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ダダダイアリー、主に映画。 2020/1/12ー1/20

1月12日
あつぎのえいがかんkikiへ。ラインナップがいつも充実しているので前から気になってはいたが、でも厚木だろと渋っていた。しかし宮崎大祐監督「大和(カリフォルニア)」「TOURISM」をboid樋口泰人が音響調整して、かつトークゲストで2人とも登壇するとなればいよいよ行くしかない。学生の時以来なので距離感掴めず一つ手前の海老名で降りてウロウロするという失態をやらかして本厚木到着。アミューというビルの最上階の9階にあるのだが、エスカレーターは5階までしかなく、後は階段かエレベーターで行くというなかなかの手強い立地。
当日チケット完売してたらどうしようと焦ったが、思い切り空いてた。ホッとするやら残念やら。一本目の「大和」には間に合わなかったので「TOURISM」のみ鑑賞。で、これが本当に凄かった。
映画館の常設設備のポテンシャルを最大限に引き出したパースペクティブな音の立体感。人物たちが目の前で会話してるような近さでありながら背景の音も残らずクッキリと映された距離感で立ちまくっているその奥行き。そして音楽が鳴った時の横への拡がり。爆音映画祭で築き上げたboid樋口マジック炸裂の超絶バージョン。様々な映画館で観て通算5回目の鑑賞だったがブッチギリに凄まじかった。遥々来て良かった。というかもっと早起きして「大和(カリフォルニア)」も観とけば良かった。
「TOURISM」の後に「遊歩者」という短編が併映されたのだがコレがまた整音されていない剥き出しの暴力的な生音で良かった。短編作品「ざわめき」もまた観たくなった。
上映後のアフタートークで知ったのだが、ロケーションの8割は再開発によってもう跡形も無くなっているとの事。あのケバケバしいマーケットも露天の連なりも作品の中でしか観る事が出来ない。映画は時にその意図とは関係なく失われたリアルを保管するメディアともなる。国道沿いになぜショッピングモールが出来たのか、繁華街はどうやって作られたのか。その成り立ちを踏まえて観ると当たり前の景色が特別な風景に変わる。土地の匂いや磁場を閉じ込めた様な映画をもっと観たいと思った。
初めて来た劇場だったがここで爆音映画祭開催したら楽しい事が起きるなぁと思わせてくれる可能性に満ちた場所だなぁなんて事を樋口さんとロビーで話して帰る。

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その後は新宿まで行き、自衛隊中東派遣反対、安倍退陣デモ終了後のDJタイムがアルタ前で行われてたのでしばらく滞留。プラカードを掲げなくても声を上げなくてもとりあえず現場に行って眺めてみるだけでも良いと思う。集まることで可視化させる事が重要。ふらっと覗いてふらっと立ち去るだけでも何もしないよりはマシ。

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そして締めは歌舞伎町の奥の方にあるバーレスククラブの「AfterParty Tokyo」へ。「ブルーシアター」と題し3人のダンサーがブルーをテーマに踊る演目。コンテ、クラシック、演劇と異なる出自のダンサーそれぞれの個性が際立ち楽しめた。

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1月15日
午前中に歯医者へ。久々に麻酔打たれジンジンさせながら渋谷のloft9へ。
中神円監督「ランチボックス」鑑賞。女優中神円の監督・主演作。染料の落ちない手で食べるおにぎり。ささやかで穏やかな日常の切り取り。始まりでも終わりでもない、その間に流れる時間を綴った23分の作品。作業所の裏で一緒に一服してる気分に浸った。
上映後に監督のトーク付き。俳優仲間と同じ映画で共演したいがその機会をいつまでも待ってる位なら自分で作ってしまおうというフットワークの良さが、即興演出や編集に反映されてたな。また作品を作って貰いたい。

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そして急いでル・シネマへ。開催中のオリヴィエ・アサイヤス特集にて「夏時間の庭」鑑賞。苦手意識が強かったアサイヤスを評価するキッカケとなった作品。人生の黄昏と瑞々しい夏の季節。愛すべき生まれて育っていくサークルの具象。久々に観たけど、まるでもう逢えない親戚の叔母さんにあった様な感覚に襲われ、最初から最後まで涙が止まらなかった。こんなにこの作品を愛してたのかと自分でもちょっと引いた。

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 帰宅後、録画してた「いだてん総集編」一気見。一年もかけて観てられないものぐさな私にはもってこいの良いとこ取り。徹底的な個人ファーストに貫かれた反骨の大河。やっぱりクドカンはやってくれる。ダイジェストでも面白さが十分に伝わるし映画にしてもいける。でもやっぱりちゃんと観たくなったので早く再放送して欲しい。

