190424

大事な人と長電話、みたいな憩いのひとときを経験してみたい。僕は電話がニガテだ。お互いの表情が見えない不安感の中で、即時的に言葉をつながなければならないプレッシャー。回線をとおした沈黙の重さ。に、逃げ出したい! 映画『南極料理人』で、若い観測隊員が遠くはなれた日本の恋人と交わす不毛な電話のシーンを見ると、胸が締め付けられる。対面での会話や、手紙(メール)における滑稽な失敗は笑いに転化できるが、電話のなかの滑稽さがなぜか悲痛に感じるのは、僕だけだろうか?

でも間違いなく、世界中のはなればなれたちを繋ぐ無数の電話の中には、生涯忘れないような劇的瞬間も生まれている筈であって、ニガテを避けてて死ぬまでそれに立ち会えないのは少し寂しい。この文章は危うく「僕は電話がニガテだ。」で始まるところだったが、こうして手を加えたことで自分の寂しさを固着化させずに済み、ほっとしている。

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