龍岩寺 三尊仏

 大分県宇佐市院内町にある曹洞宗のお寺です。拝観をお願いすると、ご親切にも私一人の為に御住職のお姉様が、お堂を開ける鍵を持って急な山道を10分以上一緒に登って下さいました。お話を伺いながら石の階段を登ると、次第に汗が出てきました。やがて、切り立った崖のえぐれたくぼみにへばりつくように作られた懸造の礼拝堂が見えてきました。そのお堂の足下には“きざはし”と呼ばれる大変珍しい昔の階段がありました。お話では今は使われてはいないとのことでした。


 礼拝堂の中には三体の仏様がお祀りされていました。中尊が阿弥陀如来様、両脇侍が不動明王様と薬師如来様で、高さが各々3メートル程ある、彩色の無い白木の仏様です。礼拝堂の屋根は仏様の上には届いていないので、すぐ上は岩が覆いかぶさる様に迫っています。しかし、屋根が無いことで仏様のおられる内陣だけには光が入るので暗い格子戸の手前から見るとまるで仏様にスポットライトが当たっている様に見えました。
 岩を背にして座しておられる三体の仏様を拝しながら、この仏様を彫られた仏師は、もしかしたらここの岩に直接仏様を彫りたかったのかな、という気がしました。しかし、何かの理由でそれが叶わなかったので、その仏師は代わりに木でこの三体の仏様を刻み、ここにお祀りしたのかなと思いました。だからこの三体の仏様は他のどの場所でもなく、この狭い礼拝堂に膝を突き合わせる様に並び、崖にへばりつく様に安置されているのだなと、一人で納得してしまいました。
 優しい顔の仏様の近くにいると本当に心がゆったりとして、幸せな気分になりました。しばらくして本堂に戻り、春のうららかな陽射しの縁側で、いろいろなお話を伺いました。側では何匹ものねこちゃんが虫を追いかけていました。