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1-2 concrete epic

「わたしたちはいま!インドネシアはサヌール海岸に来ていまーす!!風が気持ちいい〜!」と世界の亀山モデルのブラウン管のなかで化粧のノリが悪くなってきた三十路のクソアマ共が巨大なコンクリート製の三角木馬に跨りながら悲鳴をあげ始めたところでおまえはこの何万回も繰り返し見てきたAVに嫌気がさして外に出た外に出た理由はもう一つあって昨晩シュールストレミングの汁を絨毯の上にこぼしてしまったので悪臭漂う四畳半の部屋にいるのがもう限界に達したのだおまえは五年ぶりに外の新鮮な空気を吸いタバコに火をつけると「キダムが来ます!」と何やら足元から声が聴こえるがおまえは久しぶりのニコチンとタールでヤニクラを起こし声の主を踏み潰してしまったそしてそのままふらついた足取りで徳川埋蔵金を探知する装置の開発に着手するため上北沢にある現在バツイチ子持ちで工場の事務をしている元カノのアパートへ駆けて行くのだった懐かしい道中の道すがらおまえは過去と未来そして現在の関係について考える「電車ってのは最早タイムマシーンだ況んや新幹線をやそしてコンビニの脇でアイスキャンデーを舐めているツインテールのガキこれには必ず意味がある何故ならおれは運命を信じていないが運命論は信じているのだツインテールは頭に作られたY字路つまり運命の分岐点を意味しているつまり明日の天気は曇りのち晴れだ」そして電車は遅延のため予定より3分遅れて目的地の東村山駅へと到着した「ケバブ的な何かが食べたい」おまえは小腹を満たすために駅前をふらついていると一軒の古びた自転車屋を見つけ興味本位で入ってみる自転車屋てのは大体がアルフレッドジャリの思想に被れパタフィジックなマチズモを信奉している貧弱なインポ野郎共だと相場が決まっているので正義感の強いおまえは近づいてきた自転車屋のオヤジの顔面を思い切り殴りそして優しく語りかけた「小さなスイミーが巨大なマグロを驚かせたようにビジネスの世界でも皆が同じ目的を持ちながら情報を共有し緻密に連携することで想像を超える力が生まれます!」おまえのまるで預言者のような風貌と汚れを知らない真っ直ぐな目に自転車のオヤジは殴られた顔の痛みなど忘れ感涙しながら思わず「110」と携帯電話に打ち込んだがすでにおまえの拳はオヤジの心臓を正確に貫いていたおまえは事切れたオヤジをゆっくりと寝かせ口元に優しくキスしたすると腐った川魚のような口臭がたっぷりと鼻腔に広がったので興奮が抑えきれなくなりはち切れんばかりに勃起した性器をオヤジの口に突っ込みまだ温かみの残っている口腔へ思い切り射精した射精後オキシトシンが脳から溢れ出て体中を巡り自分が社会の勝ち組であることを確信したこの確信を小卒で学の無い友人どもへ周知するため死姦し終えた写真をすぐさまフェイスブックに投稿したあと慣れた手つきでオヤジの禿げ上がった頭皮を剥ぎ取りコンビニで買った白米を包み込むことで自家製お稲荷をこしらえたおまえは悪を憎み人は憎まない慈悲を持っておりその性格は両親譲りのものである父はおまえが10歳のときソープ嬢がプレイ中に自分の粗チンをなじってきたため逆上し店内で出刃庖丁を振り回し止めようとした店員2名を刺殺した直後床にこぼれたローションで勢いよく転倒しそのまま頓死してしまうほど正義感の強い人間だった葬式で棺桶を開けると乾いたローションで粉を吹いている父の顔を見て母は大爆笑しその衝撃でギックリ腰となったためその後母は父親の呪いに違いないと心霊主義に目覚め悲しみに暮れた母は深刻な腰痛と父の残した借金に苦しんだが深夜の公園でマイケルジャクソンの声マネの練習中に四葉のクローバーを見つけたことをきっかけに立ち直り当時の赤羽周辺でゴト師集団をまとめ上げ財を成し女手一つで息子16人を育て上げたおまえは母親が58歳の頃産んだ末っ子だったから滅法可愛がられて育った酔うたびに母親は子供のおまえを湯船に沈めながら人生がいかにチャンスに溢れているか教えてくれた母が伝えたかったことが精通を経験した今のおまえにはよく分かる見えないミソジニーが蔓延しているのではなく見ようとしていないだけであるように先月麻布の高級ジンギスカン屋で出されたフランス産のマトンがどう見ても羊のクソ汁を染み込ませた脱脂綿であるのに客は全員気付かず食べていたように世界はなるべく親から譲り受けた色眼鏡をして生きることを強要してくるってことだとおまえは昨日多摩動物公園のニホンザルが憲法9条改正に反対して集団氷バケツチャレンジをした話を延々と議論しているお昼の情報番組にウンザリし1ヶ月前に死んでしまったペットのウサギをテレビ画面にぶん投げたこれで静かになった「よっこらしょっ」とソファに体を預けると肛門に違和感がある「あぁ昨晩はワセリンと浣腸液が無かったから変わりに髭剃りジェルを使ったんだっけどうりで直腸がヒンヤリしてるわけだ」ポッカリと伸びきった肛門に手をあてがうとまだヌメリが残ってるから手でこそいで顔に近づける「こりゃあまだ溢れてくるな」精液と髭剃りジェルが混ざりあった様子はまるで宇宙を外から見ているような壮大感を与えてくれるそしておまえは突然笑いが止まらなくなった明日が義理の両親の結婚50周年だと気づいたのだ「さぁ明日も忙しくなるぞ」

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