![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141897293/rectangle_large_type_2_e26d9671ee6c8a9173dfd3dc01058844.jpeg?width=1200)
非日常は、つづく
先:「じゃ、順番にバスから降りてー」
都市部の喧騒から離れ、妙に風が気持ちいい。
校外学習。
…非日常ってやつだ。
先:「こっからは班行動。
16時にはここに戻るんだぞ」
高校は授業ばっかだったし、
こんなに自由なのは久々だ…
?:「○○くんっ」
![](https://assets.st-note.com/img/1716703913780-vqAblLONQn.jpg?width=1200)
○:「あやめさん…」
同級生の、筒井あやめさん。
あ:「じゃーん。おやつ買いすぎちゃった」
小学生じゃん…
無邪気で可愛いけども。
○:「300円まででしょ?」
あ:「いいじゃん。少しあげるからさ」
…うん、別にいいとは思う。
班長っぽいことを言ってみただけ。
?:「班長…!よろしく…ね」
![](https://assets.st-note.com/img/1716704002921-E2JkeDZvQp.jpg)
○:「井上さん…!班長呼びは慣れないや…」
こちらは井上和さん。
和:「えっ、なに照れてるの?
…可愛いとこあるじゃん」
○:「ちょっ、やめてよぉ」
彼女、隠れたクラスの人気者です。
男子たちの目線が怖いよ…
あ:「ねぇ班長?早く行こうよー」
ぎゅー。
ちょっとあやめさん。井上さんの前で…
和:「さ、最初はカヌーだからさ…こっち…」
ぴとっ。
そうだった…井上さんもこんな感じだったわ…
髪を通して、両腕から漂う華やかな香り…
当然、胸の鼓動は速くなり、
僕は必死に、悟られまいと黙り込んだ。
最初はカヌー体験。
2人乗りしかないみたい。
○:「じゃあまずは女子同士で乗りなよ」
あ:「あ…?」
和:「は…?」
和:「(○○くんって鈍感なとこあるよね…)」
あ:「(必死になってる
私たちが馬鹿みたいじゃん)」
あれ…
同性同士の方が気楽に乗れると思ったんだけど…
○:「なら僕と…」
あ:「はい!」
和:「はい。」
…
プレッシャー…
お前が決めなさい、
と言わんばかりに睨みつけられる。
こういう時の定番は…
○:「じゃんけんで決めよう。1回勝負ね」
…
神様、うまくいきますように…
ジャンケン…
いっちに。
いっちに。
…
気まずい。
非常に気まずい。
和:「…」
あの井上さんのことである。
どんなテクを使ってくるのかと身構えてたけど、
全然何もしてこない。
和:「…」
そしてほおが赤い気がする。
僕が何もしなさすぎて、呆れちゃったのかな…
それともカヌーが下手すぎて引いてるのかな…
…でも、2人カヌーって協力戦だからさ、
井上さんにも非があると思うんだよね(?)
…こういうとこが嫌われるんだよ、僕…
和:「あ…あのさ…!」
○:「ん…って井上さん?!」
和:「この校外学習が終わったらね…いや」
この不安定なボートの上で立とうとする彼女。
ちょっとちょっと…嘘でしょ。
和:「今…○○くんに伝えたいことがあるの」
![](https://assets.st-note.com/img/1716704136191-HE9FK3IJcJ.jpg?width=1200)
○:「待って待って」
やばい…このままじゃ、
和:「君って…私のこと…キャッ」
耳、鼻、目、口。
それはあまりにも一瞬で…
○:「がぶぼぼぶぉ...…」
僕たちは、5月の湖に放り出された。
○:「ねぇ…まだ怒ってる…よね」
あ:「…」
僕と井上さんはビショビショになった結果、
シャワーや着替えをする羽目になり、
あやめさんとのカヌーは、
叶わぬ夢となったのだ。
そのほか色々と予定が狂い、最後に残ったのは…
○:「プラネタリウム、か…」
暗闇の中、満天の星空が広がり、2人はそのまま…
なんて思い描くのが鉄板だが、
○:「えと…僕が真ん中ね…」
あ:「…」
和:「…」
両手に花…だったのは過去の話。
…地獄である。ぶっちゃけ。
あやめさんは特に不貞腐れてる。
このまま寝てやり過ごそうか…
…ごめんね。
2人とも幸せにはできないよ…
…急速に発展したこの現代。
星空を見上げることは少ないからか。
意外にも、僕はこの空間を満喫していた。
あ:「けほけほっ…」
ただ、さっきからあやめさんの様子がおかしい。
…流石に見放す男ではない。
○:「…大丈夫?」
あ:「…ちょっと無理かもしれない」
○:「…外出る?」
こくりと頷く彼女。
○:「井上さんごめん。先出てるね」
和:「え…」
1人置いてくなんて、悪いと思ってる。
でもごめん、
…あやめさんが心配だったんだ。
________________________________________
あ:「けほっ…」
○:「もう…大丈夫?」
ずっとチャンスをうかがってたけど…
ようやく、2人きりになれた。
あ:「うう…あそこの椅子座ろ…?」
体調が優れないというのは、
100%嘘ではない。
ただ…
