はっはっ、このときは俺も芸人になった気分だったぜ!

俺はすかさず前の男に耳打ちした。

「酒盛りには肴が大事ですって…お忍びなのはわかりますが、見てくださいこの部屋の作り!表からは寂れた酒場にしか見えないですが、中のそのまた中にやっと素晴らしく小奇麗な部屋!こんな隠れ家は初めて見ました。」

さらに給仕人に流れを委ねてみた。

「ここの部屋の戸締まりは万全かね?ほら…例えば…酒に溺れたヘル君のよ

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業の秘剣 第十二片 ッッ

暗い…

洞窟のようだ。はは、これは驚いた。

まさか穴が掘ってあるとはねえ。

とはいってもたかだか数歩の距離で先にさらに扉がある。

扉からは光がこぼれていたので足元は辛うじてみえた。

前の一人が先のドアにたどり着いたとき、真ん中の一人がつまずいた。

「ッッ」

これは驚いた。

この微かに漏れた声は女の声だ。

まさかこんな下町の夜中に異邦の…おそらく機の大都の…女が出歩いているとは。

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業の秘剣 第十一片 チャリ

俺は天を掴んだ心持ちだった。

これは一隅の機会だと直感でわかったんだ。

奴らがあえて全身を隠す必要はないと思ったがね。

前の男は店主に近づくと、こう言ったんだ。

「ヘル君を探していてね、探ったところどうも此処に居そうと踏んだのだが。」

店主はまたもや淡々としてやがる。

「誰から聞いたのかね?」

前の男はやたら高圧的だった。

「覚えているわけなかろう。さきほどの言葉では足りないのか?

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業の秘剣 第十片 西の言葉

ああそうだ、あれは大仕事だった。

月消ゆる日、西の果ての帝国の「機の大都」から女王と王室の一行が来ていたんだ。

まさか、いくら大盗賊の俺様でも一行から盗みなんてできやしない。

この「太陽と砂の国」の中心である「太陽の都」の最も高く堅い城壁に囲まれた「泉の庭」にしか女王と王室の一行は来ないはずだからな。

しかし…大盗賊の勘の鋭さを馬鹿にしちゃいけない。

俺は予知していた。

何人かの連中は

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