硬いクッキーが食べたい

タイトル通りのお話です。

クッキーが好きだ。洋菓子の中ではタルトと同列1位。
和菓子ではおせんべいが好きだし、中国のお菓子「麻花(マーファー)」も好き。そういう硬いお菓子が好みで、昔から乾パンまで喜んで食べたりする子どもだった。

でも、市販のクッキーって…あんまり硬くないんだよな。
いやわかる。サクサク、ホロホロした食感のクッキー…おいしいよ。でも私が食べたいのはもっと硬い、カリカリ…いっそガリガリしたような食感のクッキーなんだよな。昨今人気のサクホロ系は、私には噛み応えが足りない。

理想の硬さのクッキーを求めて、ここ数年各所をさまよっている。それが先日、かなり理想の食感に近い市販品を見つけた。
喜びついでに、2021年現在時点での好みの市販のクッキーたちと、私的硬いクッキーのレシピをメモしてみる。硬めのものをあえて選んでいるので、一般的好みとはズレるかもしれない。


市販のクッキーたち

そんなに硬くはないやつも含む。

江崎グリコ「Shall we?(シャルウィ?)」

その辺のスーパーとかで買えるクッキーのシリーズ。バター、マカダミア、キャラメルがある。どれもおいしいが、私が好きなのはバタークッキー。
バターの風味が強く、食感はザクザクに近い。バターの主張が強い分、カジュアルに買えるクッキーとしては食べ応えがあるほう。それでもこの直下で紹介するやつほどではない。
値段も食べ応えもお手軽でおいしい。ほとんどどこでも手に入るのもありがたい。困ったときはこのクッキー(どうしてクッキーで困るのか)。


ウォーカー「ショートブレッドフィンガー」

カルディとかにある。ショート”ブレッド”ってパンみたいな名前だが、英国伝統のバタークッキーのこと。材料は小麦粉、バター、砂糖、塩。以上。シンプル過ぎる。歴史と自信を感じる。
カロリーメイトと見た目がそっくりで、邪悪なカロリーメイト…と言いたいところだが、こちらの方が歴史が古い。カロリーメイトの奴が光堕ちしたショートブレッドなんですね。栄養価?カロリー?気にするな!箱で買え!あっちは4本だがこっちは最大12本入りだ!!
味はかなりバター。濃いめ。食感はカロリーメイトよりザクっとしていて、ボソボソ感はあまりない。おいしいのは間違いないが、生地の厚みとバターの濃さが相まって“重い”。12本入だ!!とか書いたけど、箱入りは一人で全部食べる用ではないと思う(食べてる)。小袋もあるので、味見だけならそちらが良さそう。


ペパリッジファーム「チェスメン」

表面にチェスの駒の柄があるバタークッキー。成城石井とかにある。
クッキー of クッキー、王道 of 王道、みたいな風情の食感と味。それほど癖が強くなく、バターが重いこともないので、食べ応えは中くらい。王道にして中庸、キングでありながらポーン。あまりにバタークッキーの存在ど真ん中なのでこれ以上語ることがない。おいしいよ。


きとうむら「おばあちゃんのおからくっきー」

おからを使うと硬い食感になるらしく、おからクッキーにはいい感じの硬さのやつが多い。…が、おからクッキーは一般的にダイエット食で、欲望を満たすために食うには向かないことも多い…。
このおからクッキーは、まだギリギリ「私はお菓子です」という顔をしている。プレーン味のほか、ごま、柚子、生姜がある。クッキーとしては和風の雰囲気。ガリガリ、ポリポリした食感、素朴な甘さ。油分の主張はほとんどない。上記のバタークッキーたちと比べれば明らかに軽量級。
あまり売っているのを見かけないが、自然派を謳うタイプの食品店とかに置いてある。


