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Becker & Musico / M / f



レストア前

日本の一部web界隈でなぜか流行っているmusico。
なんで流行ってんのか分からんけど、そんな言うなら一本は欲しいと思っていたものの、後述するあれこれでそこまで食指が動かず。
なので、そこまで予算かけるつもりもなく。
が、予算内で安いの出てたので購入してみる。

流行っているmusicoは、「FOUNDATION by Musico」。
今回入手したのは、「Becker & Musico」。
最初は「Becker & Musico」だったのが、代替わりのタイミングで「FOUNDATION〜」に名前が変わりました。

「Becker & Musico」は、パオロ・ベッカーさんと、マッシモ・ムジコさんの、2人がメインとなるメイカーです。
イタリアはローマの、トレビの泉の近くに工房兼ショップがあったようです。
一回だけトレビの泉行ったことあるけど、まだパイプを初めてなかったので、泉にコイン投げ込んでジェラート食べて帰ってきた。
惜しいことをした。

んで、ここの特徴として、基本分業制。
ベッカーさんがボウル部分を作って、ムジコさんがステムと銀巻きを担当。
コラボレーションみたいな感覚だったっぽい。

もともと、ベッカーさんは、父フリッツ・ベッカーと二人で、「Becker」という名のブランドを製造していました。
そのパイプに、ローマで有名なパイプショップのマネージャーだったムジコさんの父、ジョルジョ・ムジコさんが目をつけ、取引を始めたのが2家の付き合いの始まりです。

この「Becker」の方に専念するために、2002年にベッカーさんが「Becker & Musico」を脱退。

んで、ボウル製作を一手に担っていたベッカーさんがいなくなって、ムジコさんの方はどうしたかっていうと、複数の職人にボウル製作をお願いすることにしたみたい。
ここで「FOUNDATION(土台・基礎、財団とかの意味)by Musico」に変わります。


自分が気になってるのはここ。
つまり、一部web界隈で流行っている「FOUNDATION by Musico」、本体はステムなんです。
複数の職人がボウル持ってきて、ムジコさんがそれぞれに似合うステムをつけて装飾したりするスタイル。
普段ものづくりを生業としている身としても、一度パイプを自作した経験としても、あんまり腑に落ちない感じ。
別に一部外注とかは良いんだけど、ここの場合コラボ的なシステムなので、いつもムジコさんがデザインしたボウルを発注って訳でもないんじゃないかなー。
なのにムジコの名前でやってんのがなー。
目ん玉だけ描く大御所漫画家みたいな感じがしてモヤモヤする。
まあ、せっかく育てた知名度捨てたくないんだろうけど。

個人的には、そのスタイルをありがたがって数万出す気はない。
いつもビッツを付けてるので、そこまでステムにこだわりないし。
実際、流行ってるのは日本の一部だけっぽい。
海外の評価はそんなに高くないって話も見かけました。

そんな訳で、どっちかって言うと「FOUNDATION〜」より「Becker & Musico」が欲しかった。
んで、↑のM刻印。
これは、いつもはステム担当のマッシモ・ムジコさんが、デザインから製造まで一手に引き受けたってサイン。
ちょうど最近、「Becker」を一本入手したので、ムジコさんの方はどうかねって気分もあって購入。

ちなみにパオロ・ベッカーさんは、2014年にお亡くなりに。
現在、3代目のフレドリコ・ベッカーが「Becker」の跡を継いでいます。
もちろん、ボウルからステムまで一貫してベッカーさん家製。
妙に高価です。

2行の「Becker & Musico」は、1990〜94年まで使用されていた刻印。
フォルテッシモなfマークは、スムースのグレード。
f / q / c の順で、cが一番グレードが高い。
こいつはスムースラインの一番下ってことに。
その割に結構綺麗なフレイムグレイン。

横から見ると普通にサドルビリヤードな感じなんだけど、ほんのりパネルシェイプなボウルになってて、上から見ると、イカみたい。
クローバー型。
ボウルトップも平じゃなくて丸まってて、いきなり穴が空いてる感じ。
カーボンは結構厚めについてる。
少し火口周りにコゲかススの黒ずみ。

シャンクは細くて四角い。
若干ステム側が広がってて、エレガントな印象。
結構ステムルーズ。

んで本体であるところのステムは、腰がキュッとした三角な感じ。
musicoの象徴である//マークが誇らしげ。
アクリルなのでそこそこ綺麗だけど、細かい傷が多く、天面のリップが少し欠けてる。
musicoは銀巻きが多いけど、こいつは銀巻き無し。
あんまり銀巻き好きじゃないので個人的に嬉しい。