1月18日
BS「映像の世紀プレミアム第15集東京 夢と幻想の1964年」録画鑑賞。当時国民の関心の2%にも満たなかった東京五輪。立ち退きや水不足など問題が目白押しの中、田畑政治らの尽力により大成功した伝説の五輪大会。そしてその後に訪れた必然的な大不況。栄光の歴史として片付けられていた64年の真実が冷静に描かれており、一致団結とかほざき始めた空気に警鐘を鳴らす素晴らしい内容だった。 
そして生憎の雨の中清澄白河の東京都現代美術館にて開催中の「ダムタイプ|アクション+リフレクション展」へ。
なんとなく名前だけは知ってたメディアアーティストグループ。映像、インスタレーション、演劇、ダンス、音楽、建築が一体となりながらそのどれでもない、まさにダムとしか言いようのない提示。初めて観たが面白かった。

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そして清澄白河から神保町まで電車で行き、神保町から歩いてアテネフランセへ。開催されてる「ちば映画祭」のCプログラム杉田協士監督「ひとつの歌」を鑑賞。ポラロイドカメラとバイクと柳下美恵のピアノが導くひとつの歌と沢山の人々。寡黙な語り口でいながら常に動きがあり変化があり、それがじんわりと響いてくる100分でひとつの歌。ゆっくりと沁み渡る感じは「ひかりの歌」と同質。出来たら作品内で映された写真を全部見たかった。
上映後に杉田監督と歌人の東直子を迎えてのトーク付きだったが、監督のトーンやテンポが作品と全く同じなのであっという間にアテネの閉館時間に。また機会があれば見直したい。

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1月19日
KAATへ。山田うん構成・演出「NIPPON ・CHA!CHA!CHA!」観劇。如月小春の原作を演劇版、ダンス版二本連続上演ってどういう事だろうと思ったたら、そのまんまだった。小劇場の演劇にウンザリしてコンテ見始めた私にとっては演劇版は苦痛だった。メタ演劇なのか何なのか知らないが、休憩込みでガッツリ2時間も小芝居見せられたら流石にグッタリする。作品に含まれた批評性も薄れる。しかも振れ幅を堪能するはずのダンス版の印象も平板に見えてしまう逆効果。演劇版の演奏に参加したブラックベルベッツがダンス版では演奏しなかったのも不満。今回は残念だった。

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その後は日比谷まで行ってTOHOシネマズシャンテにて上映中のROHバレエシネマシーズンを鑑賞。抽象バレエ「コンチェルト」、演劇性の高い「エニグマ・ヴァリエーション」と華麗なる群舞の古典バレエ「ライモンダ第3幕」。全て60年代に作られた演目。50年前の演目でも全然有効なバレエの奥深さとROHの底力を見せつけるトリプルビルを堪能。特にケネス・マクミラン振付「コンチェルト」は、色彩と動きの美しさだけが残されたシンプルな演目でヤスミン・ナグディが素晴らしかった。

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シャンテを後にして携帯を確認すると義父が急逝したとの連絡。ここ数年入退院を繰り返していたが、根が頑丈だったしもっと長生きすると思い込んでいたのでびっくり。去年の秋に見舞いに行ったのが最後となった。

1月20日
昼からTOHOシネマズ渋谷へ。
先ずはジェームズ・マンゴールド監督「フォードvsフェラーリ」鑑賞。闘ったのはフェラーリじゃなくて巨大な組織。絶対勝てない巨大なモノにそれでも抗う個人の闘争史。勝者の様な美しき敗者。栄光のケン・マイルズ。本当の勝利を手に入れる為のシェルビーの華麗なる敗北に前のめりが止まらなかった。これは爆音上映か応援上映でまた観たい。

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続いてポン・ジュノ監督「パラサイト 半地下の家族」鑑賞。緻密にしてトゥーマッチ。笑いとサスペンスとアクションとスリルと恐怖。それに差別、格差などの社会問題。それら全てを内包して容赦なき娯楽作品に変換してみせるポンマジックが今回も炸裂。作品を面白くする為の妥協なき挑戦にいつも頭が下がる。

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「パラサイト」鑑賞後はツインピーカーと映画好きが集う渋谷のブラックロッジことcafémonochromeへ。現在「パラサイト」とのコラボ企画実施中で、映画にも印象的に登場するジャージャー麺を再現販売。なのでジャージャー麺セットを注文。しかも今日はデヴィッド・リンチの誕生日なのでウェルカムドリンク付き。毎回そこに居合わせた方と映画話で盛り上がれる素敵な空間なのだが、今日は全員「パラサイト」鑑賞済みなんで皆んなでジャージャー麺を食べながら盛り上がる。しかし意外と初ポン・ジュノの方が多かった。特集上映もあるようなのでこれを機にポンワールドがもっと拡まると良い。とりあえず「殺人の追憶」は激推ししてきた。

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