無印良品「プレーンスティックサブレ」

ここ数年での私的最大ヒット。ガリガリした食感で、理想のクッキーの硬さに限りなく近い。迷ったらこれ食べれば良くなってしまった。ありがとう無印。あなたがメシア。
小麦粉ではなく米粉とコーンスターチを使っている。米粉クッキーも食感が硬くなりやすいらしく、当たりが多いと私の中で有名。プレーン味のほかに、ほうれん草味とにんじん味もある(何のチョイス…?)。
「プレーンサブレ」と「プレーンスティックサブレ」という、形の違う2種類があるが…なぜか食感も全然違う。硬いのは「スティック」の方だけで、ただの「プレーンサブレ」はサクホロ系。原材料を見た感じ、米粉とコーンスターチの配合を変えている?成形の都合かな。ココア味が「プレーンサブレ」の方にしかないのが惜しい。
名前がサブレなのは気にしない。


泉屋東京店「スペシャルクッキーズ」

ちょっと高いやつ。泉屋は東京に本店を置くクッキー専門店で、各地の大きな駅や百貨店に販売店がある。専門店だけあってクッキーの種類が豊富。贈答用の缶入りクッキーが有名だが、同じクッキーを袋詰めにしたご家庭用もある。
クッキーの表面がザラザラしていて、食感はザクザク、ガリガリ。どれもバターの主張があまりないので、食べ応えは軽やか。生地にシナモンやジンジャーなどのスパイスを使っているらしく、風味がちょっと独特。スパイス系の風味が苦手でない人ならおいしいと思う。


余談:クッキーではない硬いお菓子

麻花(マーファー)/麻花兒(マファール)

冒頭で挙げたやつ。クッキーやおせんべいと比べると知名度が低いかも。中国の伝統菓子とのことで、横浜の中華街に行くとお土産屋さんで売っている。
カリカリした食感で、ふんわり感じる程度の素朴な甘さ。揚げ菓子特有の、砂糖というより油の甘さと言えばいいか。強いていえば揚げパンとかりんとうの中間?
おまんじゅうよりおせんべいを好むような人には、月餅じゃなくて麻花を中華街土産にするといいと思う。中華街は歩いているだけでも楽しい。気軽に旅行に行ける時勢になった折にはぜひ。


スピナ「北九州名物 くろがね堅パン」

乾パンの仲間。成城石井に行けばある。
自分の歯の強度が持つか不安になるレベルで硬い。メーカーさん自身が「鉄のように堅い」と言ってしまっている。よく見る乾パン風情では防御力の高さが比較にならない(乾パン好きだよ)。手で綺麗に割れなかったカニの殻を噛み砕くときの方がまだ楽。
味は乾パンの仲間らしくあっさりしている。
とにかく硬いものに歯を立てたいなら(そんな人いる?)こいつを相手にすれば間違いない。実際に食べていると「ここまで硬くなくていいな…」となりがち。歯と顎に自信がある人間か、一生歯が伸び続ける種族向け。


余談:クッキーとサブレとビスケット

「ショートブレッド」は英国伝統のバタークッキーのことだと書いた。ところでクッキーと似たお菓子に、サブレとビスケットがある。無印のやつは名前がサブレだ。
このへん何が違うのか?

ほぼ同じ!!

いや、材料の配合がちょっとずつ違うので、一応味や食感にも違いがある。ビスケットとクッキーに関しては、日本に限って法的に成分が決まっており売るときの名称が違う。市販品で硬い「クッキー」を探したいとき、「ショートブレッド」はあり、「サブレ」もまあ選択肢に入れていいが、「ビスケット」はほぼないことになる。
日本に入ってくるときややこしくなったパターンかな…。


私的硬いクッキーのレシピ

ネットで拾ったおいしいクッキーのレシピを魔改造して、わざと硬く焼き上がるようにしたレシピ。今のところこれがいちばん上手くいく。
結構硬くて甘くないので、一般的おいしいクッキーのレシピではない。良い子はまねしないでね…原案の料理人の方にはごめんなさいを。

