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小説「武士の半分」



「ほー、武士の半分‥‥ですか‥
先生、武士の一分、ではないのですね」
「何か、不満があるのかね」
「めめ、めっそうもありません!大先生に対してそのような‥‥」
「第一、武士の一分だと盗作じゃないか」
「おっしゃるとおりで・・・
しかし、本格時代劇は、かれこれ二十年振りくらいじゃないですか?」
「うむ、そうなるかな」
「たしか、二十年前の作品は‥‥
武士の‥‥コカンでしたかね。武士のコカン」
「もしかして、君は私を馬鹿にしてるのか?」
「えっ!?ど、どうしてですか?」
「君はいくつかね?」
「はぁ、今年でちょうど四十才になります」
「君、沽券という言葉を知ってるかね」
「コケン?股間じゃなくて、コケン?ですか?」
「君は股間がそんなに好きなのか?」
「いえ、別に好きではないですよ」
「まぁいい、二十年前の作品は、武士の沽券だよ」
「武士のコケン‥‥ですか‥・分かりました。
ところで先生、今回の武士の半分の半分は、一分の半分ということですか?
それとも、一分二分三分‥五分、つまり全体の二分の一ということでか?」
「ほー、たまにはまともな事をいうじゃないか。後者だよ」
「先生に褒めてもらえると恐縮です。
そうですか、武士の五十%という小説なんですね」
「そう言われると、なんか君、小説ではなく統計学みたいじゃないか」
「ごもっとも!失礼しました。武士の半分でしたね。
で、先生、内容はどのような展開で?」
「うむ、そこに書き出しの原稿があるだろ」
「あっ、これですね。少し読ませていただいていいですか?」
「ああ、かまわんよ」
「では、失礼して、


武士の半分‥‥


武士の半分は、老人である。
武士の半分は、貧乏でありんす。
武士の半分は、ケチでっせ。
武士の半分は、意気地なしたい。
武士の‥‥
せ先生、これは‥」
「どうだ、文壇に衝撃を‥‥」
「ただの統計やないかい!」
                            完

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