○:「ちょっと…重いよ…」
もぉ…。
星空の下、彼との距離は近すぎて。
落ち着いてなんかいられなかった…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
○:「井上さんの勝ちっ」
和:「やったぁ!○○くんと2人きり…」
あ:「…」
まずいな…
いや待てよ、後攻の方が彼の印象に残りやすいか…
ありだな。
○:「じゃあ救命具取ってくるね」
和:「ありがと〜」
…
和:「あやめ…ちゃん?」
あ:「ん?」
和:「私はね、2人がすっごい羨ましい」
あ:「そ、そうかな」
和:「ベタベタしすぎないのに、
お互いを信頼している感じ」
私はもっと…ベタベタしたいんだけどな。
和:「でもね…私は今日にかけてきたの」
彼女から笑顔が消える。
和:「私がクラスの男子から
好かれてるのも知っていた。」
何かを覚悟している、そんな眼に見えた刹那…
和:「でも…私は彼しか見てないの」
和:「今日...…想いを伝えるから」
…
わかっていた。
そんな気はしていた。
私が、考えるのをやめていた。
○:「井上さん、こっちこっち〜」
和:「ごめーん、今行く」
2人きりの空間。
これ以上ないチャンスじゃないか。
私もカヌーの上で…
そう思っていたのだが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あ:「はぁ…。ちょっと楽になった」
それは叶わず、今に至る。
○:「よかった…。ゆっくり休もう」
…ふぅ。
今しかない。
あ:「ゆっくり…。うん、先戻っていいよ」
和ちゃんと何かあったのか、揺さぶってみる。
○:「いやいや、まだいるよ。心配だし」
あ:「良いの?
あっちには和ちゃんがいるんだよ?」
○:「そうだけど…それが?」
あ:「…愛を育んできなよ」
○:「…おっとどうした。」
あ:「さっきのカヌー、なんかあったでしょ」
○:「へ?…何もないけど」
あ:「とぼけないで。自首した方が罪軽いよ?」
○:「だからないって」
あ:「…はぁ。私から言うしかないのね」
○:「なんか勘違いしてない?
井上さんとは何も…」
あ:「告られたんでしょ」
○:「…え」
あ:「私より、彼女を選んだんでしょ?」
![](https://assets.st-note.com/img/1716704199828-d5oiJmiix6.jpg)
…
あ:「…つまり」
○:「告られてないってこと。」
あ:「…全て」
○:「あなたの思い込みです」
あ:「......…」
やってしまった…
恥ずかしすぎる。
あれだけ彼を疑っておいて、違うなんて…
○:「で、でもね」
あ:「うぅっ…」
○:「確かに最近
井上さんに気に入られてる気がするし…」
○:「ちょうど相談したかったんだよ、
あやめさんに」
…ん?
私に…相談?
それってわかってんの?
どういうことか…
○:「彼女から好かれるのは嬉しいけどさ」
○:「…1番ではないかな…って」
ほんとモブくんは…
あ:「…ばか。」
○:「えっ」
あ:「1番じゃないなら、きっぱり断りなよ」
あ:「それが
和ちゃんに対する礼儀ってもんじゃないの?」
○:「…そうだよね。
過度に期待させるのも失礼だし」
○:「わかった。ありがとう…」
ぎゅっ。
あ:「…ちょっと待ってよ」
○:「ん?」
あ:「1番の子には、何も伝えないの?」
○:「ふぇっ…それは…」
あ:「そ、その子だってさ、
いつ誰に取られるかわからないんだし」
あ:「わ、
私が相談に乗ってあげてもいいんだよ…?」
○:「えぇっ…その…」
あ:「教えてよ、○○く〜ん」
○:「はわ…」
あ:「いいでしょ…?」
○:「近いっ…
わかった、わかったから一旦離れて」
え、どうしよう…
本当に言うの…?
はぐらかすと思ってたのに…
○:「ふぅ…」
○:「真剣に聞いてね」
あ:「う、うん」
○:「僕が好きなのは…」
や、やだ…
聞きたくないっ…!
○:「...…つ」
○:「......…つっ!」
和:「あやめちゃん!大丈夫?」
...…え
あ:「うん…もう落ち着いた」
タイミング悪く、
プラネタリウムが終わったようだ。
彼にとっては救世主か…?
和:「よかった…。
でも○○くん?急に置いてかないでよねっ」
○:「あ、うん…ごめんね」
和:「じゃあ最後にお土産でも…って」
和:「もうすぐ16時じゃん!早く戻らないと」
○:「え、やば…って足はや。」
和:「先行ってるからねー」
あ:「ふふ…和ちゃんって真面目なとこあるよね」
彼女のせいで、彼の告白は聞けなかったけど。
焦ることないよね。
どうせ彼から言ってくれないだろうし。
私がいつか伝えるんだろうな…
![](https://assets.st-note.com/img/1716704264427-hGOHxnIlNI.jpg?width=1200)
ぎゅ…
○:「…あやめさん。」
あ:「え…??」
○:「僕の1番は…あなたです」
また、逃げると思っていた。
あんなに地味で、人見知りで、愛おしくて…
そんな不器用だった君から。
あ:「え…え……」
○:「えと…先帰る…」
ようやく、告白されました_____
あ:「もぅ。遅いよ」
続く