全体的に、なんだか少し不安になるデザイン。
ディティールに色々凝ってて、ぱっと見普通だけど普通じゃない。
ただ、小ぶりなこともあってか、妙に軽い。
三角ボウルとか細めシャンクとか三角ステムとか、ミニ四駆的な軽量化なのかな。


ボウルのお掃除

小ぶりなボウルの中に、かなり厚くカーボンついてた。
特に底。
底面の煙道から繋がる溝も、穴も、埋まってる。
ロケットリーマーのネジネジ棒をシャンクから刺してなんとか開通ってレベル。
リーマー、ナイフ、リューターでゴリゴリ。

あらかた取れたらアルコールメソッド。
コットンとモール詰めて、エタノールヒタヒタに。
数時間おきに注ぎ足して一晩放置。

ボウルは綺麗になったけど、シャンク真っ黒。
ストローブラシとかにエタノールつけて、モールに色が付かなくなるまでゴシゴシ。

内部が綺麗になったら外側のお掃除。
キッチンペーパーとモール詰めて、マーフィーのオイルソープで温水洗い。
歯ブラシに原液つけてゴシゴシ。
流水のぬるま湯で洗い流します。
中は濡れてもすぐ乾くから平気。
オイルソープがあんまり中に入らないためのマスク。

乾いたら、ボウルトップの黒ずみとかは600とか、それ以外は1000から始めて、2000くらいまでヤスリがけ。
段差が出ないようにステム装着した状態で。
ヤスリかけ終わったら、白棒でバフがけ。

その後、椿油を塗りたくる。
あまり放置せずに拭き取り。
グレインはっきり、ピカピカに。

カルナバワックスで仕上げ。
リューターでバフがけ。

最後に、蜂蜜をエタノールで薄めて、ボウル内部に塗り塗り。
ボウルの保護とカーボン付きやすくなるように。
これでひとまず、ボウルはおしまいです。


ステムのお掃除

エタノールでヤニ取り。
材質がアクリルなので、長時間漬けておくと溶ける恐れ。
なので、漬けるってより洗う感じで。
ストローブラシでゴシゴシ。
モールに色が付かなくなるまで。

内側が綺麗になったら外側。
そこそこ綺麗だけど、細かい傷が多く、天面のリップが少し欠けてる。

小さな欠けなので、プラリペアとかで埋めるのではなく、ダイヤモンドヤスリでヤスって馴染ませ。
細かい傷を600くらいからヤスリがけ。
全体を800〜2000くらいまでヤスリがけ。
ステムが本体のくせに、マークらへんの四角い部分、若干表裏で四角が歪んでたりしたので、そこも均等になるように整える。

ボウルと合体して、白棒バフがけ。

コンパウンドで仕上げ。
ピカピカ。

最後にダボのところに鉛筆塗り塗り。
シャンクとの合体をスムーズに。
ステムルーズは、掃除したら解消してた。
//マークの傷は、このあと修正液を爪楊枝でちょっとだけ塗って綺麗に。


完成

ツヤツヤピカピカです。

ボウル内も綺麗に。
ボウルトップの黒ずみもなくなりました。
上から見たらイカ。

ステムもピカピカです。
欠けも傷もなくなりました。

「Becker」との2ショット。
多分これは3代目の作。
時代を超えたベッカー家とムジコ家の共演。
ベッカーはブラストだし、お互い変わったシェイプだから比較にはならないけど。
シャンクとステムの合体するあたりの2本線がベッカーの特徴。
カステロみたいな掘りで好き。

個人的に、デザインはあんまり。
ただ、使ってみて、使い勝手の良さに少し驚いた。
妙に軽くてずっと咥えていられる。
ステムが三角にくびれているので、口の真ん中じゃなくて、端っこで斜めに咥えるとすごくフィットする。
さらに、その角度でボウルを握ると、持ち手とボウルの緩い三角がフィットする。
もしかしたらすごく考えられてたのかも。
この使い勝手の良さがmusicoなのか?
そういうアプローチなのか?

今回はムジコさんソロ活動なパイプなので、ベッカーさんとコラボしてる、本当のところのmusicoではないです。
ちゃんと2人が共同制作したやつもちょっと欲しくなった。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。


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