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仮の姿がモモンガだった人を作る──「一人と一匹」のキャラ作成

定期更新ゲーム「騒乱イバラシティ」、Eno.969「一人と一匹」。

アンジニティ住人としての正体は、凶悪な異形の化け物と、そんな化け物を操る異能を持った少女。
イバラシティでの仮の姿は、呑気なガラス職人の男と、彼に保護された雌のモモンガ。

世界が切り替わるときに立場が逆転してしまうことになった、人外と人間のコンビ。
いろいろと設定変更を経つつも、テスト時からこんなキャラだ。

なんでこんなキャラになったの?という話を、イバラシティが終わる前にメモっておきたいなと思ったので…メモです。とてつもなく長い。12000字ある。

本題の前に:これまでの定期ゲキャラ

人外キャラがほとんど(好きなので)。人間に友好的な、割合おとなしい性格のキャラが多い。

正直に言えば、私がいちばん好きな人外は、ゲームの敵モンスターたちのような化け物だ。しかし定期ゲのキャラとしては、RPや戦闘での動かしやすさ、楽しさを優先していた。それはそれですごく面白いし、これまでのキャラはみんな気に入っている。

思いっきり化け物人間嫌い、かつ他者に敵対的なキャラは、イバラシティに出したコンビが初めてだ。

Q.なんでそんなキャラになっちゃったんだよ
A.作ってるうちにどんどん性癖に正直になってしまって…


キャラ作成の前提その1:己の性癖

人外×人間が好き。

私と付き合いの長い方々には、それはもうオハヨウピーチャンカワイイネーを覚えたインコのように繰り返し歌って聞かせていることだ。人外と人間の組み合わせ、""最高""なんですね。私の中で…。なお、「×」は恋愛以外も多分に含む。

いちばん描くのは人外×少女、特に好みの組み合わせは人を殺せる人外気の狂った少女共依存(最悪)。

一次創作も9割方人外×人間。付き合ってくださる各位、いつも本当にありがとうございます。今後も鳥籠の向こうからオハヨウピーチャンカワイイネーを生暖かく見守ってくれると本当に嬉しい。

ところで、イバラシティが公開される前、GMのTwitterでこんな感じのお話があった気がする。

次回作は人外と人間のセット登録になる

見た瞬間に「人外×人間じゃん」と思った。でもあまりに私に都合がいいので、全部幻覚だったかもしれない。たぶんそう。実際、稼働開始したイバラシティはまったく違う設定だ(該当ツイートは削除されていると思う)。
ただ、イバラシティに登録する前から「参加するなら人外×人間(少女)のコンビにしよう」と思っていた。

しかなくないわけないが、やろうと心に決めちゃったので仕方ない。カレーの口になったんだからカレーを食べるんだよ。


キャラ作成の前提その2:ガラス職人をやりたい

もう1つ、参加前から決めていたことがある。ガラス職人のキャラにして、ガラス工芸を作るRPをすること

2017年から言ってる…。ずっと考えていたわりに、なかなか実行に踏み切れなかった。私には難易度が…高く…。

イバラシティでは偶然好条件が重なり、どうにか実行できそうだった。この機を逃したら二度とチャンスが来ないかも。腹を括って、本稼働からガラス工芸を作るRPをしようと決めた。キャラ設定や陣営に関わらず、「イバラシティでの職業はガラス職人」にすることにした。

実行に踏み切れた理由の1つがスポット・プレイス制だ。立地を決めてお店を構えられる…!おかげさまでガラス工房を立てられた。遊びに来てくださる方々、本当にありがとうございます。
ちなみに、工房のモデルが実在している。リアルイバラシティのリュウジン区にある老舗メーカーだ。本当に80年ぐらいガラス工芸を作り続けている。すごい。

工房名にした「竜美」は、暴走の世界アイチ二ティにある実在地名。私も出身地ネタがやりたくて…。


いざキャラ作成!まずは陣営を決め…られない

イバラシティは、「イバラシティ陣営(防衛側)」と、「アンジニティ陣営(侵略側)」の、2陣営対戦だ。敵対設定の対人戦もある。
キャラ作成に当たって、どちらの陣営で参加するかが大きな決定事項だ。

私の場合、テスト参加の前から人数が少ない方の陣営で参加しようと考えていた。2陣営の参加者数が拮抗した方が、ゲームが面白くなるはず。陣営にこだわりのない自分は、人数合わせに回ればよいだろうと。
ただ…実際どちらの陣営が少ないのか、キャラ登録が始まるまでわからない。どちらの陣営でも参加できるよう案をいくつか用意しておき、登録開始後の人数比を見て使う案を選ぶことにした。

結果は?

