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最近兄がへなちょこすぎて困ってます。
【ぜんぶ母のせい編】
なんだか寝苦しくて、思わず目が覚める。
耳をすませば、雨の音。
ジメジメしてて、髪型も上手く決まらない…
それでも、私は梅雨の時期が好き。
なぜなら…
○○:「あ、暑いよ…」
彩:「もぉ。照れてるだけでしょ」
![](https://assets.st-note.com/img/1688111816533-twGJEA3vFr.jpg)
お兄ちゃんと、相合い傘ができるから…!!
こんなに近くにくっつける…
それだけでしあわせなのです。
○○:「なあ、彩」
彩:「なーにー?」
○○:「これ、何歳まで続けるんだよ」
私の兄こと○○は、顔だけ言えば悪くない。
でも、なんというか…
すごくへなちょこなんです。
今日の朝もお弁当を忘れそうになったし、
兄から話しかけることは殆どないし、
彼女ができたのも見たことないし…
彩:「あやがお嫁に行くまで」
○○:「何年かかるんだよ…」
彩:「お兄ちゃんよりは早いもん!」
○○:「はいはい、僕には一生無理ですよ…」
あと、とにかく暗い。
ザ・陰キャ。
そんなお兄ちゃんのことが、
いつも心配でならないのです。
○○:「じゃ、今日も塾あるから」
彩:「えー。こんなかわいい妹を一人で帰らせるの〜?」
○○:「彩には友達たくさんいるから、大丈夫だろ」
そういうことじゃないのになぁ…
彩はお兄ちゃんと一緒に帰りたいのに。
仕方なく昇降口で兄と別れ、
私は自分の教室へ向かう。
この数分の道のりが、最近は長く感じる。
HRまで時間があり、人はまだまばら。
彩:「おはよー…」
…
誰からも返事がない。
各々自習してるし、そんなもんか。
そう言い聞かせていた。
胸の鼓動は早くなっていた。
昼休み。
教室が騒がしくなる。
みんながグループを作って昼食をとるなか、
私は一人。
…そう。
私多分、みんなから無視されてるんだ…
入学したての頃、私はすぐに友達ができた。
最初は誰もが平等で、
みんなのことが優しく見えた。
キラキラした高校生活が始まると思っていた。
でも、一ヶ月くらい経った頃かな。
日々の生活に慣れてくると、
教室の風紀が少しずつ乱れていった。
スカートを切ったり、化粧をしだす子も現れた。
そんなある日…
女1:「小川さんってさ、ガキっぽいよね」
私へのいじめが、始まってしまった。
小学生みたいとか、田舎っぽいとか…
派手な化粧をした彼女たちにとって、
私なんか芋同然だったのだろう。
はじめは仲が良かった子たちも、
いつしか傍観者となり…
話すことはなくなった。
正直、今は学校なんか行きたくない。
…って!
お兄ちゃんが根暗なのに、
私まで暗くなってどうするの!
お兄ちゃんに心配はかけられないよ…!
というわけで、今日は秘策があるの..
その時まで、私は静かにお弁当を食べます。
もちろんトマトも一緒に。
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___
ふーっ、お腹すいたー。
…あれ。
やべっ、箸忘れた…
ちょっとしたピンチがあると、
僕はいつも彩のもとへ向かう。
妹に頼るなんて情けないが、
僕はいつもその優しさにつけ込んでいる。
正直、彩のいない生活は考えられない。
いつも言葉にしないけど、たまには
「ありがとう」って伝えようかな。
たまに機嫌が悪いところもかわいいんだけどね。
ここだな…1-A。
○○:「えっ…?」
鈍感な僕でさえ、この景色が異常だと気づいた。
彩が、一人で食べている…
○○:「…」
彩と対比するかのように、底抜けに明るい教室。
…
胸の鼓動が、早くなる。
助けなきゃ、って咄嗟に感じた。
でも、僕の足は硬直し、
話しかけることは、できなかった。
…うっ。
最低だ…僕って。
あの光景が脳裏に焼き付き、
午後の授業なんかどうでもよくなった。
夕方塾についた後も、
なんにも頭に入らなかった。
その間、雨が一度も止むことはなく…
___
さぁ…着替えの時間がやってきました!
ではここで、本日の彩の秘策を発表します。
じゃがじゃがじゃが…じゃーん!
黒の……下着…っ!
