190523

マームとジプシー『CITY』を観劇した。E列だから前から5番目だと思っていたら最前列で、座ると目線がほぼステージの床面だ。ちょっと見づらかった。

東京という都市を舞台に、女性が襲われる事件の光景が"みえる"特殊能力をもった「ぼく/おれ」が、協力者たちと共に、都市に潜む悪と闘う・・・予告通り、ヒーローを題材に描いた作品。これまで少なからず見てきたマームの作品群とは結構毛色が違って、かなりエンターテイメントというか、超能力バトル展開や、兄を「おにいちゃん」と呼ぶタイプの妹キャラのせいで、つい西尾維新の延長に感じてしまうほどだった。題材が題材なので、俳優の演技も濃いめの味付けをされており、それがハマっていた。

何よりも演出の個性が前面に出ていた。第一に、仕切り板が目まぐるしく動き回ることで空間を切り分け、複雑かつ多層的な時間レイヤーの表現を可能にした。また、俳優や小道具の導線を仕切り板によって巧く隠し、視覚的に洗練された印象を与えた。第二に、光を当てる/投影する演出が全編を通して活用されていた。先述の仕切り板に投影される映像や、蓄光素材の暗闇で模様を発色する衣裳など。おそらくは作品内のキーワードである「光」と「影」に絡めたプランだろう。「ヒーロー/悪」=「光/影」という単純な構図でなく、ヒーローにも悪にも光と影のグラデーションが存在する、という描き方だった。

完成度が高く、役者の個性も活きていて見応えのある舞台だったけれど、個人的に受け取れるものは少なかった。役それぞれの立体感が不十分に思われたし(「コレクター」は良かった)、音楽のセンスが今回噛み合わなかったような。比較するのもおかしいが、ぶっちゃけ『さらざんまい』の方が面白い。いつもならマームはもっと、心を抉るようなフレーズを完璧なフォームで打ち込んでくるはず。まあ、テーマが都会だからドライだったのかもしれないが。しかしそれでも、「ぼく/おれ」と「いもうと」の間のリフレインにはグッとくるものがあった。

与野本町駅前の渋いレンタルショップにて、J-ROCK(死語)の投げ売りCDを物色。4枚買って324円。レジの人1枚打ち忘れませんでしたか?

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