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ラジオ「Fragile Heart 〜こわれもの〜」とLantisと文化放送について

2001年頃、文化放送にて水曜21時半から放送されていた「Fragile Heart Series 〜こわれもの〜」というラジオ番組があった。
同名のOVA作品を宣伝する番組で、メインMCはアンドメイド・亜希Type.1亜希Type.2の2人のキャラクター。
作中のキャラとして出演し、メールを読んだりOVAシリーズや主題歌CDのリリース情報を告知する、というよくある宣伝番組だ。
ただ一つ普通でないのは、このOVAシリーズが18歳未満お断りの視聴年齢制限があることだった。
実際にこの作品名を画像検索しよく調べてみると、Amazonで海外版の販売ページが見つかる。そこに海外版のタイトルが記載されているが、「Slave Doll: Maid to Order」。わかりやすくそういうDVDです。
…なんでそんな媒体の宣伝番組が放送されているのだろう?と当時首を傾げたのを思い出したので、ネット上で調べた内容を記事にまとめる。

原作者:おたっきぃ佐々木氏

まずこの作品で重要な存在が原作者のおたっきぃ佐々木氏、通称おたささだ(本名佐々木伸)。
今現在の声優ラジオファンになじみがない人物かも知れないので概要を説明する。
文化放送がまだ四ツ谷にあった時代。音楽出版会社セントラルミュージックの社員で番組ADとして活動を始める。その後文化放送でアニメ・ゲーム関連の番組を強化していく方針が立てられ、現場で唯一のオタクだった佐々木氏が様々な面で表に立ち活躍することとなった。
代表的なものが文化放送初の土曜夜2時間アニメ・ゲーム情報番組、超機動放送アニゲマスターのメインMCだ。後のアニスパエジソンに連なる系譜の始祖で、おたささ氏と、菊池志穂さんや池澤春菜さんら声優さんにより毎週様々なオタク情報やアニメ・ゲーム新譜情報が提供された。
こうして頭角を現したおたささ氏はライトニングスカーレットという会社を設立。同じく当時声優系の番組で名物スタッフだった齋藤K氏や、文化放送の仕事で関わりのあった構成作家伊福部崇氏と鷲崎健氏のバンドPOAROも、ここに所属した。POAROの1stアルバム「サルタヒコ」をリリースしていたことから、番組制作の他に音楽出版機能も有していたらしい。
この数年後にライトニングスカーレットは解散しおたささ氏も暫く業界の表舞台から離れるが、現在は声優番組スタッフとして復帰してボイスガレッジで番組制作をされている。

それで本題に戻るが、このおたささ氏がライトニングスカーレット所属だった時代に原作、そしてラジオ番組プロデューサーも兼任していたのがこの「こわれもの」だった。
ということは当時文化放送で活動していたスタッフが原作者だったことからこの番組が文化放送で放送されていたのか?
というと、もう一つ事情が加わる。
それがこの番組、そしてOVAの主題歌CD『微痛の楽園』をリリースしていたLantisだ。

CDリリース元:Lantis

ラジオのOP曲「OPEN SESAME」とED曲「HAPPY DAYS」はどちらもOVAシリーズで使われたもので、それら楽曲を収録したCD「OVA『Fragile Heart Series ~こわれもの~』微痛の楽園」が2000年05月24日にリリースされた。
発売元はLantis。1999年、翌年2000年に解散のバンダイミュージックエンタテインメントとその子会社エアーズの元従業員で創立した、まだできてまもない会社だった。

今では当たり前の話だが、なぜLantisがアニメ楽曲を制作しているかを説明する。
元々は文化放送社屋に渡辺プロと文化放送の合同出資会社として設立されたアポロン音楽工業株式会社というレコード会社があった。その後紆余曲折があり1996年、バンダイが大株主になり社名が株式会社バンダイ・ミュージックエンタテインメントに変わるが1999年に業績不振から解散する。
その元社員を母体に作られたのがLantisであり、創立からの社長が、現在はバンダイナムコアーツ副社長の井上俊二氏だ。そう、LAZYのメンバ―でバンナムフェス主催してるあのお方。

というあらましもあり、Lantisは当時の文化放送とも縁が深い会社だった。
こうした事情からこのCDがリリースされたと考えられ、割とドメスティックな取引関係で制作・発売されたものだということがわかる。
また、OVAシリーズの発売元はビームエンタテインメント。1999年にバンダイグループの株式会社ハピネットの子会社化したビデオメーカーで、これ以外に聖少女艦隊バージンフリートA KITE(梅津泰臣監督の名作。後に海外で実写映画化。なおOVA版は18歳未満お断り)など製作販売している。
これらの情報から、当時のバンダイグループが大きくかかわった作品だったことがわかる。

「あの番組なんだったんだろう?」と何気なく浮かんだ疑問から文化放送とLantisや当時のバンダイグループとの関係がわかった。
今ではWikipediaにすら項目はなく、配信サイトでも流通していないOVAなのに色々な事柄を知るきっかけになったのは、感謝する。

内容が内容だけにこの作品を見てとは言えないけれど、「昔抱いた疑問は今調べてみたら面白いことがわかるかも」ということを改めて実感した。


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