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【大臣ノールと王の麗しき終末世界】 逆噴射小説大賞2024

「勇者殿到着!開門!」
 王の間までを大臣ノールに案内された。どこかいけすかないケチな野郎だ。太陽を遮られた冷たい通路の先の扉がゆっくりと開くと、甲冑の兵士たちが見守る中、王がベッドに横たわっていた。

「よく来た勇者エネマよ。とうとう大魔王復活の時が近づいているようじゃ。魔物の襲撃でいくつかの町がすでに壊滅状態だと聞く。そこでじゃ。城に留まり兵を指揮してもらいたい」
 大臣が鋭い目で俺を見る。
「まずは軍資金、剣に鎧が必要でございます」
「そんな金などない!」
 ノールがたっぷりと蓄えた腹を響かせて叫ぶ。金がないはずがない。
「御意。しかしどこか体調がすぐれぬようですが」
「うむ。実はな、便が腸の中で固まっておるようで随分と長く便秘を患っておるのじゃ」
 王はゆっくりと上体を起こした。
「そうじゃ。我が国に伝わる伝説の剣の話を思い出したわい」
「敵襲!魔物の群れが迫っています!」
 突如見張番の声と共に鐘が鳴らされた。
「すぐに準備を整える!三分だ!なんとか粘れ!剣はないか!」
 長引く不景気で俺の剣はボロボロの柄しか残っていない。
「う、グアアああ!」
「王!いかがなされました!」
「腹痛じゃ!尋常でない腹痛がこんな時に!ぐぬぬぬぬ」
 柄が怪しく光り出した。
「ついにこの時が!王様!このノールを信じて四つん這いになってください!騎士団長!二人がかりで王の尻を!今は構うな、敵が来るぞ!」
「黒龍が城内侵入!」
 鐘が鳴り続ける。
「勇者よ、その柄を近づけよ!騎士団長!桃尻開門!」
 王の尻と柄が濃褐色の光で繋がる。
「ギギギギ!」
 ノールの血走った両眼が王の尻を凝視する。
「ここが気張りどきです!あっ!便が!硬便が顔を出した!今だ!抜け!勇者よ!」
 ノールが鼓舞すると王の野獣のような声で城壁が震えた。
「勇者、王に宿されし聖剣を抜刀!」
 襲いくる黒龍が聖剣の光で便臭とともに爆ぜ、ノールと王の恍惚とした影が城壁に映った。
 
 

【続く!!】





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