大はずれじゃん!!
テスト・本稼働共に、人数はアンジニティが劣勢。アンジニティ用に作ったキャラの「一人と一匹」で参加し、テストから本稼働まで続投することになった。

…多めに案を考えた上、登録直前まで陣営が決まらず、テスト参加時点ではキャラが未完成。テスト参加を走りながら設定を固め、動きに反省点を見つけては修正して、本稼働に突っ込んだ。「一人と一匹(βテスト版)」状態

ここから先、そうして走りながら作った「一人と一匹」の設定を、できるだけ整理してまとめてみる。実際には、こんなに綺麗な流れで作っていない。ぐちゃぐちゃに絡んだ糸をまっすぐ伸ばして見せるとこうなる、という話だ。
あと、没案にまつわる話はまるごと省いている。


ルールブックの空隙と、世界観に仕掛ける確定ロール

テスト参加前。キャラを考えるために…まずルールブックを読むよな。

世界観を見て思ったのが、人外キャラの参加がちょっと難しいということ。イバラシティという世界は…

《響奏の世界》イバラシティ
イバラシティは、ほぼ現代と同様の文明レベルを持った島。
気候や風習などはまるで日本の茨城のよう。
特殊な能力を持った人間たちが住む世界で、
そのため現代とはまた少し違った発展をしている部分もある。
・イバラシティについてはまるで茨城のような人間社会ですが、異能により多少姿に変化のある人間もいます。

…現代異能っぽい。住人キャラは基本的に人間だ。
では、アンジニティの設定も見てみる。

アンジニティの住人:様々な種の咎人
侵略能力により、アンジニティでの記憶・姿を失い、一時的に記憶・姿が『イバラシティに適応したもの』となり、イバラシティの住人として過ごすことになります。

こちらは人外の住人がいそうだ。どんな仮の姿に変身するかまでは、はっきり規定されていない。
なので、このゲームに人外キャラで参加しようとすると、次のどれかになる。

①アンジニティの人外で、イバラシティでの仮の姿が人間。
②アンジニティの人外で、イバラシティでの仮の姿も人外(現代日本で許容できる道具、動物などの範疇で)。
③種族は人間だが、異能の影響で人外のような姿になっている。
④異世界出身の人外で、侵略戦争開始時にイバラシティにいた。

人外キャラで参加したいPLはそこそこの数いるはず。定期ゲ界、人外好きな方結構多いですよね。そうしたPLは、この中からどれかを選んで人外をねじ込むことになりそうだ。

私も人外×人間をやりたいので(※性癖)、どれかの設定で考えてみる。
頭をひねっていて気になったのが、①アンジニティの人外で、イバラシティでの仮の姿が人間のパターンだ。人外キャラをやりたいPLが、少なからずこの設定で登録するだろう…とすると…

ワールドスワップには、強制的に別の種族へ変身させる力がある。

…という設定があることになる。
ルールブックに明記されていなくても、この設定が必要なキャラがある程度いるなら、既成事実になりそうだ。PLの行動がゲームの設定を固める、世界観に対する確定ロールのようだなと思った(ルールブックの表記が曖昧なのは、GMも想定していたからだろうけど)。

同じように、②アンジニティの人外で、イバラシティでの仮の姿も人外(現代日本で許容できる道具、動物などの範疇で)の登録者がいるなら、こんな既成事実もできるはず。

街に紛れ込んだ侵略者は、人間ではないこともある。
現代日本で許容できる道具、動物などの範疇で)