材料

小麦粉:120g
砂糖:40g
バター:40g
全卵:1個

作り方

①バターをレンチンして完全に溶かす。
②オーブンを180度で予熱する。
③溶かしたバターと全卵を混ぜる。
④砂糖を入れて混ぜる。
⑤小麦粉を入れて練らないように混ぜる。硬めのペースト程度になるまで。
⑥ラップでくるみ、冷蔵庫で1時間寝かせる。
⑦5mm厚に切る。
⑧余熱したオーブン180度で35分焼く。
※温度と焼き時間はオーブンの個性と相談。低温で25分以上の長さを目安にする。

お菓子作りに慣れた方なら、ところどころおかしなレシピだと見ればわかるのかもしれない。いわゆる「サクサクしたおいしいクッキー」にならないように、変えられそうなところを変えてみている。

そもそも、クッキーの硬さって何で決まるのか。
教えてGoogle先生!

卵と砂糖の違いで焼き上がりを実験してる人がいる…。

これはバターの話。

卵とバターの話。

教材研究 クッキー(PDF)
調理と科学(II) 油脂の調理(PDF)

論文みたいなものヒットしたけどなに?

製菓本とかでもっときちんと学べば書いてあるんだろうけど、ざっくりこんなものかなと思った。

・バターは常温で使い、混ぜるとき空気を含ませるとサクサクになる。
・バターをたっぷり使うとサクサクになる。
・卵黄>全卵>卵白の順にサクサク(卵白は硬すぎ)。
・粉砂糖>グラニュー糖>上白糖の順にサクサク(上白糖だとしっとりして焦げやすい)。
・小麦粉を入れてから練ってしまったり、冷蔵庫で寝かせなかったりすると、グルテンが増えて硬くなる。
・焼き時間が短い方がサクサクになる。

なら、これを逆行したら硬いクッキーになるはずじゃんな。というわけで逆行してみたのが、さっきのレシピだった。
ただ、小麦粉のグルテンに関しては、増え過ぎるとガリガリを通り越して食べられない食感になってしまう。上のレシピでも小麦粉は練らないようにして、冷蔵庫で寝かしてみている。


お菓子作りと言えば、ちょっと間違えるとすぐ何もかもめちゃくちゃになる…と各方面で恐れられがち。そりゃこんな繊細な条件で食感や味を制御してたらそうだよ…!おいしい作り方を経験則で見つけてきたであろう昔の人たちに頭が下がる。

上のレシピにたどり着くまでに、私もやべーものをいろいろ生み出してしまった。お菓子はレシピ通りに作ろう!!卵白の有無も砂糖の種類もノリで変えてはいけない。オーブンの温度と焼き時間は自分の相棒オーブンと相談だ。
お菓子作りは…科学!!


余談:やべーもの

これは本当にやらない方がいい。

小麦粉じゃなくて片栗粉にする
クッキーっていうかたまごボーロみたいなものができる。

バターじゃなくて牛乳にする
堅パンより硬いものができた。歯が負ける。生地の水分が多いと焼き上がりが硬くなりやすいらしい。

卵なし、バターじゃなくてサラダ油にする
焼いた虚無って感じがする味。砂糖入れたのに?風味って大事なんだな。

卵なし、米粉+オリーブオイルにする
永遠に固まらない。粉の混ざった油。
米粉はグルテンが含まれていないので、それ自体が固まらない。「つなぎ」になるものを考えて作らないと、まともな生地にするのも難しい。
世の中のおいしい米粉クッキーはすごい。ありがとう無印。


以上です。おいしくて硬いクッキー…ほかにも出会えるといいね!!


余談:クッキーとノスタルジー

硬いクッキーのレシピを探してさまよっているときに見つけた、Yahoo知恵袋のやり取り。別の意味で印象に残ってしまったので、誰か読んでほしい。


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