…え?どういうことかって?
実は、今日の5限が体育なんだけど…
体育の前って、必ず着替えるでしょ?
そこで、彩のこの姿をみんなに見せつければ…?
女1:「え?!小川さんセクシー!」
女2:「似合うじゃん。バカにしててごめんね…?」
彩の子供っぽいイメージを、
払拭できるに違いない!
お母さんと一緒に、二時間悩んで買ったんだもん…
きっとうまくいく。
つらい日々も、今日で終わり…
よし。
いざ、脱ぐ…っ!
…
彩:「…あれ?」
更衣室の空気が、瞬時に重くなった気がした。
女1:「ねね、小川さんの格好見てみ?ヤバくね?」
女2:「何あれ、ダッサ…。小学生が調子のんなよ」
女3:「はいみんな注目!小川のガキが大人ぶってま〜す」
…
ダメ、だった…
みんなの視線が私に集まる。
誰も手を差し伸べてはくれない。
この格好のまま、
更衣室から飛び出したいくらい。
もう、なんだかどうでもよくなった。
その後家まで帰れたことが、
今思えば不思議でならない。
![](https://assets.st-note.com/img/1688129434918-hVIYw8DOOQ.jpg)
次の日、私は学校を休んだ。
傘をささずに帰ってきたから、
軽く風邪を引いたようだ。
当然、家族に心配された。
でも、心配はかけたくなかった。
自分の部屋に入ってから、静かに泣いた。
誰にも聞こえないように。
よく眠れないまま、今に至る。
寝てるだけでも、汗をかいた。
外から、小さい子達の元気な声。
もう、15時を回ったのかな。
母:「彩ー。洗濯物ここに置いとくからー」
彩:「はーい。ありがとー」
扉越しの会話。
そろそろ起きよう…
きれいにたたまれたブラウス。
あたたかい。太陽のぬくもりかな。
彩:「お母さん。いつもありがと…」
最後に靴下。これで終わり…
…?
彩:「下着は…?」
彩の、黒い下着がない…
途端に、昨日のあの記憶が…
彩:「あの子たちが、とったの…?」
頭がぐわんぐわんする。
涙はもう、枯れきっていた。
今となれば、あの子たちがとった訳がない。
だって、その晩お風呂に入るまで、
ずっとつけてたんだから。
でも、その時の私は恐怖のあまり…
彩:「もう…なんであやばかり…?!」
怒りと悲しみに、押しつぶされていた。
○○:「彩?大丈夫か…?」
突然、扉の奥からお兄ちゃんの声がした。
気づかないうちに帰ってきたみたい。
彩:「う、うん。あや元気だよ」
しばらくして、扉が閉まる音。
自分の部屋に戻ったんだろう。
途端に、お兄ちゃんに甘えたくなる。
何も言わずに、彩のことを撫でてほしい…
ううん、でも私がお兄ちゃんを支えないと…!
![](https://assets.st-note.com/img/1688129465486-GGKEzGwyeq.jpg)
気持ちの整理がつかないまま、
私は兄の部屋へ向かう。
いつもの、元気な自分を装って。
___
彩のやつ、絶対元気じゃないだろ…
でもなんて声かけたらいいんだ…?
うーん…
いい案が思い浮かばないまま、
僕は洗濯物をしまう。
ん…?
この黒いブラ、まーたお母さんのが…
いや…?
新品っぽいし、なんか小さいな…
まさか…
彩のっ…?!
彩:「お兄ちゃんー?開けるねー」
○○:「えっ??ちょ…」
嘘だろ..
バレたら殺される…
僕は咄嗟に、尻の下へ隠した。
彩:「お兄ちゃん、あの、さ..」
いつもとは違う笑顔に、僕には見えた。
やっぱり学校で..
○○:「どうした?」
彩:「あやのね..下..着が、見当たらないの」
自然と心がきゅっとする。
そっちか..気づいてたか..
○○:「あらら」
彩:「まさかお兄ちゃん..」
○○:「盗るわけないだろ。ただの兄なんだし」
最低の兄だ。
もう、後には戻れない..
彩:「そう言うと思ってね..」
○○:「?」
彩:「第一回!お兄ちゃんの部屋抜き打ちチェック〜!」
![](https://assets.st-note.com/img/1688129214759-X4fnhPvxnm.jpg)
..