というわけで、ルールブックには書かれていないけれど、既成事実としてGM・PL各位に認識されそうな設定が2つある。

・ワールドスワップには、強制的に別の種族へ変身させる力がある。
・街に紛れ込んだ侵略者は、人間ではないこともある(現代日本で許容できる道具、動物などの範疇で)。

…これもしかして。人間から人外への変身も、どさくさに紛れて通っちゃうのでは?現代日本で許容できる道具、動物などの範疇なら)

「人外×人間のコンビキャラ」という前提に、上記、ルールブックから考えたことを付け足してみる。

人外と人間のコンビで、正体はアンジニティの住人。
人外の方は、仮の姿で人間になる。
人間の方は、仮の姿で人外になる(現代日本で許容できる道具、動物などの範疇で)。

世界が切り替わると立場が逆転するコンビを作れそう。

この設定、面白いのでは?
…世界観への追い確定ロール、仕掛けよう!!アンジニティ住人の人外と人間で、人間の仮の姿を人外にしてしまおう。多分通るだろ…!

とはいえ、マジでこんな設定やって普通に怒られたらどうしようとも思った。ルールの隙を付くようなやり方だ。今のところ見逃されているけど…ありがとうございます。乗ってくださる方にも堪えて黙っていてくださる方にも感謝…。


夜の女と白昼の男

世界が切り替わると立場が逆転するコンビ、と考えて、ある作品を思い出した。「レディホーク」という映画だ。ちょっと古い映画だけど、映画界では有名らしい。子どもの頃に見てからずっと印象に残っている。
※下記リンク先は、結末のネタバレ含めて紹介されているのでご注意を。

ざっくり言うと、↓こんな映画だ。

呪いに掛かった男女が、呪いを解くために戦う物語。
二人が受けた呪いとは、男は夜の間だけ狼の姿に、女は昼の間だけ鷹の姿に変身するというもの。半日ごとにどちらかが動物になってしまうから、二人は連れ添っているのに会話できない。

ずっと行動を共にしているのに、絶対に会話できない」コンビ、面白そう。私のキャラも、人外の姿では言葉を話せないことにしよう。

また、二人の性別が異なる点も参考になりそうだ。変身による二者の立場の逆転を主軸にするなら、逆転が一目でわかる方が良いからだ。例えば、アンジニティで人間が♀なのに、イバラシティでの人外(仮の姿)も人間♀だと、一見して人間♀が変身していないように見えかねない。性別が異なっている方が逆転がわかりやすい。

…。
そこまで参考にするならもうパロディすれば…?

思い切って、変身のアイデア含め、設定の土台を「レディホーク」から借りてみることにした。
(言い訳がましいけれど、アイデアの借用は権利的には問題ないレベルのはず。グレーゾーンを走ってばかり…)

アンジニティ(夜)の姿は、人間の女と獣。
イバラシティ(昼)の仮の姿では、人間の女が獣に、獣が人間の男になる。
どちらの姿でも、行動を共にしている。
しかし、獣の姿では人間の言葉がわからず、両者は会話できない。

それぞれのキャラの名前も、映画から頂いてみる。映画の中で変身する二人の名は、美女イザボー(エリザベス)と、騎士ナバール。「リズ」と「ナヴァル」でどうだろう。
そのほか、二人の背景を組み立てるためのキーワードも映画から頂いた。宗教と聖堂、そして皆既日食

…映画は二人のラブロマンスだというところは頂かなかった。「一人と一匹」のコンビは、最後まで何も起こらない。


出オチをやる

キャラのイメージが固まってきた。さらに細かい設定を…
…詰める前に、1つ問題がある。どうあがいても出オチのキャラになること。

イバラシティ、更新ごとに各所で情緒が燃えている。このゲームはおそらく、イバラシティでの交流で絆を紡ぎ、ハザマでめいっぱい相手の心をぶん殴るのが王道の遊び方だと思う。
立場が逆転するコンビだと、この遊び方が難しい。人間として紡いだ絆は、ハザマでは物言わぬ獣が抱えている。ハザマで人間のキャラは、イバラシティでは獣なので絆を紡げない。ただ妙な設定で見た人に驚いてもらうだけの、出オチキャラになる。
どうするか。

どうもせずそのままにした

私はそもそも、それほどRPが得意じゃない。情緒を燃やすほど交流するのは難しい。できる見込みが少ないなら、最初から努力しなくていいのでは。
それに、このゲームは対人戦がある。私も対人戦に参戦するつもりだった。対戦相手なら、こちらの結果を見に来る確度は高い。
交流相手はゼロかもしれない。でも、一瞬見てくれる対戦相手はいる。

出オチ、やろう!!

