宇宙コンビニδ

地方都市の外れ、午前3時コンビニの店員は思う。
実は外の暗闇は真空で、この施設は地球を照らす側ではないかと。夜に空に瞬く星達は、無数のコンビニの光なのではないかと。
スペースシップ、24Hマート。今宵も異星からの来訪者がぽつぽつとやってくる。

その日のフライトは今まで経験したフライトの中で最も過酷なものとなった。
前々日に摂氏40度もの体温上昇を記録。なんとかフライト当日に37度後半までは下げた、という状態でのフライトだった。

地球を飛び立ったその時から既に体調は異変を露わにしており、手の震え声枯れ謎の発汗を繰り返していた。
フライトから10分経った頃には栄養補給飲料を飲まないといけない状態だった。

こんな日に限って異星人の来訪が立て続けに起こる。しかもほとんどの異星人がアセトアルデヒドの香りを体から漂わせており、尚更私の体調の悪さを加速させる。

1人の異星人が話しかけてきた。この異星人は良好な関係を保っており、会話も何度もしている異星人だ。しかし今日は個人的には穏やかではない。
「ダーツ(そのような遊戯があるらしい)行ってきたんだよね」
「…そう、です、か…呑んでるんですね」
「まあそりゃバーだし呑むでしょ」
体調が悪いからかマスク越しでも伝わるアセトアルデヒドに私はむせそうになる。
「体調、悪そうだね、これあげるよ」
なんとその異星人は水を差し入れてきたのだ。
まさにオアシス。枯れに枯れた声で私は礼を告げお辞儀をした。
異星人にだって、良い人はいるのだ。
私は早速その水をごくごくと飲み、体力回復を図った。

その異星人が真空に消えてからしばらくの間、急に異星人の来訪が途絶える。
私は額に脂汗を浮かべながら考えてしまう。
私もこの真空に浮かんでしまおうか、と。しかしそうなるとこの船は沈みかねない。早く終われ早く終われと願いながら清掃を進める。

夢を見た。
地球の青空、大気圏を飛び回る私。
笑顔で街を見下ろし、地球人達に手を振る。
雲が作った地平線から太陽が私に微笑みかける。
しかし途端に高度がぐんぐん下がり、地面にぶつかる。

「もう後やっとくから帰ってええで」
ぶつかる直前で声がする。船長だ。気づけばもう地球の地面が見えており、フライトは後半も後半になっていたようだ。
思い立ったが吉日、善は急げ。
私は船長に礼を告げ、経口補水液を口にしながら地球へ帰還する。

すべてがあの、異星人のように良好な関係を築けたらフライトもとても楽なものになるだろう。
ここでぼんやりした頭で気づく。
水を船室に置いてきたままだった。
取りに戻る体力もなく、私はとぼとぼと自室に帰還したのであった。
ありがとう、という感謝の念を抱きながら。

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