宇宙コンビニ

地方都市の外れ、午前3時コンビニの店員は思う。

実は外の暗闇は真空で、この施設は地球を照らす側ではないかと。
夜に空に瞬く星達は、無数のコンビニの光なのではないかと。

スペースシップ、24Hマート。
今宵も異星からの来訪者がぽつぽつとやってくる。

「こんなところで働いていないで、きちんとしたところで働け」
赤ら顔の異星人は焦点の定まらない目で私を見つめ、そう豪語する。

別段、この船の居心地が悪いと思っているわけではない。
居住報酬が低いのは確かに難点だが、船長との仲は良好だし、他の船員との仲も悪くはない。毎日の業務も慣れたもので悩まされるところはない。

果たしてこの異星人の言う「きちんとしたところ」とはなんなのだろうか。
私は咄嗟に脳内に表を作る。
船長…◯
船員…◯
業務…◯
報酬…△
この4つが全て丸になるところで働けばよいということであろう。
きっと宇宙を漂ってるうちはそんなの見つけられない。
将来、来月か来年かはたまたずっと先かわからないが、きっと私もどこかの星へ永住を決めることになるであろう。
それを見定めるまでこの船にいると決めたのだ。

赤ら顔の異星人は何か私の言葉を待っているようだった。
真顔と微笑みの間ぐらいの顔で「そうですね。きっとその方がいいです」と言葉をひねり出した。

赤ら顔の異星人は続けて言う。
言うのだが、その星の言葉であろうか、私の耳には届いても脳には届かない。
その不可思議な状況に思わず笑みをこぼしてしまう。
「はよ、なんとかするんやで」
なにか満足したようなのか、スチール缶のプルタブを起こし口に運ぼうとする。

「すみません、お客様。当船は飲食禁止となっております」
私がそう言うと、スチール缶を握りしめ私に一瞥して早足で真空へと体を投げ出した。扉を抜けると、スッと闇に飲み込まれ彼の体は見えなくなった。

もう、午前4時過ぎともなると外は明るくなる季節である。
スペースシップ、24Hマート。
ただいま地球に帰還。
次の宇宙旅行はまた来週となる。

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