見た人が立場の逆転に気づいてくれた瞬間が最大風速だ。そのあとは立場の逆転をネタに話を進め、面白さが自分のキャラだけで完結するようにする。見た人がちょっとでも「え?」と思ってくれたら、それで十分。
目標は低く!


というわけで開き直って、立場が逆転するコンビで設定を詰めていく。2キャラ×2パターンの姿だから、4キャラ分のキャラ作成を……4!?
描くのがめっちゃ大変だとあとから気が付いた。本稼働、現在進行形でアイコン枠の圧迫がすごい。

以降、「ナヴァル」と「リズ」の設定詰めを、別々の項としてまとめる。実際には、4つの姿を行ったり来たり飛んだり跳ねたり、並行して作っている。
実質4キャラ分の説明なので文章がものすごく長い


「ナヴァル」を作るための土台

まず、人外側の土台は、こう。

・名前は「ナヴァル」。
・アンジニティの人外。
・仮の姿が人間の男。
・イバラシティでは獣と一緒にいる。
・イバラシティではガラス職人をしている。

ナヴァルには、「イバラシティではガラス職人をしている」という前提がある。白紙からより設定を固めやすい。ここから考えよう。


「ナヴァル(ヒトのすがた)」を作る

イバラシティに住む男性で、職業はガラス職人。割と形ができているから、あとは性格や境遇などを乗せればいい。そして、正体が人外だとすぐわかる仕掛けが必要だ。出オチしたいので。
また、ゲームの設定上、「異能」も必須だ。

異能」。
イバラシティへの参加に当たって、この点は誰もが相当考えたんじゃないだろうか。交流にも戦闘にも、異能が大きく関わってくる。特にアンジニティ住人の場合、正体にまつわる異能にして、正体と仮の姿を結びつけることも多いだろう。

ナヴァルも、「この男が人外だ!」とすぐわかる仕掛けとして、異能を使うことにした。正体の人外がハザマで使う戦闘能力と共通項がある異能にする。
さらに、ガラス工芸とも絡む異能にしたい。世界観が異能者の街なのだから、異能を仕事に生かしている方が面白いはず。

つまり、このキャラは、同じ能力を戦闘と工芸の両方に使う。人を傷つけるためと、工芸品を作るため。両方に使える力って何だ?ガラス工芸の技法からネタを探すと…。

エッチング(食刻)
腐食剤でガラスの表面を溶かし、自在に模様を刻む手法だ。腐食剤はガラスや金属を溶かせてしまう薬品なので、もちろん人体にも有毒。
異能のテーマにピッタリだ。決定!腐食剤と同じ現象を起こせる異能にする。

異能は『浸蝕(イロージョン)』。
触れたところから、ものを急速に崩壊(腐食)させる。
ガラス細工に応用できる。

説明と効果はできるだけシンプルに。この異能の最大の役割は、「人外とガラス職人が同一キャラだと気づかせること」。交流で使うことではないからだ。単純でいい。

続いて、性格や境遇も作る。
「出オチをやる」と決めているから、パッと見で掴みやすいキャラにしたい。イバラシティ側で動くキャラなので、RPのしやすさも一応考慮する。正体との共通項、相方になる人間(獣の姿)との関連…といろいろ考えた結果、このようになった。

20代前半の若手ガラス職人。
ガラス工芸メーカーに就職している。
ペットを飼っている。
お人好しでポジティブ、悩みが少ない。
言葉の扱いが下手で、あいまいな言葉やジェスチャーを多用する。
関東圏の若者言葉で喋る。

本当は、世界観に合わせて茨城県方言のキャラにしてみたかった。私自身が茨城県の方言を使いこなせず、妥協案に…無念…。

最後に、人間としての名前。
正体と名前が似ている方が、変身がわかりやすい。世界観にも合わせて日本人名にしたいが…「ナヴァル」と響きの似た日本人名なんてあるのか?日本人の名字から調べてみる。

「なばり」。
あるの!?嘘だろ!?

