星港夜

仙台に、「星港夜」という喫茶店がある。

全国からお客さんが来る、有名な喫茶店だ。
喫茶店の雰囲気の良さや、マスターが魅力的な人柄なので、色々な所から人が訪れるのだろう。
マスターが一人で切り盛りしているようなので、注文がたて込むと提供がすこぶる遅れる。

「ウチの店は店長ファーストだから!」と笑っている。
その屈託のなさが、マスターの魅力なのかもしれない。

人気メニューはマスター手作りのティラミスだ。そのティラミスは「時価」にて提供されている。現在は大体1人前2000円程度だと思う。時価の理由は聞いていないが、高級寿司屋みたいな理由があるのだろう。美味しさの参考となる逸話として、三ツ星だか一つ星のレストランのシェフが、マスターのティラミスを「これは本場のティラミスにも勝る味だ」と褒めていたという話を店内で聞いた気がする。まだ店のティラミスを食べたことはないし本場に行く予定もないのでその真偽は確かめようがないが、とにかく美味しいらしい。

マスターには「いつまで食べられるかわかんないから今のうちに食べといた方がいいよ!」と脅されることもある。

そう。いつまで食べられるのか、わからないのだ。

しばらく前に休業を宣言し、一年くらい前に再開した。
再開後、開店日は不定期となり、開店時間も15時~17時くらいとまばらである。

詳しい事情はわからない。何か理由があるのだろう。

仮に、完全に店を畳んでしまったら、この場所はどうなってしまうのだろう、というぼんやりとした不安がある。

行く頻度がせいぜい月1だし、長年通っているわけでもないので、惜しむ資格はないのかもしれないが、失くすにはあまりに惜しい場所だとも思う。

話は逸れるが、私が通ういくつかの喫茶店の店主は、概ね高齢であるように見える。そしてスタッフもあまりいない。いたとしても、大概は家族と思わしき方だ。今のマスターがいなくなってしまった後、後継ぎがいなくなってしまったら、廃業してしまうのかなと心配になるくらいに。

「個人的」には、そういう場所には残ってほしいと思っている。

星港夜ほどの場所なら、「継ぎたい」という人はいくらでもいそうな気がするが、「違う人」がやると、「違う場所」になってしまいそうな気もしている。味もそうだが、「人の魅力」というのはとりわけ代替がききづらい印象がある。

そもそもマスターが後継者を必要としているのかどうかもわからないので、今までの話は完全に個人的な思いこみである。

建物が更地になると、かつてそこに何があったか思い出せないことはないだろうか。別に開発を否定したい訳ではない。それでいい場所とそうじゃない場所があると思っているだけだ。

星港夜には、そうなってほしくないなぁ。

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