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電車ごっこは「スィー」?~ロングレール化のお話し~(前編)

A君    :この前甥っ子と電車ごっこしたんだけど、最近の子は「ガタンゴ
         トン」じゃなくて「スィー」っていうんだね。
オレンジ:それはね、レールの継目が無くなってきているからなんだ!
A君         :継目・・・?

電車ごっこも、時代によって様変わりするようです。今回は、電車ごっこの変化に大きく関わる「ロングレール化」について、前後編の2回で紹介します。

■「ガタンゴトン」は死語になりつつある

異形継ぎ目板

皆さん、電車に乗った時にどんな音がするか聞いてみてください。周りの話声やモーター音以外、案外何も聞こえないんじゃないでしょうか。

実は最近、鉄道会社は線路にある工夫をしており、ガタンゴトンという音が減りつつあります。その大きなポイントは「レールの継ぎ目」です。

■線路は「継ぎはぎ」でできている

レール継目

ガタンゴトンの由来を説明するためには、まずレールの仕組みに触れる必要があります。

長ーく伸びる、1本の線路・・・どこまでも続くその線路、実は継ぎはぎなんです。何本ものレールを順々に繋いで、伸ばしています。

継ぎはぎにする理由はいくつかあります。

①温度変化でレール(鉄)が伸び縮みする余裕を持たせる(熱いと鉄は延びますよね?)
②工事でレールを設置・交換する際に作業しやすい(何kmも続く1本の長いレールだと、持ち運びできません)

日本鉄道会社で用いられるレール1本あたりの標準的な長さは10m、25m、50mです。(10mはめったに見られません)

継ぎはぎを支えているのは「継目板」とその付属部品ですが、耐久性から重さは10kgを超えます!現場では、何枚もリュックに背負って数km歩いて運ぶことも・・・保線作業員は、結構大変なんです。

■継ぎ目は線路の泣き所

レール継目と車輪

さて、このレール継目は実は弱点だらけ!その1つが「騒音の発生」です。

レール継目部には、温度によるレールの伸び縮みに対応するため隙間があります。隙間の上を車輪が通る(乗り移る)と、その衝撃で「ガタン!」と大きな音がして車両が揺れます。これが、「ガタンゴトン」の音の由来です。

ガタンゴトーンと口ずさむにはいいのですが、線路沿いに住んでいる人にとってはどうでしょう?

「うるさくて仕方ない!」「テレビの音は聞こえないし夜も眠れない!」

と、苦情が多く寄せられるのです。

また、乗っている人にとっても、継目でガタン!ゴトン!と揺れるのはあまり気持ちのいいものではありません。

■継目を無くす「ロングレール化」で、騒音を解消

レール継目3

騒音の原因は、継目部のすき間だと分かっています。すなわち、隙間が無くなれば騒音はいくらか低減する、ということです。

そこで、鉄道会社では継目部の溶接により隙間の除去に取り組んでいます。

レールは主に鉄でできているので、溶接技術により繋ぎ合わせることができるのですね。これを「ロングレール化」と言います。

きれいに仕上がった溶接の場所では、列車が走っても何も感じません。これが、A君の甥っ子が「スィー」と言っていた所以なのですね。

ロングレール化によりレール継目を原因とした騒音や車両の揺れは低減しつつあり、沿線住民や乗客の皆さんにとって快適な環境が生まれています。しかし、同時に「ガタンゴトン」も死語になりつつあるということです。

■継目はなくなったが、課題や問題はまだ山積み

騒音問題が解消した一方で、このロングレール化が抱える問題や乗り越えるべき課題がたくさんあります。後編では、背景を含めもう少し専門的なところまで踏み込もうと思います。

参考文献等
・新版軌道材料編集委員会(2011)『新版 軌道材料』鉄道現業社.
・日本保線技術 保線略図集.
https://www.kk-nsg.co.jp/download/ (2020年8月10日最終アクセス)




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