即決した。完全に偶然。
創作、たまにこういう奇跡が起こるのが面白い。


「ナヴァル(けもののすがた)」を作る

正体の人外は、生態や姿をゼロから作る。今回はせっかく侵略者なのだし、ゲームの敵モンスターのような人外がやりたい(※性癖)。
また、アンジニティの住人だから、世界を追放された理由がある。モンスターらしく、単純に凶悪な理由にしたい。

ガラス職人の設定で、腐食剤を共通のモチーフと決めた。これを拡張して被害の規模を大きくし、世界を追放されそうなモンスターを考えてみる。
ここで、映画から頂いたキーワード「皆既日食」を思い出す。皆既日食には、「太陽が何かに食べられてしまう」類の伝説や神話がある。「腐”食”」と「日”食”」を掛けてみよう。

皆既日食の影から生まれる獣。光や熱を放つものを好んで捕食する。
体液には、触れたものをなんでも溶かしてしまう性質がある。
生き物を捕食し、土地や家々を溶かし、通り過ぎた土地を蝕んでしまう。

凶悪な捕食者になった。討伐クエストが発行されそうな生態だ。決定!

この設定に合った姿を考える。
また、対人戦に参戦するキャラでもある。邪悪な敵モンスターに見せたいので、あえて「かっこいい」人外ではない異形にしてみよう。

私の場合、人外キャラの姿を作るときは、まずベースになる生き物を決める。今回も生き物を選ぶのだが…。
テスト参加前の、2018年12月。友人に誘われて、たまたま水族館に行っていた。

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写真が下手。
水棲生物、サイコー!!の気分だったので、この水族館で面白かった生き物からベースを選ぶことにした(単純)。花鳥園とかに誘われていたらナヴァルはもっとファンシーだったかもしれない。
候補になった生き物は3種。

ウツボ
見るからに捕食者だ。でも「かっこいい」。蛇のようなフォルムゆえに、人外キャラ化すると龍に似てしまう。
タカアシガニ
巨大な甲殻類、凄みがある。でも作画コストが高すぎるし、メカ系になりそう。カットインを描くたびに私が死んでしまう。
エイ
魚らしからぬフォルム、海底を這う泳ぎ方。干物が「宇宙人みたい」と話題。変わった姿は異形にしやすい。注目や人気を集めやすい種ではなく、「かっこいい」人外からも外しやすそうだ。

エイで決定。

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写真はナヴァルのモデルになってくれたエイ。種類をメモしてくるのを忘れてしまった…。

エイをベースに、凶悪な捕食者らしい外見や動きを考える。「かっこいい」デザインから外すため、身体のパーツの位置をずらしたり、形を歪めたりするようにした。だいたいこんな感じ。

エイは海底を這って進む。口が下側に開き、海底の獲物を食べる。
しかし、この獣は動物や人間(=そこそこ高さのある獲物)を襲う。地面を這って進み、捕食の直前だけ起き上がるのだろう。
エイはよく「お腹側が顔に見える」と言われる。実際のエイの目は背中側にあるけど…本当にお腹側を目にするか。捕食直前に獲物と目が合って素敵。
捕食者なら獲物に牙や爪を立てるが、エイには牙も爪もない。獲物を捕らえるとき、身体を広げて包む格好になるのではないか。なら、身体の縁に牙を生やして、包むと噛み合うようにしよう。背を丸めたムカデの脚のように。

連想ゲーム的に異形になっていく。動きのイメージは、多少ほかの生き物も参考にした。

また、エイをベースにしたことで、海のモチーフを加えたくなっていた。腐食、皆既日食と合う海のモチーフを考えると…「海食」がある。海の波が少しずつ陸地を削っていくことだ。これも足してみる。

身体は液状で柔らかく、自由に伸展する。
波打つように陸地を進み、大波のように高く起き上がる。

ついでに、海食にまつわる単語から取って、フルネームを「ナヴァレローデ」にしてみた。ネームドモンスターっぽくなったのでは?

