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なぜマスクを高く売ってはいけないのか? ~自由競争至上はプロパガンダ~

コロナウィルスの蔓延が凄まじいですね。感染者は世界中で3万人を超えたようです。その中で、WHOはマスク不足を警告しています。

世界保健機関(WHO)は7日、マスクや手袋などの個人防護用品の不足が深刻になっていると警鐘を鳴らした。

日本経済新聞

こうなってくると、必ず出てくるのが、転売屋さんです。

WHOは個人防護用品の需要は通常時に比べ最大100倍、価格は同20倍になっていると分析した。インターネットではマスクなどが高額出品されているケースも目立つ。

皆さん、これどう思います? 

「この非常事態に許されない、非道な行いだ」

こう言ったら、多分ほとんどの方は、「その通りだ!」と言うと思うんです。でも、これってなんか変じゃないですか? 現在の資本主義の自由競争の価値基準で考えると、これで大儲けした転売屋はチャンスを掴んだ成功者だ、と言うことになります。

つまり、私たちの資本主義社会において彼らは賞賛されるべき存在のはずです。

はて? これはいったい?

では、この矛盾、「なぜ、今マスクを高値で売ってはいけないのか?」の答えをお教えしましょう。

それを「いい」とする自由競争の価値感は、資本主義社会におけるプロパガンダに過ぎないからです。

自由競争至上はプロパガンダ

社会ダーウィン主義は、ゴードン・ゲッコーが「進化の精神」と呼ぶもの以外の何物でもない。人生は闘争であり、そこでは成功する者が敗れ去る者によって足を引っ張られるようなことがあってはならないというわけだ。このイデオロギーはイギリスの政治哲学者ハーバード・スペンサーが世に送り出したもので、スペンサーは一九世紀に自然の法則をビジネスの言語に書き換え、「適者生存」と言う言葉を作った。

『共感の時代へ』 フランス・ドゥ・ヴァール

「マスクを買い占めた者が、マスクがなくて苦しんでいる者に足を引っ張られてはならない」

これが資本主義における基本的は考え方、そして、私たちはこの価値観の下で、巨大な経済活動を維持していることは、確固たる事実です。

それは、現代の私たちの絶対的な価値観だとすら言えます。

しかし、霊長類の社会的知能研究における世界的な権威であるフランス・ドゥ・ヴァール氏。彼によれば、それは一部の資本家のプロパガンダに過ぎないのです。

ジョン・D・ロックフェラーは、それを宗教とまで結び付け、大企業の成長は「自然の法則と神の法則がうまく働いた結果に他ならない」と結論した。 (中略)
 なぜキリスト教徒はなはだしい矛盾に苛まれることなく、そのような無慈悲なイデオロギーを信奉できるのか、私には理解できないが、現に多くの人がそれを受け入れているようだ。

私達はいつかの時、その扇動に従うことを決めたようです。

お金儲けはマスクを高く売ること

三番目にして最後のパラドックスは、経済的自由を強調すると、人間の最善の面と最悪の面が表れることだ。最悪の面は、すでに述べた通り思いやりの不足で、これは少なくとも政府のレベルで見られるが、他方アメリカには良い面もある。

現在の状況を鑑みて、マスクを高く売ることは、人としての思いやりにかけている、これは全人類の99パーセントが理解できる感覚だと言っても過言ではないでしょう。しかし、「社会ダーウィン主義」では、それは否定されるのです。

なぜなら、そもそも、金儲けとは単にマスクを高く売ることと、本質的になんら変わりがないからです。

生物学への依存は、自らを正当化しようとするイデオロギーには必ず見られる見られるものだ。社会ダーウィン主義は、強烈な自立心と個人主義の感覚をごく自然に育んできた移民の国家が渇望する「科学的」裏付けを提供する試みだったのだ。

だからこそ、彼らには「いい訳」が必要であり、そのために生物学が利用されたということでしょう。そして、私たちは「いい訳」を受け入れ、それをとりあえず、「悪いこと」にすることを止めたのです。

しかし、健康被害に苦しんでいる人が世界中にいて、マスクの供給不足に困っているという中では、そんないい訳は、もはや通用しません。

彼らの見解には実体がないというわけではないが、社会を組み立てる理論的根拠を探し求めるものは誰もが、これが真理の半面でしかないことに気が付かなくてはいけない。この見解は、私たちの種が持つきわめて社会的な特筆を大幅に見過ごしている。共感は人間の進化の歴史上、不可欠の要素であり、しかもそれは進化の新しい段階で加わったものではなく、遥か昔からある生得的な能力なのだ。

私たちに本来備わっている共感の能力によって、 資本家たちの嘘はあっさりと露呈したということでしょう。

「いい仕事なんてこの世に存在しない」

故立川談志師匠は、よくそのように語っていました。現代の仕事が金儲けと切れない関係である以上、例えそれが一時的に「悪いこと」ではないとされたにしろ、本質的にいいとされるものではない、と言うことです。

勘違い?のお金持ち

どうも私は、世の中のお金持ちの方々と言うのは、この辺を勘違いなさっているのではないかと感じるのですが、いかがでしょうか。だから、私は基本的に彼らが大嫌いなのです。

アメリカ人はサクセスストーリーを賛美し、誠実に取り組んで成功した人にはけっして悪意を抱いたりしない。物事に意欲的に挑戦する人にとって、これはほんとうに気が楽だ。

ドゥ・ヴァール氏は経済的自由の良い点として、こちらを上げます。私も彼を見習って、お金持ちに不必要な嫉妬を抱かないように心がけたいと思います。しかし、さきほど書いた通り、お金儲けとは本質的に「マスクを高く売ること」であり、その成功者に対し特別な賞賛を送る気にはなれません。

誉め言葉としては、「抜け目ないね」という言葉くらいしか出てきません。

何が言いたいかというと、お金儲けそのものには何の価値もないよ、ということです。その成功者は単に金を集めるのがうまかった人なだけであり、それ以上でもそれ以下でもなく、彼らは別に偉い訳でもなんでもないのです。

お金持ち自身が多少にしろ、これを勘違いしているように私には見受けられるので、少々苦言を呈させていただいたという訳です(笑)。

代替案はこれから考える?

現在の資本主義の価値観を否定するようなことを言うと、お前は共産主義者かとのレッテルをはられることがあるそうです。実際に、ドゥ・ヴァール氏はその憂き目にあったことがあるのだとか。

「世界の富裕層の上位2100人の資産が世界の総人口の6割にあたる46億人分の資産を上回る」――。国際的なNGO(非営利組織)の「オックスファム」が2020年1月20日、ダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)に合わせて発表した最新の報告書で、こんな衝撃的な推計が明らかになった。

世界で広がる経済格差 上位2100人の「富」が46億人分の資産を上回る現実のウラ側(鷲尾香一)

ただどうも、そんな誹りよそに、昨今の世界構造は共産主義化しているように見えます。

日本を含め、多くの国がそうであるように、国家や政権、権力者が富裕層と癒着し、富を貪っている構造があり、それが格差を縮小・解消するための法規制などを妨げている要因となっている。こうした状況を改善しない限り、格差の縮小は難しいのではないだろうか。

ね、これは共産主義そのものでしょう? 極度に発展した資本主義は、結局将来的に共産主義になるのかもしれません。では、そんな中でそれに変わるいい経済、社会システムってどんなものが、考えられるでしょうか。それは、この記事に同意してくださった方とこれから一緒にゆっくり考えていくことにしましょうか。

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