今日の妹は、特に冴えてるようだ..
○○:「は?おい勝手に..」
ここを動いたら..死。
彩:「まずは机の引き出しからっ」
良かった..まだ気づいてない。
今日のところはもう戻ってくれ..
てか全然元気そうだな..
彩:「何もなさすぎじゃない..?楽しくない」
○○:「まだ誰のものでもないんで」
彩:「..はぁ。お母さんに我儘言ってあれ買ってもらったのに」
やっぱりか。
彩ももうそんな年頃に..
大人になったなぁ..
○○:「ふぅん。確かに黒..」
彩:「え?」
○○:「あ。」
彩:「..」
○○:「..」
時計の音だけが、嫌でも耳に入ってくる。
…なんだかもう、笑っちゃいそうだった。
彩:「そういえばお兄ちゃん、さっきからずっとそこにいるよね?正座なんかして」
かわいく小首をかしげる彩。
声のトーンは低くて不気味。
○○:「き、緊張してるだけ」
彩:「あやわかるよ。そこに何かあるんでしょー?」
ゆっくりと、ニコニコ近づいてくる。
尻に敷いた以上、もう逃げ場はない..
○○:「そ、それh」
彩:「いけない子には、コチョコチョの刑だ!」
○○:「あ、ちょっ、やめうううっ」
彩:「ふふっ、脇腹が弱いのかな〜?」
弱点への集中攻撃が、決定打となり..
○○:「あっ、だめ..」
僕の重さで潰れたそいつは、静かに姿を現した。
○○:「あ..」
彩:「え....?」
○○:「違っ、これは..」
彩:「そんな....」
彩の気持ちは二の次に、言い訳だけを考える。
○○:「洗濯物..そう母さんが間違えて僕のとこに入れちゃって」
見苦しい兄..でも事実なんだ。
彩:「ううっ..」
何もいい言葉が思いつかない..
こういうとき、母ならどう慰めるんだろう。
○○:「僕も悪かった。だから泣かないで..」
彩:「お兄ちゃんで、良かったぁ..」
..?
よくわからないけど..
助かった、のか..?
○○:「え?..あぁ、よしよし..」
ひと通り、彩の話を聞いて..
彩:「ううっ..お兄ちゃん、これってあやがいけないの..?」
どんな理由があれ、
加害者が守られるのはおかしい。
○○:「彩は何にも悪くない。..学校辛かったろ?」
彩:「お兄ちゃんたちに、心配かけたくなくて」
○○:「彩は昔から、一人で抱え込むタイプなんだから」
とは言ったものの、僕にも非はある。
彩に頼りすぎていた。
彩なら大丈夫だろうと、最近面倒を見てやれず..
結果、彩に辛い思いを..
彩:「ごめんなさい..」
○○:「妹を助けられなかった、僕こそ兄失格だよ」
彩:「ふふっ..優しいね」
リラックスした、彩の自然な笑顔。
○○:「..?」
彩:「ねぇ..」
彩との距離が近くなる。
柔軟剤のかすかな香り。
○○:「うん..?」
彩:「今だけあやのこと、ギュッてしてほしいな..」
![](https://assets.st-note.com/img/1688129378113-gL3r2fKpOD.jpg?width=1200)
身内とはいえ、いつもの僕ならうろたえてた。
でも、今日は..
○○:「うん…いいよ、おいで?」
彩のすべてを、受け入れたかった。
彩:「ひさびさのハグ..なんかいいね」
○○:「..うん」
妹の、華奢な体。
わずかな汗の匂いさえ、今は心地良い。
彩:「またあやがいじめられてたら..今度は助けに来てくれる?」
もう、逃げたりするもんか。
○○:「もちろん。いつでも彩の教室乗り込むから」
彩:「そういうタイプじゃないじゃん」
それでも、なんだってするよ。
彩のためなら。
○○:「そうだけど..こんな可愛い妹なんだもん」
彩:「ふふっ..お兄ちゃん大好き..」
心からの、彩の思い。
全ての僕に沁みわたる。
○○:「僕も..」
彩:「もう少し、ぎゅーしてていい..?」
○○:「うん..」
この時間が、ずっと続けばいいのに。
陽が落ちるまで、
僕らは抱きしめあったのだった。
彩:「でもお兄ちゃん、あやの下着知らないふりしてた」
○○:「そ、それは..」
続く…かも?