ところで、「仮の姿の職業はガラス職人」だ。なら、異形の姿にもガラス工芸のモチーフを入れてはどうか。美しいガラス工芸が異形の獣になっていたら、ギャップが面白いのでは。
以前からステンドグラス風のイラストを描いていたので、ステンドグラスを加えてみた。

黒い泥のような液状の身体に、ガラス片に似た牙や爪が嵌っている。

無機物っぽくて異形度が増したと思う。決定!

呑気なガラス職人のナバリ、異形の獣ナヴァル。
人外側、変身するキャラができあがった。


「リズ」を作るための土台

そして、人間側の土台は、こう。

・名前は「リズ」。
・アンジニティの住人。
・人間の女。
・アンジニティでは獣と一緒にいる。
・仮の姿が何らかの動物。

ナヴァルよりも白紙に近い。映画から頂いたキーワードと、ナヴァルの設定をヒントにして、性格や背景を詰めていく。


「リズ(ヒトのすがた)」を作る

前提その1「人外×少女にしよう!」から、とりあえず少女にした。己の性癖に正直に。
アンジニティの住人なので、やはり世界を追放されている。まだ幼いのに。いったい何があったんだろう。

ところで、ほかの参加者を見ていると…学生キャラがとても多い。少女キャラだと彼らと同年代になる。じゃあ、イバラシティに生まれてさえいれば、彼らのようにただの学生になれたかもしれないキャラはどうだろう。学生たちと相対したとき面白くなるかも。

イバラシティでなら追放されずに済んだキャラ。つまり、現代日本的な価値観と、異能者だらけの環境では、ありえない追放理由だ。ここに、映画から頂いたキーワード「皆既日食」を組み合わせてみる。

生まれたのが皆既日食の時刻で、異能を持っている。

イバラシティでなら、何の変哲もない子どもだ。けれど、もう1つ映画から頂いたキーワード「宗教と聖堂」も組み込んでみる…と。

故郷は「敬虔な太陽信仰の国」。育った場所はその聖堂。

迫害されそう。
では、少女の異能とは何か。この少女は、凶悪な捕食者ナヴァルと一緒にいる。なぜか自分は殺されずに。ということは…

持って生まれた異能は「影の獣を従える力」。
この獣は、皆既日食の影から生まれ、土地を蝕む存在だ。

もっと迫害されそう。追放されるに十分だ。決定!
凶暴なナヴァルの制御権をリズが握ったことで、ほかの参加者との無用な衝突も回避しやすくなった。侵略戦争の設定だからって、むやみやたらにほかのキャラを襲っていいわけではないので。

さて。こんな背景で育ったなら、心に傷を抱えているだろう。性格に難がありそうだ。
ここで、イバラシティの戦闘システムを思い起こす。敵対設定の対人戦。普通なら敬遠されるはずの、対戦相手を挑発したり罵倒したりする行為が、むしろゲームの演出になる(慎重にやる必要はあるが!!!!)。
これに乗じて、積極的に敵対の演出をしてみたい。性格最悪で悪態をつく少女にしよう。

というわけで、リズの設定はこんな感じに。

故郷の世界は、敬虔な太陽信仰の国。
皆既日食の時刻に生まれ、影の獣を操る異能を持っている。
出生と異能を理由に故郷を追放された。
性格や思想が歪んでおり、他者に敵対的。
獣と共に、積極的に侵略に臨む。


「リズ(けもののすがた)」を作る

イバラシティにいそうな範疇で、動物の種類から決める。
人間の男と一緒にいるので、飼われている動物だ。正体は性格最悪の迫害された少女なので、仮の姿は人懐っこく誰からも愛される動物にしたい。ギャップがある方が出オチが強くなる。
現実の日本を参考に、飼育できそうな動物をつらつらと思い浮かべた。

犬、猫
メジャーなペット。その分派閥や好悪もあり、実際「誰からも愛される」わけではない。私は猫派。あとメジャーすぎて意外性がない。
小鳥
「言葉を覚える」のでなし。賢い種はある程度人間と会話が成り立つ。

