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この指が届かない

16歳で俺の前に現れた。
可愛い女の子。
その髪に触りたい。
その手に触れたい。
その温もりを感じたい。
それなのに、どうしてだ!
この指が震えて動かない。

26歳で俺の耳に聞こえてきた。
可愛い声した女の子。
10年経っても変わらない。
それなのにどうしてだ!
ラジオの向こうに消えていった。
インターネットの写真しか見られない。
もう女の子にはこの指が届かない。

46歳で俺は雪国に向かった。
とっても綺麗な女性に逢いに。
30年経っても変わらない。
それなのに!
既に旦那と暮らしてた。
3人子供が生まれてた。
もう他人のモノだから。
この指が届く事はもう無い。

おかしい、どうしてだ!
出会ったあの時から、夢では指が届いてた。
サラサラした髪型。
小さく白く綺麗な手。
囁く息の温もりも、全て俺のモノだった。

俺の手は、夢から覚めたら凍りつく。
500キロ近く離れたその場所に、
もうこの指は届かない。


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