宇宙コンビニε

地方都市の外れ、午前3時コンビニの店員は思う。
実は外の暗闇は真空で、この施設は地球を照らす側ではないかと。
夜に空に瞬く星達は、無数のコンビニの光なのではないかと。
スペースシップ、24Hマート。
今宵も異星からの来訪者がぽつぽつとやってくる。

この宇宙船も太陽へと周期的に近づく時期がやってきた。地球で言う、日本語で表記するところの『夏』である。
その、夏には異星人の来訪だけではない、招かれざる客がもう1つある。

大群で襲ってくる異星怪物の集団、羽蟻である。
宇宙船の煌びやかな外装に集る、という表現では生温いほどの量と圧を持って奴らは船を襲う。

船内で作業をしていると、船窓に蠢く影が見える。
「お、異星人かな?」と目をやるのだが、どうもおかしい。確かに小柄な異星人ほどの黒い影なのだが動きが異質でそれこそ怪物。
そうそれが奴ら、羽蟻の正体なのだ。 恐ろしいほどの数が船窓に張り付きそれらが人型となってこちらを威嚇する。奴らのよくやる手段だ。

幸い、その時には船内に異星人はいなかった。つまり全力を持ってクリーチャーである奴らと戦闘することができる。
しかし、船内にある食料のことを考えると薬剤のような武器は使用できない。
なにか一網打尽にできる武器はないだろうか。私は考える。

そうか、船窓の側には水を発射するためのホースがある。それを使って窓に吹き付ければそれなりのダメージを与えることができるだろう。
すぐさま蛇口の鍵を使い、ホースからの発射攻撃の準備を整えた。

「3……2………1、ファイヤ!」
ホースから勢いよく水でできたレーザービームが船窓に蠢く怪物達に直撃する。
しかし、これで黙って帰る奴らではない。
驚きなのか、怒りなのか、何十匹かという量の奴らが私の方へ飛行してくる。
素直に言おう。私はとても驚いた。この虚空である宇宙空間で私の声はとても目立ったことだろう。
「うぉわぉ!」とよくわからない声を上げながらも、攻撃の手は緩めない。ここで屈してしまったらそれこそ負けなのだ。

どれくらいの間、戦闘をしていたのだろうか。窓に張り付く怪物達はほぼ姿をなくし、ふと足元に目をやると奴らが文字通り虫の息で這いつくばっている。ざまあみろだ。勝った。そう思った。
そう思い、船内に戻る。

船内の床にはまだ奴らがわんさかと這いつくばっていた。元気よく跳ね回る者、さかさかと走る者、ゆっくりとくつろいでいる者。
数だ、数の暴力なのだ。何をしても今夜のフライトでこいつらを全滅することはできない。

それから地球に降り立つまで、私は地道にバキューム装置で一匹一匹吸い込み駆除していた。
そのせいで全く業務が進まなく、様々なものを犠牲にした。

地球の地に降り立った私は決意する。次の襲来では負けない、お前らなんて皆殺しにしてやる、と。
自分の基地に戻り、宇宙服を脱ぐ。
宇宙服に付いていた怪物数匹が私をあざ笑うかのように基地内を飛び回る。
やはり奴らには到底敵わないのか。
数匹の奴らを手っ取り早く、素手で応戦し私は敵意を燃やしながら眠りについた。
奴らも燃やせればいいのに、と。

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