ほぼ懐かない。水槽の中にいるだけになる。
虫や爬虫類など
人によって好き嫌いが激しい。
ハムスターなどの小型哺乳類
犬猫と比べるとややマイナー。その分派閥がなく、受け入れやすいか?
人を傷つける心配が少なく、交流の機会があれば触れ合いもできる。
ゲーム期間中に死んでしまうと困るので、寿命の短さがネック。

小型哺乳類がよさそうだ。いろいろ種類はあるけど、キャラ名が「リズ」なのでリスとか(安直)…
GMと被ってる!!リスの仲間の別種にするか…と考えていて、モモンガ(※ネズミ目リス科)に当たった。

かわいい!小さい!現実の日本にいる!寿命が5年くらいある!!意外性もあるし面白くなりそう!!
さらに、かつては夜道で人を襲う妖怪だと考えられていたらしい。侵略者の隠れ蓑には似合っている。
平たいフォルムはちょっとエイに似ている。ナヴァルとのつながりも作れそうだ。

おあつらえ向き過ぎる。
もうモモンガしかなくないか?


…と思ったが、モモンガについて調べているうちに問題が出てきた。現実の日本では、基本的にペットとして飼育できない。詳細は長いので省くけれど、野生動物を保護する種々の法律に引っかかる(これとかこれとか)。

でも、そんな生き物でも飼育されるケースがあったはず…。

傷病鳥獣の終生飼養。
怪我や病気で人間に保護され、一命は取り留めたものの、自然には戻れなくなってしまったパターンだ。ごくごく少数ではあるけど、公的な許可のもとで一般人が面倒を見ることがある。
イバラシティの元野生モモンガで、人間に保護されたことにしよう。現代日本風の世界ならあり得る設定だし、人懐っこい性格にも説明が付く。交流や日記のネタにもしやすい。
モモンガ、決定!

最後に、「このモモンガが少女だ!」とすぐわかる仕掛けを作る。名前と容姿の共通項だ。

1つ目に、名前。
モモンガとしての名前を、「リズ」と似た響きにする。保護されたときリスと間違われていて(初案の名残り)、みんな「りっちゃん」って呼ぶから「りっちゃん」になっちゃったことにするか。

2つ目に、容姿。
モモンガは首輪や服を付けられないので、体毛と瞳の色を揃えたい。
人間とモモンガで、同じ配色でも違和感がないのは、アルビノ(白)かメラニズム(黒)。
アルビノの生き物は太陽光に弱く、野生では生存が難しいといわれる。「太陽信仰の国で迫害された少女」の設定と、「野生復帰できなくなったモモンガ」の設定を、両方補強できそうだ。アルビノカラーに決定。


仮の姿がモモンガだった人、完成!!
頭をひねりまくってたらなんか妙な位置に着地したな…。


βテスト版の結果を反映する

設定を作りながら、テスト参加で動かしてみる。いくつか不都合が出てきた。本稼働も続投する…かどうかは、本稼働での2陣営の人数比次第だけど。ともあれ、修正だけしておくことに。

嘘です。全然間に合ってなかった
主な修正ポイントはこんな感じ。

■リズが侵略する動機
テスト時の決闘で、リズに侵略を諫める台詞を頂くことがあった。ありがとうございます!(嬉しい)
テスト時は侵略の動機があやふや。このままでは、諫められるとたじろいでしまう。全力で侵略する悪人にしたいので、強固な動機を与えたい…アンジニティを脱出できないと死ぬとか?
よって本稼働では、「ゲーム開始時に既に瀕死」にしてみた。死、お手軽に人を追い詰められるので使いがち。死ぬかモモンガになるかもしれないかの二択を迫られる人になったけど…面白いからOK!

