190630

朝の大通公園をヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『Sunday Morning』を聴きながら散歩して完璧な一日の幕開けの筈だったのに、惨憺たる思いで自宅に着いた。皮肉にも前述の曲から始まるファーストアルバムの構成が思い出される。気だるく甘い歌声で誘い込み、最後に行き着くところは疾走するノイズ協奏曲『Europian Son』である。世界で一番影響力を持ったとも言われるロック・アルバム。その完全再現。光栄だ畜生。飛行機が離陸態勢に入った直後、眼球の奥側から圧迫されるようなストレスと激しい頭痛を感じて、涙が出る、鼻腔が詰まる、焦りで発汗する、いよいよ死ぬか最低でも失明するんじゃないか、という恐怖に駆られて隣席の知らない方に「どうしましょう…」と話し掛けてしまう。ここで俺の目玉が飛び出して鼻血を噴出したら、隣の人も堪ったものじゃないだろうな、などと考える。目玉が飛び出ないよう、両手で顔を覆っているうちに着陸。まだ痛む頭で殺気立ちながらスーツケースを引き摺り帰った。少しだけ冷静になって、何故あんなに恐怖したのか振り返ると、先日『蟲師』を読み直したばかりだから目玉の飛び出る描写が鮮明に残っていたのだろう。それにしても、人間いつ死ぬか分からない。だから躊躇していたルー・リードの詩集も、明日生きているうちに買ってしまおう。破算よりも恐ろしいことは遺産ではないか。肉体が無くなっても、意志なら錆び付きも燃え尽きもせず燃え移せるのではないか。

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