「悪の花」ネタバレ感想② 好きな場面その1
*この記事は韓国ドラマ「悪の花」についてネタバレしています。未見の方はここから先はお読みにならないことをお勧めします。ブルーレイは2021年12月3日に第1集が発売され、レンタルも開始します。第2集は12月24日発売です。https://www.cinemart.co.jp/dc/k/akunohana/
2022年12月追記: 2022年12月25日よりNetflixで配信が始まります。
【「悪の花」は全16話です。文中の話数はこのオリジナル版に準拠します。もっと細かく分けたりカットした配信や放映を見た方は、是非オリジナルの16話バージョンもご覧ください!】
「悪の花」で好きな場面は数多いが、特に色々考えさせられた中に第8話のヒョンスと姉ヘスの再会がある。
18年ぶりに会った姉と弟。感極まって泣き崩れるヘスを支えるヒョンスは無表情だ。無表情だが冷たくはない。少年時代のヒョンスは、常にこのような表情で、決して笑ったり感情をむき出しにすることがなかったんだろうなと思わせる。「悪の花」で高く評価されたイ・ジュンギの演技。ときには微妙な目の動きだけを使って彼は主人公の内面を表現したが、この場面のヒョンスの表情は、静のスペクトラムの最極端だ。
姉という、唯一自分の過去のすべてを知る人に再会して、ヒョンスは最も自然な自分に戻ったように思える。
が、日が暮れて、姉に妻子の写真を見せるヒョンスは少し微笑んでいる。
家族写真から妻と娘の顔を拡大して話す彼の言葉にはっとする。
「二人は性格もそっくりだ」
「育てながら何度も確認した」
ウナが赤ちゃんの頃、外で働く妻に代わって毎日世話をしながら、ヒョンスは心配していたに違いない。娘は自分の性格を受け継いでいるのではないか。自分と同じように学校や社会に馴染めないのではないか、そうなったら全力で守ろう。彼はそう思っていたのでは。
だからウナが、ジウォンと同じように大いに笑い、怒り、泣く子だと分かったときはさぞ安堵しただろう。
もしヒョンスとジウォンに第二子ができて、自分のように感情表現が下手な子だったら、自らの経験を踏まえて、その子が生きづらくないように導き、サポートするのだろう。ヤキモチを焼くウナちゃんとの板挟みになっておたおたするヒョンスも見てみたい。(笑)
そして思うのだ。ストレートに感情を表すジウォンは、ヒョンスにとっては何を感じているのか分かりやすく、一緒にいるのが楽な最高のパートナーなのだろうと。ジウォンは愛を与えることを惜しまず、渇き切ったヒョンスの心を潤す。ジウォンが怒りや悲しみで一杯いっぱいのとき、ヒョンスは彼女を否定せず静かに受け止める。本当に相性のよい二人なのだ。
再会の場面、義妹と姪の写真を嬉しそうに見ているヘスの表情もとてもよい。弟の幸せを自分のことのように喜んでいるのが分かる。
姉弟がこの日の前に会ったのは18年前。あの納屋を出て、自宅に火をつけるところまで一緒だったのだろうか? 家族のアルバム、記念写真、そんなものを含めてすべて燃やし、何も持たぬまま外界に消えたヒョンス、村に残されたヘス。もう二度と会わない覚悟で。
18年経って、表情が柔らかくなった弟の変化をヘスは見逃さない。素性を隠して逃げる夫と、相手が夫と知らずに追う妻という物語の構図に新たな視点が加わった瞬間、それがこの場面だ。
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