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ぶんりゅーがサンタクロース


メリークリスマス、読者諸君!(cv.ビートたけし)



12月の半ばに始まった東大推薦アドベントカレンダーもとうとう最終回。
世間はクリスマスの朝を迎えた。


なんでこんないい日に最終回になってしまうんだ、と涙に暮れる人も多いだろうが、アドベントカレンダーとはそういうものである。


さて、純真無垢な子どもたちが枕元のプレゼントに目を輝かす朝。
あるいは、うら若き恋人たちが一つのベッドで目を覚ます朝。
きっとカムチャッカの若者も、いつもと違う朝を過ごしているに違いない。


私はというと、実家の部屋で気配を消している。


…何故かって?



よくぞ聞いてくれた!!聞かせてやろうこの話!
サンタクロースになったぶんりゅーの、
人生最高のクリスマスの物語をっっ!!!




1ヶ月前


11月30日の夜のことである。


その日は1限から授業があって(無論出てはいないが)、しかもバイトをハシゴして、疲れて家に帰ってきた。


カレンダーを眺めながら、12月のバイトの予定を立てる。
冬季講習だから週2コマ以上入れなきゃで、帰省の予定も考慮して…とやっていたら、年末の土日に目が吸い付く。


12/24(土)   12/25(日)


神よ…


咄嗟に十字でも切りたい気分になる。


このカレンダーだと、冬季講習を23と25の夜に入れることで、2425、つまりクリスマスイブと当日をまるまる空けることができる


その瞬間、一つの素晴らしく素敵なアイデアが浮かんだ。


_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ぶんりゅーがサンタクロース <
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説明しよう!

ぶんりゅーは新潟出身で、今は東京で一人暮らしをしている。
交友関係はリアルもネットも狭くはないが、クリスマスイブを一緒に、と誘うような特別な相手が東京にいるわけでもない、しがない男子大学生だ。

そんなぶんりゅーには、実家に残してきたかわいい二人の弟がいる。
年末の帰省は授業の関係上、28日から一週間だけ。
弟たちの人生の中で、兄であるぶんりゅーに会えないクリスマスは今年が初めてなのである。


映画のようなシーンが浮かぶ。

雪の降る冷えた朝、家族が起きてリビングへ出ると、プレゼントの山が。
誰から?と驚く弟たち(うちではサンタさんは枕元と決まっているのだ)
両親に聞いても、二人も全く見当がつかない。

そこに突然、クリスマスキャロルが流れ出し、扉を開けて人が現れる。

そこには、サンタクロースの帽子をつけた、東京にいるはずの兄が!


…最高じゃないか!


そうと決まればすぐに旅程を組み上げる。

朝東京を出て、群馬の温泉にでも寄りながら18きっぷで越後山脈を越える。夜は新潟市内でどうにか時間をつぶして(新潟には会ってくれる人がいるのだ)、終電で実家の駅まで乗っていく。

皆が寝静まるなか、こっそりと侵入し、物置と化した旧自室に潜り込む。
夜が明けたら機を見計らってプレゼントを並べるんだ。

そうだ、一緒に暮らす面々皆にプレゼントを用意して、喜ばせよう。

ぶんりゅーは、人を喜ばせるのが何より好きだった。


午前中に実家を出れば、夜のバイトに間に合うように東京に戻れる。

唐突に思いついた素敵な計画に、幸せいっぱいのぶんりゅーであった。


その日の晩ご飯のキムチチゲうどん
すてきな計画、すてきなご飯。幸せの素である。




2週間前



12月12日の朝のことである。

起きると身体が重たい。そういえば昨日の夜は喉が痛かったなあ、湯冷めしちゃったかなあと思って熱を測る。

これでも結構動けてたから不思議

Oh no…


その夕方には

人生最高記録を更新。動けない。

Oh no…

翌朝起きたら熱は下がっていた。キットを届けてもらって抗原検査をする。

はじめてみた(当然)