■リズとナバリの記憶管理
ハザマではリズが、イバラシティではナバリが主導権を握る。両者の間で記憶を共有した方が、展開を進めやすい。本稼働から、記憶が共有されるように設定を変えている。
というか、記憶共有がないと、そもそもリズはナバリがナヴァルであることにさえ気づけない。籠のモモンガだから…。

■ナヴァルのキャラデザ
お腹側に目があるのに地面を這って移動している。前見えてないんじゃない?(キャラデザしたときに気付け)
モデルのエイは本来背中に目があるので、背中にも目を付けて解決した。異形キャラだからどんな姿になってもOKだ。異形さも増したと思う。
目のモチーフとして、トルコのガラス工芸「ナザールボンジュウ」を入れてみた。本稼働前にたまたま買っていたので。

■登録キャラ名
テスト時は適当に「リズとナヴァル」で登録していた。
両方の姿を表せるように、本稼働から「一人と一匹」にした。本稼働、ときどきRP内で「一人と一匹」と表現してくださる方がいてとても嬉しい。


設定画を描く

最後に、外見の話。
プロフ絵やカットインを描くために、具体的な色や服装を決める。自分でもキャラデザを忘れることがあるので、外見をまとめた設定画を作る(そんな奴私だけかもしれないが…)。

繰り返し描くことを想定し、自分が描きやすいキャラデザにする。また今回は、設定ゆえのポイントが2つあった。変身がわかりやすいことと、2人を1枚の絵に納めたとき映えること。

■アンジニティの姿
リズの服装は、獣使いから連想して騎手や鷹匠を参考に。動物になるので獣耳フード、くせ毛のウルフカット。黒いゲーム背景の中で、黒いナヴァルと並んでも輪郭がわかるよう、明るい金のラインを入れてみる(金環日食から)。
ナヴァルは人間を襲えるサイズに(この絵は少し小さく描いている)。黒赤カラーは敵モンスターの王道。ステンドグラスっぽく、多少明るい色も入れる。

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■イバラシティの姿
ナバリの服装は、職人系の職業だとわかりやすいものに。カラーリングは正体とほぼ同じ。肌の色も暗め。黒い地から赤いパーツが飛び出すようにする。リズに金色のラインを入れたので、ナバリにも同じ色を使ってみた(耳飾り)。モモンガはモモンガ。

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これで完成!!


おわりに:本稼働が走り出してから

本稼働第1回、一斉にアンジニティ住人の正体があらわになるの最高でしたね。

ところで…

Q.テストから続投だと、本稼働じゃ「出オチ」は機能しなくない?
A.そうなんだよね。

「一人と一匹」も一応、周囲に倣って第1回まで正体を伏せていた。しかし、テストから続投なので、一部知り合いの参加者にはもう設定がバレている。出オチは微妙に機能していない。
それは仕方ないとして、ここからどう面白くするか。

見た人が立場の逆転に気づいてくれた瞬間が最大風速だ。そのあとは立場の逆転をネタに話を進め、面白さが自分のキャラだけで完結するようにする。見た人がちょっとでも「え?」と思ってくれたら、それで十分。

立場の逆転が主軸のネタで、最後まで勝負しようと思っていた。死ぬかモモンガになるか二択を迫るとか。

いざ本稼働が始まってみると、思っていたよりも遥かに広く深く、交流の機会を頂いた。結果、日記で展開する物語にも、交流を描き込めるようになった。ありがたすぎる…!
最初が最大風速のキャラであることは変わらない。ただ、せめて、そのあとも風が吹き続けるようにはしたいと思う。

目下の目標は、どうにかして最終更新まで絵日記を描き切ること…できるのか!?頑張ります。


余談:キャラ作成のスタイル

ベースを決め、連想ゲームをして、要素をどんどん足していく。私の場合、たいていそんな風にキャラを作る。設定が先で、容姿が後のことがほとんどだ。
いわゆる空想科学みたいな、フィクションへの裏打ちが好きなので、ガチガチに情報で補強しがち。

こういうスタイルの良いところはたぶん、設定や容姿に説得力を持たせやすいこと。悪いところは、ファンタジー感の強いキャラや突飛なデザインを作れないこと。
良い意味でふわふわした、ファンタジーみの強いキャラも作りたいな~とは思いつつ、キャラ作成にも得手不得手があるのは仕方ないよな…。

あと、さすがに毎回こんなややこしいキャラ作成をしているわけではない。今回は4キャラ分になったせいだ。
「見てくれた人をびっくりさせよう」と考えたことが、このキャラが生まれた根本かなと思う。


以上!!長い!!

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