温泉寺 十一面観音立像

 秘仏の開帳は通常1日が多く、長くてもせいぜいひと月です。事実、城崎温泉寺の十一面観音様も例年ですと4月23日24日の2日間のみ、お厨子の扉が開かれるだけで、さらに、その時拝見出来るのは上半身だけです。ですが、今行なわれている33年ごとの開帳では、この仏様は丸3年間、お厨子から完全に外に出ておられるので、ほぼ全身を拝観することができます。
 この仏様は、手先などを除きほぼ全身にノミ跡が見らますが、東日本の仏様に時折見られるいわゆる鉈彫(なたぼり)とは違い、何かの理由でわざと仕上げをせずに途中で作り終えた仏様なのだそうです。仏様の後ろや横に、特に荒々しいノミ跡が残っていて、そのノミ跡がとても印象に残りました。
 2メートル以上もある堂々とした仏様です。厳しいというのとも違う、深く何かの想いの中に入っておられる表情をされています。私には、正面よりも斜めか横から拝する時、この仏様らしさが際立って見える気がしました。