この瞬間、楽しみにしていたクリスマス前の予定が消し飛んだ。


泣きたい。


1週間家から出られないわ社会から切り離されている感じがするわで、
気分はダダ下がり。Twitterに費やす時間は爆上がり。


泣きたい。


何とか治してクリスマス前最終週に突入するぶんりゅーであった。

(余談)東京都からのクリスマスプレゼント。




1日前


12月23日。日本海側平野部は、週の頭からの寒波で大雪に見舞われていた。


その時までぶんりゅーが考えていた旅程は

新宿→大宮→高崎→水上→越後湯沢→長岡→新潟

という最短かつ最速のルート。


参考画像:JR東日本のHPより一部改変


だがしかし、現実はそううまくはいかない。

JR東日本は午後に翌日の運転計画を発表する。

24日の運転計画がこれ。

\(^o^)/オワタ

水上ー越後湯沢間の運休、これは、「越後山脈を越えられない」、ということを意味していた。

これはまずい。
これでは国境の長いトンネルも抜けられないし、
そこは雪国にならないし、
夜の底も白くならない、
というかそもそも帰れるか怪しい。


……ええいっ!ままよ!

赤は通れないルート

「越後山脈が越えられないなら、日本アルプスを越えればいいじゃない」

民明書房『マリー・アントワネットの東方見聞語録』


こうして、新宿発長野経由新潟行という、クリスマス・イブすべてを活用した遠回り旅程が生まれたのである。



12/24


おはよう世界。

クリスマス・イブを目前にして、ぶんりゅーは朝5時の新宿駅にいた。

そのリュックにはプレゼントをいっぱいに、
その手には18きっぷを握りしめ、
その眼には静かな興奮を宿して。

05:16発の高尾行は、通勤客と若干名の旅行者を乗せて、西東京を驀進する。
高尾で松本行に乗り換え、なお西へと進み続ける。

標高が上がるにつれ、
だんだんと空気が冷え込んでいき、
反対側からやってくる列車が雪を纏うようになる。

冬だ…


そういう確かな実感、東京では決して得られなかった実感が、ぶんりゅーのもとへとやってくる。


途中、線路の安全確認による遅れを挟みながらも、10時半に松本へ到着。

観光じゃぁぁぁぁ!!!!

城!城!!現存天守!!!


城攻めをした後は、そそくさと駅に戻って、今度は長野へと北上する。


途中、この旅程で最も美しい車窓が。

高いところから望む景色が、いちばんだ

姨捨。スイッチバック×日本三大車窓という、魅力てんこ盛りの駅。
風景でエネルギーを補充する。


さて、長野では鉄板の善光寺&蕎麦。

しかしそれよりも気になるのは長野電鉄。
長野県は地方民鉄王国で、それなりの街には必ず私鉄が通っている。

寂れた地下道のような無人駅に入ってくる、
いったいどこの大手私鉄から買い取ったのか、というひと昔まえの車両。
ローカル色の強すぎる広告。
地元民の需要にのみ基づいて出来上がった短い駅間。

すべてが合わさって独自の世界を作り出すのである。

これこれ。こういうのを求めてるんだよ。


長野からは一転、限界鉄道旅の様相を呈する。

飯山線3時間乗りっぱなしである。

といっても、いつかのの只見線のように激混みなわけもなく、
ボックスシートを占領してPC作業する暇さえあった。

(良い子のみんな、よほど空いてるときにしかやっちゃだめだぞ)


越後川口、長岡で乗り換え。この辺から見知った顔のE129系が出てくる。
まさしく実家のような安堵感。





だんだんと、クリスマス・イブの夜は更けていき、

ゆっくりと、しかし確実に目的地が近づいてくる。

いま降っている雨は、日付が変わる頃には雪になっているだろう。


ぶんりゅーは、クリスマスの奇跡に期待しない。

奇跡を起こすとすれば、それは自分だ。

完璧なシチュエーションを構築し、

最高のタイミングを必然の結果として手に入れるのだ。





おわりに


久しぶりに長文を書いたのですっかり疲れてしまいました。

そしてご想像の通り、まだ結果は明らかになっていません。

いまのところは、この辺で。

25日の朝にまたお会いしましょう。


後編はこちら


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